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プロローグ たった六十年前のおとぎ話



 たった六十年前まで、人魚は海の底にある彼らの王国に住んでいました。そこは深い海の底だというのに、空気があり、輝く空をもつ幻想的な場所でした。人魚はその楽園で、地上の人間とさほど変わらない暮らしをしていたのです。

 人魚は時々人間の町へ行き、彼らにまざって暮らすこともあったそうです。


 今から約六十年前、人魚の国――――海の王国の美しいお姫様が、遊びにでかけた地上で人間の青年に恋をしました。青年も美しい姫を愛するようになり、二人はお互いの国について教え合いました。


 海の王国では、石ころを拾うように珊瑚さんごや真珠が採れること、人魚は時々それを売って、人間の町の品物を買っていること。そして、王国の中心には「人魚の至宝」と呼ばれる、まばゆい光を放つ宝石があること。


 海の王国は、その宝石の不思議な力で保たれていました。「人魚の至宝」が王国を守る壁と空をつくり出し、大気をとどめていたのです。

 青年はその話に興味をもち、美しい海の王国を一度でいいから見てみたいと姫に願いました。姫はその願いを聞き届け、彼の願いを叶えるために、自らの血を少しだけ与えました。

 人魚の血を飲んだ人間は一時的に深い海の底まで潜れるようになるのです。


 姫の血を与えられて、たどり着いた海の王国で男が見た光景は、それはそれはすばらしいものでした。

 青年は人魚姫から少しの珊瑚と真珠をみやげとして与えられました。


「約束してください。海の王国で見たこと、知ったこと、人魚の血の力……。絶対にほかの人間に話さないでください」


 けれど、青年はその約束を守らず、人魚の王国で見た光景、王国へ行く方法を陸の人間に話してしまったのです。


 それからしばらくして、人魚姫が人間によって捕らえられました。人間たちは姫の血を使って海の王国に攻め入りました。

 たくさんの人魚の血が流され、それさえも人間たちは戦利品として地上に持ち帰ろうとしました。そして欲深い人間たちは、王国のかなめである「人魚の至宝」に手を出しました。


 人魚の王や妃が暮らしていた王宮の中央に大切におかれていた「人魚の至宝」。それを台座から下ろし、人魚たちから奪おうとしたとき――――。


 その瞬間、空が壊れ、すさまじい勢いで王国内に水が浸入し、王国のすべてが海の嵐にのみ込まれました。


 これが人魚の王国の最後です。


 六十年後、生き残った人魚たちは、不本意ながら人にまぎれ、ひっそりと暮らしています。行方知れずになった「人魚の至宝」を台座に戻し、いつか海の王国を再興する日を夢に見ながら――――。






ヒーロー登場が五話なので、前半さくさく投稿します。その後も完結まで毎日連載です(約8万字)

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