第六話 童話迷宮 その3 対決?!メイ対ユニベルサリス!(あるいは魔法少女マン誕生秘話)
名神学園保健室を中心に広がった東条メイの『世界』に対し、
ミコトも『世界』で対抗した結果生じた『融合中立世界』
二人の『世界』が混じり合い、固定化された特殊空間となっても
メイの精神から染み出した心象風景は刻一刻とその有様を変容させ蠢き彩る。
その只中、夢現の中まどろんでいたメイが目を開き、目の前に広がる『融合中立世界』をゆっくりと眺めた。
そこにはメイ自身が展開した『世界』が広がっている、はずだったが・・・
だがメイは自分色に染まっているはずの『世界』に異質のものが混ざっていることに気づく。
自身の、記憶の奥底から湧き上がってきた楽しい童話の世界に
自身の伺い知らぬ景色が交じる景観。
自身のものではない光と水晶の景色。
勿論、それはミコトが『世界』を重ねた結果の現象。
それを目にした時、メイの感覚に違和感が生じる。
そしてそれはメイの目にはあってはいけないモノとして写り
自分の『世界』に混じる異物に嫌悪感を感じた。
「メイちゃん!しっかりして!私だよ!なないろだよ!」
「無駄です、今の彼女に意識はない・・・なな!気をつけて!」
ミコトの指摘通り、今のメイの精神は虚ろなまどろみの中に閉じ込められ
叫ぶなないろの声もメイに届いていなかった。
メイはぼんやりとなないろとミコトを見る。
そんなメイの脳裏に語りかけるように声が響く・・・
いや、それは声なのだろうか?
ともかく、正体不明のそれはメイには声と認識された。
深く暗い深淵より湧き上がる声だと。
『メイ・・・メイ・・・』
脳裏に響く声に身を委ねるかのようにメイが目を閉じる。
大きく、不安を満たすその声は、さらにハッキリと語り続け、
もはや自己の意識さえ保てないほどに思考を染め上げる。
『オ前ノ・・・世界ヲ・・・壊ソウトスルものヲ・・・・・・排除シロ!』
その時、メイの額に亀裂が走り、次いでパックリと開き、そこから真っ赤な眼球が輝き睨む。
「来る!!」
叫ぶミコト。
「そうだ・・・お前らはいらない・・・私の世界から・・・出て行け!」
メイは雄叫びを上げると、真っ赤に染まった視界の中に輝く二つの人影に向かって襲いかかっていった。
騒ぐ精霊の気配を感じ名神学園へと急ぐ日笠薫。
夜魔モンドの力で図らずも大空高く飛び上がった薫が、打つ手なく空中から落下していく。
「ぅおぅおおおおおおおおおおおおおおおおおぅ?!!落ちる落ちる落ちる!死む死む死む死む~~~!!」
その時、薫の足に取り付いたモンドが蠢くと横に広がり大きな翼と化した。
「ふぉっ?!」
広がった翼が風を受け、薫の落下速度が徐々に落ちていく。
「?!降りれる!これなら!」
体制を整えようと翼はうねり、薫も咄嗟にバランスをとり着地に備えるが・・・
「ちょ?!ちょっと?!誰かいる!!」
薫が目指す着陸地点、薄暗い裏路地に立つ二人の人影。
「ヤバイ!ぶつかる!」
人影を避けようと咄嗟に体をひねると夜魔モンドの翼が大きくうねり、弧を描きながら渦巻く。
それに気づいた人影が驚きの声を上げた。
「んなっ?!」
薫は器用にバランスをとり、無事に地面へと着地するが
その風圧に人影の一人が弾き飛ばされ、
ゴロゴロと事がっていき、その場に伸びてしまった。
「うっわ!ヤバ!大丈夫ですか?!」
薫は倒れている男に駆け寄り手をかける。
20代ぐらいだろうか、やせ型でカジュアルな服装を着崩した
いやゆる ちゃらい 格好をした男は目を回し昏倒している。
其の様に、薫が困惑し、
「きゅ、救急車!救急車!」
とオタオタと慌てていると
夜魔モンドが細かい触手を伸ばし男の体を確認する。
『目立った外傷もなく、
どうやら目を回して気絶しているだけのようだ』
さらにモンドの触手から淡い光が男の体に流れる。
『これで大丈夫』
そう訴える夜魔モンドの意思に薫はホッと胸をなでおろす。
「あ、あの!」
突然、背後からかけられる声に驚いた薫は咄嗟に顔を隠す。
『やば!いまのみられた?!』
