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異常の魔窟-8

 異形の何かになった女性魔族はこのまま灰になるはずだった。

 だが、愛するダーラグロロアを殺した恨みの対象であるブレイドが目の前に現れたことで、消えかけていた命の灯を業火へと変換させる。

 自らが放出した魔素をかき集め体内へ取り込むと、異形の姿からさらなる進化を遂げていく。


「……こいつは、予想外だな」

「……ブレイド、本当に大丈夫なんだろうな」

「……お、お兄ちゃん、これって」


 例えようのない異形の姿だった女性魔族は、二足歩行ながらも元の姿からは程遠く上半身には腕が六本、顏は三つ、阿修羅を想像させるような三面六臂が目の前に現れた。


「二人とも──飛べ!」

「くっ!」

「えっ、えっ?」

「リアナ!」

「きゃあ!」


 前衛として戦い慣れているミリエラとは異なり、リアナは後衛で戦闘経験もまだ足りない。

 咄嗟の行動が取れないと判断したブレイドは一瞬でリアナの隣まで移動すると、そのまま抱え上げて飛び退いた。

 カルディフの時から数えて二度目のお姫様抱っこにリアナは赤面しながらも、迫る阿修羅の表情を見て青ざめる。


『アアアアアアアアアアアアッ!』

「ま、魔法!」


 リアナの驚愕の声に半身で振り返ったブレイドが見たものは、異なる六つの極大魔法の魔法陣が展開されていた。


「こいつ、まさか元はメリキュラオスか!」


 ダーラグロロアと同じくMSOでは初期に出てくる魔族なのだが、魔法に特化した上級魔族だった。

 ブレイドの記憶では極大魔法までは使えないはずだったが、ここでも記憶とは異なることが起きているのだと理解する。


魔法障壁(マジックウォール)!」

「俺も必要だな!」


 リアナの魔法障壁はブレイドとリアナに、ブレイドの魔法障壁はミリエラに発動される。

 遅れてメリキュラオスの六つの極大魔法が発動された。


 氷獄の部屋(ブリザドルーム)

 四方暴風(トルネドスクエア)

 天地逆転(リバースアース)

 振動の荒波(ビブラートウェーブ)

 重力三倍化(トリオグラビティ)

 大神の鉄鎚(ゼウスハンマー)


 体温を奪われ、逃げようにも暴風により動けない中で地面が崩れ、衝撃波により三半規管が麻痺した後、強化された重力に襲われて押しつぶされる。

 極大魔法の連携攻撃は狙った相手へ対してオーバーキルだと言われてもおかしくはない威力を誇っていた。


「ブレイ──」

「ミリエラさ──」


 あまりの威力に轟音が最深部に鳴り響き、お互いの声が全く聞こえなくなる。

 魔法障壁によってなんとか防いでいるものの、限界が訪れれば障壁は破壊されてしまう。

 その限界に近づいていたのはリアナの方だった。


「……お、お兄ちゃん、逃げて」

「逃げるわけないだろう」

「……もう、保てないわ!」


 魔法障壁が破壊される音ですらメリキュラオスの魔法の音にさらわれてしまう。

 ブレイドとリアナに襲い掛かる六つの極大魔法。

 いくらブレイドであっても無傷であるはずがなく、腕の中にはリアナだっている。

 絶体絶命──かと思われたが、ブレイドはいつもの変わらない飄々とした表情でスキルを発動した。


魔力消失(バニッシュ)


 霧散する六つの極大魔法。

 リアナはエボルカリウスとの戦いでブレイドに助けられた時のことを思い出していた。

 自らが発動した極大魔法が跳ね返された時、ブレイドは魔力消失を発動して助けてくれた。

 ならば最初から魔力消失を使えばよかったのではと思ったリアナだったが、霧散していたのは二人に放たれた魔法のみで、ミリエラのところにはいまだ魔法が襲い掛かっている状況だった。


「お、お兄ちゃん! ミリエラさんも早く助けて!」

「いや、今はそのままでいい」

「どうして! 見捨てるの!」

「違うって。俺の全力の戦いを見られたくないんだよ」

「全力の、戦い?」


 ブレイドの魔法障壁はいまだ健在で、ミリエラが無事だということは分かっている。

 魔力消失でミリエラを極大魔法から助け出すことも可能だが、視界が塞がれている今の状況を利用しようと考えたのだ。


「リアナとはこれからもパーティを組んで旅を続けるから構わないが、ミリエラさんは違う。俺との本当の差を見せつけてしまったら、今は良くても後から色々と考えてしまうかもしれないからな」


 MSOでも上位陣があまりにも強過ぎてゲームを引退する者が続出した時期があった。

 生活をしなければならないので現実とゲームでは違うだろうが、それでも何も感じないということはないはずだ。

 ブレイドは少しでも危惧を無くすためにあえてミリエラ側の極大魔法はそのままにしていた。


「リアナ。俺についてきたってことは、今後も今日みたいな危険なことが起こる可能性は高い。そして、今から見せる俺の全力を見て、これからもついて行くかをしっかりと考えてくれよ」

「……わ、分かった」


 メリキュラオスはなぜ魔法が消えてしまったのか疑問に感じているようで、ミリエラ側とブレイド側を交互に見ている。

 だが、倒すべき相手が誰なのか、恨むべき相手が誰なのかを思い出しのだろう、首を何度も左右に振りながら全ての瞳でブレイドを睨みつけ、奇声をあげると六つの腕の中に突如として様々な武器が現れた。

 大剣、戦斧、鉄鎚、大鎌、そして二つの大盾。

 魔族の魔法師であるメリキュラオスがと思いながらも、今のメリキュラオスはMSOで見たメリキュラオスとは全く異なる存在なのだと気持ちを切り替える。


「さて、やるか!」

『ゴロオオオオオオオオズッ!』


 ブレイドとメリキュラオスは同時に駆け出した。

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