第7話。誰かとの再会はいつだって突然。
どうも、初めまして俺の名前は松山百春です。
金丸高等学校に通う高校二年生です。
えっ、名前がなんて読むか分からない?
あぁ、そうですか。
これ「ももはる」って読むんですよ。
親がノリで付けたらしくて、ほんと困っちゃいますよね。
なになに?
女の子みたいな名前だって?
あははっ。
よく言われます。
特に小さい頃なんかは顔まで女の子みたいだったんで、幼稚園では気の強い女の子にイジメられてたらしいです。
そのせいで今でも赤いワンピースを見ると震えが止まらないのはここだけの秘密です。
ん?じゃあ今はどうなんだって?
あ〜、今ですか?
今は、
「おほぉっ」「ふげぇっ」「めほぉっ」
「「「「ゲールゲルゲル」」」」
ゲル球に虐められてます。
もうどれ位経っただろうか。
足を挫いてゲル球に群がられてからと言うもの、急所を攻撃されないように丸くなるのが精一杯で、立ち上がることも出来ない。
体感時間的にはもう8時間ぐらい経ってるのだが、外の明るさから見るにまだ3時を軽く過ぎたくらいだろう。
動き回って朦朧としてきた意識も、丸まった事によって元に戻ってきた。
だがその代わりに背中とお尻に止めどない打撃が繰り返されて、もう心は折れる寸前だ。
いかに急所を外しているとは言え、サッカーボール大の球体に長時間ぶつかり続けられれば身体はボロボロになる。
チクショウ。
魔王に刃向かおうとしたのが間違いだった。
まさか序盤に出て来るようなモンスターに一方的にやられるなんて。
ちょっと前まで魔王をバット1本で倒そうとしていた自分にアルゼンチンバックブリーカーを掛けたいレベルの後悔だ。
ってか、もしかして俺このまま死ぬのかな?
まさか、こんなスライム紛いに殺されるなんて。
と思うかもしれないが、この鈍痛をコンスタントに受け続けたら人生観変わるぞ。
もう今からRPG始めたら、最初の国から一歩も出れない自信があるもん。
そんぐらいのダメージと恐怖だ。
だから、俺がここで死ぬのは心残りで不本意だが、納得せざるを得ない。
あぁほら、5年前に死んだ長崎の婆ちゃんが見える。
イチゴ味のカステラを片手に持ちながら笑顔で手招きしてくる。
そっか、天国に行っても覚えててくれたんだな、俺の好物。
婆ちゃん、俺も今からそっちに行くよ。
父さん母さん、親不孝な息子でごめんな。
ナオ、葬式にはお前の人望で500人ぐらい呼んでくれ。
死んでまでボッチで親に恥をかかせたら死んでも死に切れねぇ。
「おっ、おほうっ」
最後に強烈な一発がレバーに入り、三途の川で死んだ爺ちゃんがバタフライをしているのが見えたその時、ふと風を感じた。
どこか懐かしい、でもそれが何か思い出せない。
そんな印象を俺に与えてきた。
次の瞬間、一陣の風が、いや嵐が俺を通り抜けた。
「「「ゲルゲルゲルッ!!!」」」
ぶっ飛んで行くゲル球達、軽くなる身体、クリアになった視界。
顔を上げると目の前には、日本刀を持った女の子の後ろ姿があった。