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オタクとヤンキーは紙一重  作者: 人見尻
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「―とゆう訳でして」

 

 あの後、笹葉のバイトが終わるまでファミレスで適当に時間を潰し、再び合流して近所の喫茶店へ入った。

 約束通りコーヒーを注文して飲みながらなぜあんなに慌てていたか説明する。

 ちなみに俺がキャラメルマキアート、笹葉はエスプレッソを注文した。

 女子高生がエスプレッソ飲むの初めて見た、男前すぎるな笹葉。キャラメルマキアートとか女々しいもの頼んですいません。


「ふむ、つまり君はいわゆるオタクと呼ばれる趣味があって、それを学校の連中には知られたくないから秘密にして欲しい。そうゆう事かな?」


「ああ、そうゆう事」


10分程話続けて渇いた喉をキャラメルマキアートで潤しながら答える。


「それなら安心していいよ、私は最初から言いふらすきなど欠片もないしね」


 そう笑いながら笹葉もエスプレッソを口に含む。


 「しかし気にしすぎでわないのかい?皆にいい回る必要は必要はないが、親しい者には別に知られても良いと思うが」


「駄目だって、もし知られたらあっとゆうまに広まって俺の高校生活が終わっちまう」


「友達なのにかい?」


「笹葉が思ってるより男子高校生の人間関係は複雑なんだよ、友達だから言えない事だってある」


 実際ヤンキーのコミュニティは難しい、仲間同士でも明確な序列と力関係が存在し、コミュニティ内での自分のポジションを把握して空気を読んで行動しなければならない。

 彼らは仲間意識が強い分、コミュニティ内の異物に敏感だ。オタク趣味が露見し、異物だと判断されたら容赦なく攻撃されるだろう。

 昨日の敵は今日の友と言うが、今日の友は明日の敵にもなる。


「そうゆうものかい?」


「そうゆうもんなんだよ」


 納得はしてないのか、笹葉不承不承といった容子で頷いた。


「なら何も言うまい、人間知られたくない秘密があって当然だ。他人がどうこう言うことじゃないしね」


「わり、恩にきるわ」

 そう言って感謝の気持ちをこめて頭を下げる。


「別に気にしないでくれ、美味しいコーヒーも奢ってもらえたしね」

 

 そう言うと笹葉はからかうように笑いながらエスプレッソを飲む。


「しかしそうなると共通の趣味を持つ友人等作りにくいのではないかい?やはり共通の趣味の話ができる友人が欲しいだろう?」


「そうなんだよな、作ろうとした事はあるんだけど中々うまくいかなくてな」


 やはり好きな事について、気軽に会話ができる友達がいると楽しいしずっと欲しいと考えていた。

 実際そうゆう友達が欲しくて参加したSNSのオフ会もあるのだが上手くいかなかった。あの時の事は思い出したくないな。

 そんな事を考えていると、表情に出ていたのか苦笑いしながら笹葉が言った。


「私がなってやりたいが生憎興味がないしな、まあそのうち見つかるさ」

 

「ははっ、まあ良い人がいたら紹介してくれよ」


 恋人探してるみたいだなとか思いつつ、笹葉の気遣いに感謝し冗談めかして答える。


「ふむ……」


 何か思う所があったのか、笹葉はしばし考え込む。


 「っと、もうこんな時間か、明日も学校だしそろそろ帰るか」


 時計を見ると既に9時を回っている。ずいぶん話込んだせいか店に入ってから1時間近く経過していた。

 約束通り2人分の代金を支払い店を後にする。笹葉の家はわりと近所らしく時間も時間なので途中まで送っていくことにした。


「そういえばよく俺のこと知ってたな、同じクラスになった事もないし喋ったのも今日が初めてだろ?」


 日が落ちきり街灯が照らす道を並んで歩きながらふと疑問に思った事を口にする。


「友和君は女子の間ではわりと有名だからね」


「えっ!マジで!」

 思わずガッツポーズしそうになる右手をなんとか抑えつつも、我慢しきれずに顔がにやける。

 ひょっとして俺モテてる?モテ期到来しちゃってる?


「見た目悪そうなのに意外と優しいとか」


「うんうん!」


「掃除当番変わってくれたり、ジュース買って来てくれたりして便利だとか」


「うん!うん?」


「パシりオーラが半端ないよね(笑)とか皆絶賛しているよ」


「それ完全にバカにされてるじゃねーかーーー!!!!」


 天国から地獄へ突き落とされるように蹲り頭を抱えこむ。

 くそ、最近そうゆう頼み事多いなと思ったらパシり扱いされてたとわ。ガッツポーズしなくて良かった。


「ふふっ、冗談だよ。優しいと言われてるのは本当だけどね」


 そう言いながら笹葉は悪戯に成功した子供のように笑う。

 なんだ冗談か、真顔で言うから全然解らん。危うく不登校になるとこだった。

 そんな風に話しながら歩いていると、ここでいいよと言って笹葉は立ち止まった。


「送ってくれてありがとう、それとコーヒーご馳走様」


「いいよ、俺こそ付き合わせて悪かったな」


「気にしないでくれ、君との会話楽しかったしね」


笹葉は微笑みながら綺麗な瞳でこちらを見る。


「そっか」


そう一言答えた後、照れくさくなり目を逸らしながら頭をガシガシとかく。


また学校でと別れの挨拶を交わし、家に帰るため駅を目指しながら歩き出す。


「また学校で……か」


そういえば女子と2人でお茶をするのは初めてだなと考えながら進める足はいつもより少しだけ軽やかな気がした。

 

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