~おじさんが書いたら、さてどうなる?~①
郷に入れば郷に従え。なろうの王道部門をおじさんが書いてみます。予備知識が足りないとは思いますが、自由に楽しくぼちぼち書いてみましょう。よろしくお願いします。
俺の名前は山田尊。今年で41歳のでぇベテラン中年だ。
ああ、異世界転生して、悪役令嬢とつるみてぇ。
自分で言うのもなんだが、かなりのこじらせ具合の中二病だ。
つける薬なぞ、ある訳ない。あったら、とっくにまともな人生を送っているだろう。
ふん、人にはそれぞれ生き方がある。こんな生き方も悪くない俺は知っている。
それだけで十分だ。でも、足りない。満たされない。むくりともたげる負の感情。
俺は読みかけのラノベ「異世界召喚されたら、そこは悪役令嬢のハレムだった。~勇者俺様!皆の者、ひざまづけ!チートな俺のハッピーライフ♡」を枕の横に置いた。
ベッドに身を投げ横たわる。
なにが異世界だ。悪役令嬢だ。ハレムだ。勇者だ。チートだ!
俺が知る現実世界には何一つないものだ。
人はないものに憧れる。
ふと、頭にそんなフレーズが浮かんだ。
異世界転生してみてぇ。
でも転生の王道は、一度この世界で死ぬもんな。
そこのところは、俺は古い人間なのか納得出来ない。死んだら終わりだろ。次なんてあるはずがない。そう思ってしまう。
しかし異世界という素晴らしい場所があるなら是非とも行ってみたい。
ウハウハでチートな人生の第二幕を送ってみたい。
なーんて、俺は阿保か・・・。
布団に潜り込み、俺は目を閉じる。
明日も変り映えのない平凡な毎日に備えて。
現実の毎日を送る。
のはずだった・・・。
第一章 姫+お嬢+転生者 ヤマタイ国~あれっ、俺指定の世界じゃないよ~
CP壱 はじまりのクニ
「山田、聞いておるか」
ヤマタイ国女王、壱与は尊に話しかける。
「ああ?」
尊は首を傾げた。おかしい。俺はこんな世界に転生は望んでいなかったはずだと。
「ヤマーダ、無礼であるぞ。姫様に向かって!」
壱与の巫女十六夜は口を尖らせ、尊に言った。
(ふーむ)
尊は思案する。
ヤマタイ国女王壱与、彼女は先年亡くなった卑弥呼の後を継いだ新しい長。
14歳、整った顔立ちと凛とした瞳。ただ残念なのは年相応のお子様ボディであること。
女王になって日が浅く、女王女王していない。
倭国大乱の最中、その小さな双肩にヤマタイの未来がかかっている。
姫の一人。
巫女十六夜、壱与に仕える巫女。長らく壱与とともに行動をともにして、姉的存在。
18歳。顔立ちは少々幼い。頬のソバカス以外は、化粧もしていないのになかなかのもの。ただ残念なのは胸がぺったんこであること。裏表のない性格で勝気。
壱与の手足となり毎日忙しくしている。
ラノベ的分類ではかろうじて分類してくれ悪役令嬢枠の一人。
「なーんかな」
尊は腑に落ちない。
「なーんかなとはなんぞや」
十六夜は訝し気に尋ねる。
「おかしいんだ」
呟く。
「何が!」
煮え切れない言葉に苛立つ。
「この世界が」
口にした。
(俺の世界じゃない)
「山田、それはこちらの言うことじゃ」
壱与はそれお前が言うかなというニュアンスをこめて言った。
「へっ?」
驚く尊。この世界はあまり都合のよいものではなさそうだ。
「ここは神殿である。神に携わる者以外、何人たりとも入れぬ聖域。それに男子禁制。にもかかわらず、私の目の前におる・・・お前は一体、何者じゃ」
壱与は単刀直入に眼前にいる謎の男に聞いてみた。
「何者って・・・転生者。山田」
「てんせいしゃとは・・・?」
「つまり、自分の世界から別の世界のこの世界に来た」
「にわかに信じがたい」
しかし目の前にいる男は突如として現れたのだ。説明がつかない。
「そりゃそうだ」
尊は自嘲気味に呟いた。
「姫様・・・もしや」
十六夜が壱与に何やら耳打ちをする。
「いや・・・という事はやはり」
「はい姫様」
「予言の・・・」
「はい。あの暴竜ヤマタノオロチを征伐し、この世界に光をもたらす者では・・・」
「まさか」
「で、ないと説明がつきません」
「ただの変態ではないのか」
「その可能性無きにしも非ず」
「わかった」
二人は振り返り、尊に愛想笑いを見せる。
「では、山田。二、三質問していいか」
十六夜は尊を探るような眼差しで聞いた。
「ああ。どうぞ」
二人の少女の好奇な眼差しに、少し鼻の下が伸びる。
「名は?」
「山田尊。41歳だ」
「はっ!」
壱与その場に飛び跳ねた。
「ヤマトタケルだと。しかも41歳ジジイじゃないか」
十六夜は驚きを隠せない。
二人は部屋の隅で密談する。
「姫様、ヤマトタケルあの伝説の名ですよ」
「十六夜、慌てないで。ヤマダタケルじゃないの」
「きっと、ヤマーダのお国なまりです」
「そっかぁ、そうだね」
「おーい」
置いてけぼりの尊は二人を呼ぶ。
にやり、さらに愛想笑いの二人。
「では、どこから来たのだ」
十六夜はもみ手をしながら聞く。
「だから転生して来たんだよ」
「転生とは・・・別の世界から来たという事だな」
「ああ」
二人は小声になる。
「別世界つまり天津ヶ原から遣わされたということか」
「姫様、おそらく」
「それは、つまり」
互いに顔を見合わせ確信する。
「ようこそ転生者、ヤマトタケル!」