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異常の魔窟-7

 ここまで来たブレイドは初めて防具のアイテムボックスから取り出して身に纏っていく。

 全ての装備が神の遺物(アーティファクト)だということに気がついたミリエラは唖然である。

 そんなことは気にせずにフル装備となったブレイドは、濃い魔素が流れ込んでくる五階層へと続く階段を見つめる。


「エボルカリウスへの対策は万全だった。ダーラグロロアは何度も倒してきている。バルバラッドだけは初見だったが、混血だったから話し合うことができた。だが、今回の相手は……」


 そこまで呟くと、息を吐き出しながらニヤリと笑う。


「楽ができるか、そうじゃないか。とりあえず、行ってみますか」

「お兄ちゃん、大丈夫かな?」

「いきなり心配そうな声でどうしたんだ?」


 リアナから声を掛けられたことで首を傾げながら振り返る。


「……最初の魔窟では、お兄ちゃんが倒しきれなかった魔族が現れたじゃない。今回の魔窟も、それだけの強敵が現れたとしたら、怖いんだよ」


 規格外の強さを何度も見てきたリアナであっても、魔窟という特殊な空間とバルバラッドという五魔将のような強敵が現れたとしたら、ブレイドであってもピンチになる可能性は大いにある。


「だーいじょうぶだよ!」


 しかし、当のブレイドはというとあっけらかんと言い放った。


「今回の魔窟は本当に大丈夫だ。もしイレギュラーが現れたとしても、ダーラグロロアよりも少し強いくらいじゃないかな」

「……本当に?」

「なんだったら、リアナとミリエラさんだけでも倒せるかもしれないぞ?」

「冗談はよしてくれ、ブレイド。最深部の魔族が普通ではないということくらい、魔窟に潜ったことのない私でも知っていることだぞ」


 今までは黙っていたが、ミリエラもリアナと同様に心配していた。

 自分では倒せないと分かっているからブレイドはフル装備に着替えたのだと思っている。それだけの強敵が最深部には待っているのだと。


「二人とも心配性だな。大丈夫、行ってみたら分かるからさ」

「「……?」」


 顔を見合わせて首を傾げているリアナとミリエラ。


「さあ、行こう! さっさと封印してみんなに勝利の報告をしようじゃないですか!」


 そう言って歩き出したブレイドの背中を追い掛けて、リアナとミリエラも五階層へと下りていった。


 ※※※※


 通路を闊歩している魔族は明らかに上層と比べてより大きく、より速く、より強敵になっている。

 それは誰の目から見ても明らかなのだが、ブレイドは四階層と変わることなく突き進み魔獣の群れを一掃していく。

 その後ろからついて行くリアナとミリエラは先ほどの心配が本当に杞憂に終わるのかもしれないという思いに変わり始めていた。


「さて、そろそろだな」


 ブレイドは呟きと同時に速度を緩めると、通路の先で大きく広がっているフロアの前で立ち止まった。


「……ブレイド、この先が最深部になるのか?」

「そうです。魔窟を維持している上級魔族がこの先にいます」


 ゴクリとミリエラが唾を飲み込む音が聞こえてきた。


「それじゃあ、行きましょうか」

「ちょっと、お兄ちゃん! 心の準備が──」

「大丈夫だよ……ほら、見てみろよ」


 最深部に足を踏み入れたブレイドが示した先にいたものは──今はもう本来の姿を保つことすらできなくなっている《《上級魔族だったであろう何か》》だった。

 バルバラッドやダーラグロロアと似た姿でもなく、シュラコングやシルバーライガーのような獣に似た姿でもない。

 例えようのない異形の姿をした何かが、そこには存在していた。


「……ブ、ブレイド、これはいったい?」

「おそらく、ダーラグロロアが殺されたことを何かしらの方法で知ったんだろう。そのせいで自らの魔素が暴走して意図せずに限界突破(リミットブレイク)が発動してしまったんだろうな」

「そんなことが、あり得るの?」


 ブレイドが見たことのある魔素の暴走は、MSOでいうところのストーリーに沿って起こった出来事である。

 この世界でも魔素の暴走はあり得るのだろうが、実際にそうなった魔族がどうなるのかは分からない。

 その時のストーリーであれば異形の姿になった魔族との戦闘になったのだが、この世界ではどうだろうか。


『……ガギャ……ゲギャゴ……ゲギ……』

「……もう、言葉すら発することができないくらいに消耗しているんだな」

「消耗、だと?」

「魔素は魔族が活動するためには必ず必要なものです。人族でいうところの酸素と同じものだと考えてください。それが暴走することで生命活動ができなくなり、魔素を大量に放出することになるんです」

「濃い魔素が溢れてしまっていたのはそのせいか」

「そういうことです。だけど、こいつはもう限界です。おそらく、俺たちが来なくても時間が経てば灰になっていたでしょうね」


 ブレイドの見解は正しかった。

 暴走した異形の何かは数時間もすれば灰になるだろう──ブレイドがこの場に現れなければ。


『……ゲゲ……ゴゲ……ゴドズ、ゴロズド! イガイノエイユウ!』

「なあっ!」


 ブレイドの予想を上回り、異形の何かだった女性魔族の恨みは強烈だった。

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