異常の魔窟-2
魔窟の中は一階層から魔族の群れでいっぱいになっていた。
リアナが魔法で群れを一掃している中、ブレイドはミリエラに魔法条件の変更について試させていた。
「外で言った通り、変更は自分の考えを変えることです。一発でやれとは言いません。魔窟にいる間にできるようになれば、今後はミリエラさんも魔窟封印に積極的に参加できるようになりますよ」
「……分かった、やってみよう」
「リアナの魔法を少しだけストップさせるので、ミリエラさんの光魔法をぶっ放してください!」
笑顔でそう言ってのけるブレイドに苦笑しつつ、それでもミリエラはやらなければならないと言い聞かせて前に進み出る。
「リアナ!」
「分かった! ミリエラさん、よろしくお願いします!」
「……あぁ、やってみせる!」
抜き放った一等級品の名剣──エリュースソードの切っ先を魔族の群れに向けて光魔法を発動する。
光源はリアナの上級魔法によって魔窟内には出来上がっている。
光を切っ先に集めて増幅させるイメージを作り出す。
光源が太陽の場合は光が無限に降り注ぐので集束させるイメージも容易だったのだが、炎となると消えてしまえば光源が無くなるので深層の部分で焦りが生じてしまう。
「落ち着いてください、ミリエラさん」
「……リアナ」
「炎による光源は私がいつでも出せますから、確実に光の集束をしてください」
「……ありがとう、もう大丈夫だ」
魔法に関してはリアナの方が知識は豊富である。ミリエラが何に焦り覚えているのかを的確に見抜きアドバイスを送る。
そのアドバイスはミリエラに落ち着きをもたらし、光魔法が完成した。
「吹き飛べ──業炎の光!」
光魔法に光源である炎を纏わせた複合魔法。
魔族の弱点である光属性が動きを著しく減少させ、そこへ業炎の光が着弾した。
大爆発と共に周囲へ光をもたらすと、そこに小規模の爆発が連鎖するように発生する。
一撃で灰へ変わる魔族もいれば、腕や脚が吹き飛び絶叫を上げる魔族もいた。
「……で、できた」
「まさか一発でできるなんて、ミリエラさんは応用力が高いんですね」
「いや、ブレイドの教え方が上手かったんだろう。それにリアナもアドバイスをしてくれたからな」
「わ、私は何もしてませんよ!」
「謙遜するな。だが、まだ全ての魔族を倒せたわけではない」
「そうですね。まあ、後はリアナに一掃してもらいましょうか」
「もう! 人使いが荒いんだから!」
言いながらもリアナは上級魔法を発動させて動けなくなった魔族を一気に灰へと変えてしまう。
その様子を見ていたミリエラは自身の魔法がまだまだだと自覚してしまった。
「光魔法が使えるからと、魔族との戦闘が有利になるとは限らないのだな」
「まあ、リアナは天才魔法師ですからね。ミリエラさんのメインは魔法じゃないんですから気にしなくていいと思いますよ」
「……そう思うことにするよ」
大きく息を吐き出しながらミリエラはそう口にした。
リアナが魔族を一掃したことで先に進み出した三人は、二階層へと進む階段を見つけると止まることなく下りていく。
二階層でもミリエラに光魔法を使わせながら、その中で速度と威力を上げられるようにブレイドとリアナがアドバイスを繰り返していく。
進化した魔族、自然とその強さも上がっているのだが、ミリエラの魔法は苦もなく無力化してしまう。
それだけでも光魔法の有用性を示しているのだが、そこで満足できるミリエラではなかった。
ブレイドから言われたことは正しい。前衛なのだから魔法に固執する必要はない。
だが、ミリエラが光魔法に固執する理由は別のところにあった。
「ブレイド、一つ試したいことがあるのだがいいだろうか?」
「構いませんけど、何を試すんですか?」
「魔法剣だ」
「……魔法剣!」
ミリエラの提案にブレイドは大声で喜びを露にする。
「お兄ちゃん、うるさい!」
「だって、魔法剣だぞ! 響きが格好いいじゃないか!」
「ブレイドは魔法剣を使えないのか?」
「使え……ます。でも、すっかり忘れてました」
「使えるのかい!」
使えないと言うのかと思えば、あっさり使えると白状されたのでリアナが思わずツッコミを入れる。
ミリエラは頬をピクピクさせているが、怒ってはいないようだ。
「もう、ブレイドができないことはないんじゃないだろうか」
「光魔法は使えませんよ? 適性がなかったので」
「……そうか。うん、まあ、そういうことにしておこうか」
「えっ、本当ですってば!」
嘘を言っていると思われたのか慌てて本当だと主張するブレイドだったが、ミリエラは追及することはせずに自分のやるべきことを進めることにした。
「とりあえず、ブレイドが言う通り私は前衛だからな。光魔法で魔族の動きを制限できれば御の字だ。そこから魔法剣で勝負を決めにいければ太陽の光が無い魔窟でも十分に戦えるはずだ」
「そういうことなら私も手伝います!」
「ありがとう、リアナ」
「……本当に使えないのに」
ブレイドの呟きにはもう誰もツッコミを入れることはなく、少し進むと魔族の群れが姿を現した。




