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VSエボルカリウス-3

 ――異界の英雄。


 その言葉は、明らかに異世界転生を意味しているのではないか。

 その言葉は、この世界が実在していることを意味しているのではないか。

 その言葉は、久木がブレイドに転生したことを確定させる言葉ではないか。


 ブレイドの動きが一瞬だが止まってしまった。

 そして、その瞬間を見逃すエボルカリウスではなかった。

 超至近距離から放たれたのは極大魔法の千刃の小部屋(サウザンドルーム)

 一定の空間の中で魔法の刃が際限なく斬りつけてくる。それも一本ではなく、一〇や二〇を超える数の刃が同時にだ。

 回避不可能、一瞬で見るも無残な肉塊に変わってしまう――通常ならば。


魔力消失(バニッシュ)

「ぐぬっ、またか! この忌々しい魔法め!」

「魔導王のお前が言うかよ」


 驚きはしたものの、ブレイドはすぐに気持ちを切り替えていた。

 エボルカリウスを目の前にして一瞬の油断が命取りになる。

 自分が異世界転生したかもしれないと事前に把握できていたからこそ、素早く態勢を整えることができたのだ。

 七星宝剣を構え直したブレイドだったが、エボルカリウスはブレイドではなく自身の足元めがけて別の魔法を発動した。


火炎爆発(エクスプロージョン)

「ちっ!」


 自爆行為に見えた火炎爆発だったが、エボルカリウスに魔法は通じない。

 魔法攻撃無力化が健在の今なら自身を巻き込むような魔法も放ち放題なのだ。


スキル無(スキルゼ)――」

「させん!」

「うわあっ!」


 魔法を発動しようとしていたエボルカリウスがまさかの肉弾戦――蹴りを見舞ってきたことで、ブレイドは慌てて後退しスキル無効化スキルゼロの発動を解除。

 直後に人族斥力大が発動されたこともあり大きく距離を作られてしまう。


「ここからなら貴様以外も狙えるぞ?」


 ニヤリと不敵な笑みを刻んだエボルカリウスにロイドたちは身構えたものの、ブレイドだけは軽く息を吐き出す程度だ。

 その態度にエボルカリウスは笑みを憤怒の表情に変え、一度に複数の極大魔法を発動させた。


「ここの地形を変えてやるぞ――炎塊大落下(メテオレイン)!」


 青く晴れ渡っていた空の一点にシミのような黒い点が顕現すると、魔法の発動に合わせてどす黒い雲へと変わり一帯を覆い尽くしてしまう。

 直後には耳朶を震わせる地響きにも似た低い音が雲を超えた先から聞こえており、徐々に大きくなっていく。


 ――ドンッ!


 そして、雲を突き抜けて現れたのは炎に包まれた巨大な岩の塊だった。

 目算で一〇メートルはあろうかという炎塊は一つではなく、確認できるだけで二〇を超えている。

 一つでも落下してしまえば周囲は土ごと吹き飛び、地形が変わるだけではなく荒野と成り果てて生物が生きていけない不毛の地になってしまうだろう。


「さあ、どうする! 異界の英雄!」

「こうするさ」


 何もなかったかのような涼しい声音を発しながら指をパチン! と鳴らしたブレイド。

 すると、頭上を覆っていたどす黒い雲が一瞬にして消失してしまい、元の青く晴れ渡った空が戻ってきた。


「……な、ななな、何をした!」


 さすがのエボルカリウスも驚愕を隠すことができなかった。

 そもそも魔法名すら唱えていない状態では何が起こったのか判断することもできず、エボルカリウスもただ問いかけるという愚行しかできないでいる。


「何をって、魔力消失を使っただけだが?」

「あの魔法の射程では炎塊大落下を消失させることは不可能のはず! なぜに使えた、なぜだ!」

「なぜって言われてもなぁ」


 頭を掻きながら困惑するブレイド。

 というのも、MSOでの魔力消失の射程は、スキルレベルが最大なら《《目視できる範囲》》になっている。

 レベルを最大にするまでスキルポイントを大量に使ってしまうので誰も手を出してこなかったスキルなだけに、このことを知っているプレイヤーはブレイドだけだった。


(俺しか知り得ない情報だったから、この世界の魔族にも伝わっていなかった? そんなことがあり得るのか?)


 疑問を上げれば尽きない状況なので一旦思考を停止させたブレイドは、これ以上の情報収集は周囲への影響が出かねないと判断して勝負を決めることにした。


「そろそろ終わらせるぞ」

「それはこちらのセリフだ!」


 エボルカリウスは威圧を込めた咆哮を上げ、全てのスキルに対する効果上昇を発動させた。


 スキル名――限界突破リミットブレイク


 魔族固有のスキルであり、自身の魔力を体内で暴走させることで通常よりも強靭な肉体を手に入れることができ、さらに魔力も飛躍的に上昇する。

 限界突破を発動したエボルカリウスの魔力なら、上級魔法であっても極大魔法を有に超えた威力を発揮するだろう。


「この距離ならスキル無効化は通じまい!」


 エボルカリウスは高らかに声を上げて極大魔法を発動させた。

 スキル無効化はエボルカリウスの言う通りに範囲外となっている。

 ならば魔力消失を発動すればいいのだが、今回はそれも通じない状況が生まれていた。


(あの野郎、体内で魔力をコントロールしてるな)


 ブレイドの射程はあくまでも目視できる範囲であり、エボルカリウスの体内までは見ることはできなかった。


「これで終わりだ! 大地を砕け――地脈破壊(アースクエイク)!」


 限界突破をした状態での極大魔法。

 地脈破壊はエボルカリウスを中心にして半径三キロにも渡り大地へ魔力を流し始めた。

 魔力が注がれた部分から草木が枯れてしまい、大地が隆起し、全てが破壊されていく。

 さらに、またしてもブレイドが目視できない大地の中を魔力が通過していくこともあり魔力消失が使えない。


「今度こそ、終わりなの?」


 そんなリアナの呟きがブレイドに聞こえたのか、それともたまたまだったのか。


「終わりなわけないだろう?」


 駆け出したブレイドは人族斥力大を物ともせずにエボルカリウスへ迫っていく。

 近づかれることはないと高をくくっていたエボルカリウスは、まさかの展開に目を見開いた。


「な、なぜ近づける!」

「スキル無効化は俺にも発動するんだ。知らなかったのか?」


 エボルカリウスは気づいていなかった。

 最初にスキル無効化を発動した時、ブレイドは速度上昇の勢いのまま間合いに入ってきていた。

 その布石がブレイドにもスキル無効化が発動していると気づかせなかった。

 今回は確かにエボルカリウスには射程が届いていなかった。ならばとスキル無効化の範囲をブレイドを包み込むように狭めることでより強力なスキル無効化を発動させていた。

 結果として、エボルカリウスが発動しているスキル効果がブレイドに与える効果すらも無効化してしまったのだ。


「これで、終わりだ!」


 間合いがスキル無効化の射程内に入った途端に射程を元に戻したブレイド。

 その瞬間にエボルカリウスが発動していた全てのスキルが霧散していき、完全に無防備となっていた。

 限界突破した肉体で応戦するものの、慣れない接近戦を仕掛けてくる相手にブレイドが遅れを取るわけもなく――まもなくして、エボルカリウスの額には七星宝剣が突き立てられていた。

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