表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第8話。厨二フルワンダーランド。

「ちっ、数が多い割に民家が近い。これじゃ疾風斬が使えない」



学生服に身を包んだその少女は、苦々しげに呟く。


後ろから見ても分かるが、こいつ相当の手練れ(末期厨二病患者)だ。



今まで数々の少年漫画を読んできたのだろう。その口調には慣れと陰での音読の努力が感じられる。



「っ、くぅ」



痛みが和らいだ事で身体が自由になった俺は、ゆっくりとだが自分の力で立ち上がる。



それに気付いて、少女も振り返る。



「どうやら、深刻なダメージでは無いようね」


セーラー服にやや茶色の髪、黒いパンプスに白いソックス。


右手に握られた日本刀だけが異質な女子高生。



だがその顔を見て驚いた。



「えっ、お前⁉︎」




何故ならゲル球をぶっ飛ばした目の前の少女は、5組の沢田だったからである。



「なっ⁉︎あんたは!」



ビックリしたのは沢田も同じ様で、目を見開いたまま口をパクパクさせている。





余程の衝撃なのか、二の句が次げない様だ。



まぁ無理もない。



去年一緒のクラスだったからな、俺たち。


1度も話した事無かったけど。



元同クラの奴が、ゲル球にヒャッハーされていたら誰だってショックだろう。



でも俺だってショックだよ。


こんなにボロボロな所を、あんまり関わりが無いとは言え女子に助けられたんだから。


もう穴があったら入りたい。



あ、そういえば1ヶ月前河川敷に大きな穴が出来たんだった。あれなら俺でも入れるかな。



「ゲルゲル!!」


俺たちが距離感が複雑な再会を果たしていると、吹き飛ばされたゲル球達が戻って来た。



心なしか色が緑から赤に変わっている気がする。


気のせいかな、気のせいだろうな。

もしパワーアップとかされたら沢田放っといてエスケープする自信しかない。



そんなゲル球達を見て、沢田がまた何かを口走る。



「そんな、ジョグレスしようとしている?あれはCクラス以上の上級モンスターしか習得しない筈………。


まさか、これも魔王の仕業だって言うの⁉︎」




あぁ、うん。


やっぱ俺帰ろうかな。


ほら、何かヤバそうな雰囲気だし。


それにさ、仲良くないとは言えこれ以上沢田がイタい発言するのは、その、心に来る物がある。



よし、帰ろう。




「なんかごめんな、沢田。見なかった事にするから、お前も頑張れよ。何か悩みあるなら聞くし。じゃあな。」



そう言って歩き出した刹那、いきなり空き地が光で埋め尽くされた。



ギャァァアン!!!


と言うけたたましい音と共に、眩い光が俺の視界を奪う。



「くっそ……。今度は何だよ。」



数秒の後、何とか視力を回復させた俺が見たものは、



「ゲ〜〜ル〜〜」



3mほどに膨れ上がった、赤黒いゲル球だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