焦る薫の意志に反応した夜魔モンドの触手が蠢き
瞬時に薫の目元を隠す仮面へと変化した。
『ナイス!モンドちゃん!』
声をかけてきたサラリーマンは興奮した様子で語り続ける。
「助けていただいて、ありがとうございます!」
「ほへ?」
思ってもいなかった言葉に薫は素っ頓狂な声を上げた。
「実は今、その男に身ぐるみを剥がされそうになっていて・・・」
何度も深々と頭を下げるサラリーマンに手短に話を聞いたところ、
どうやら薫が舞い降りてきた時、
その場で倒れている強盗に襲われていたこのサラリーマンを偶然助ける形になってしまっていたらしい。
背広姿のサラリーマンをよく見ると、大柄でがっしりとした肩幅で腕も筋肉がほどよく付いている。
地面に伸びている強盗よりよほど強そうで、ふつうなら強盗も避けそうな体格だったが、
それに反して優しそうな表情、と云うより明らかに気の弱そうな表情をしていた。
それが強盗を勢いづかせてしまったのだろう、と薫は思った。
「本当になんといってお礼をしたら良いか・・・
ぜひ!御名前を!」
「いやぁ、名乗る程の者では・・・」
なんか妙な事になってきた、と感じた薫は謙遜し
すぐさまその場を離れようとするが、
「是非!お願いします」
キラキラと少年のような眼差しで見つめるサラリーマンの勢いにタジタジとなってしまう。
参ったな、名乗らなきゃ惹かない勢いだぞ、こりゃ・・・
仕方ない・・・ここは誤魔化す!誤魔化しきる!!
「わ、私は、通りすがりの魔法少女です!礼には及びません!急ぎますんでこれにて失礼します!」
薫は、こうなりゃヤケだ、とばかりにまくし立て、
相手の反応も待たず、超跳躍力で飛び出した。
「あぁ!待って!・・・」
サラリーマンは、悠々と空中に飛び上がる薫をお追うとするが
勿論、通常の人間にそんな真似はできるはずもなく
只、あこがれの表情で小さくなっていくその後ろ姿を見つめながら呟いた。
「魔法・・・少女・・・!」
この時、助けられたサラリーマンの名前は八手いづみ。
いづみは思った
「魔法少女は本当にいたんだ!!」
この時、感動したいづみは後に魔法少女を目指すことになる。
そう、八手いづみは
大富豪に憧れるよりも、魔法少女に憧れるようになったのだ!!
その後、いづみは自身の肉体も精神も鍛え上げ、
キラキラ光る瞳が描かれた美少女風の仮面で目元を隠し、お手製のドレス風のコスチュームに体を包み、
KAWAIIを身に付けて女子力を高めた彼は『魔法少女マン』と勝手に名乗り社会に献身、
己の持つ力(主に筋肉)を使って悪を懲らし世間を(すこし)騒がすことになるが
今は多くを語ることはよそう。
いずれ彼の活躍も語る時が来るであろうから。
そんなこんなで、
移動するうちに夜魔モンドとの連携も取れ始めた薫はあらためて名神学園に急ぐ!
飛びかかってきたメイを迎え撃とうと
エレメンタル・スタイル、すなわちユニベルサリスへと変身したミコトがかまえた時、
「だめーーー!!」
なないろがユニベルサリスに飛びつき押し倒した。
突進してきたメイの攻撃は標的を見失い空を切る。
バランスを崩しつつもニ度、三度と回転すると
着地するメイ。
ユニベルサリスは転がりながらも、すぐさまなないろをかかえ間合いを取る。
「ダメだよ!メイちゃんに攻撃するなんて!絶対ダメ!!」
「落ち着いて、なな」
すがりつき懇願するなないろの頬を撫でながら
ユニベルサリスが答えた。
「僕は決してメイさんを傷つけたりしませんから」
「でも・・・」
「大丈夫!僕を信じて」
ユニベルサリスが右腕を振るうとなないろの足元に魔法陣が現れ光のヴェールが包み込む。
不安げに見つめるなないろに笑顔で答えると
ユニベルサリスはなないろから離れ、一歩踏み出し再びメイに対峙する。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
にらみ合い、気を伺うメイとユニベルサリス。
「メイちゃん!ミコトさん!」
沈黙を破るなないろの叫びを合図にしたかのように
二人はお互いを目指し飛び出した!




