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第四話 驚異の魔王 その8

 突如、虹乃なないろより放たれた王冠持ちの強大なる力。

結界を震わすその異変に

魔法少女リボル・リボーンとフリー・フリーズが足を止める。


「お、おい!なんだ!?この力は!?」


「これは、ななのいる方角?!」


フリー・フリーズは念話でグラン・ギニョールに語りかける。


『操!何が起こったの?操!』


だがグラン・ギニョールからの応答はない。

フリー・フリーズはリボル・リボーンに目配せする。


「急ぐわよ!キズナ!」


「うん!」


焦る気持ちを抑え、二人は全速力でなないろをめざし駆け出した。





 同時刻、夜の街を走る若き天才魔法使いユニベルサリスも

目指す結界内での異変を感じ取っていた。


この感覚は…なないろが指輪を外し、自身とのつながりが立たれた!


「プールの時よりも王冠持ちの力が強くなっている!急がなくては!」


ユニベルサリスはひときわ高く飛び上がると

スピードを増しなないろの元へと急ぐ!






 膨大な魔力をまとい目の前に立つなないろに、

ドクター・ダーク・ドーンは戸惑っていた。


 どういうことだ?なないろは既に王冠持ちの力をコントロールできるようになっていたのか?!

 いや、そんなことはあるまい、コイツはズブの素人、王冠持ちの力どころか

 魔法の一つも満足に使えやしないのだからな!

 では!なぜ!?


慌てるドクター・ダーク・ドーンの目に、地面に転がる指輪が映る。

指輪から感じ取れるユニベルサリスの波動。


「そうか!これか!なないろが力をコントロールしているのではなく、

 この指輪で力を押さえ込んでいたのか!!」


ドクター・ダーク・ドーンは素早く指輪を拾い上げると

ホワイト・ストークに投げつける。


「ストーク!その指輪をなないろにはめろ!」


「指輪?」


受け取った指輪をまじまじと見るストーク。


「そうだ!左半身のあの文様…左手だ!左の指にはめろ!!」


「はめりゃあいいんだな?」


「ああ!だが気をつけろ!全力でかかれ!」


「わかっている…」


ホワイト・ストークは懐から鳥の羽を大量に取り出し

その全てをなないろに向かって投げつけると

羽はコウノトリの姿となって襲いかかる。


そして空間より弓を取り出すと、なないろではなく、コウノトリを狙い矢を射った。


射抜かれたコウノトリは白い粘液と化し、

それを糸のように引きながら飛ぶ矢は、なないろの手足を貫いた。

貫かれた矢はそのままの勢いで、なないろの体をぐるぐると回ると、

伸びた粘液が二重、三重になないろを縛り上げる。


ホワイト・ストークは動きを封じられたなないろに近寄り、

その左手の甲に触れた。


と、突然なないろの左手が小刻みに揺れたと思うと

指の関節を 後ろに 曲げ、ホワイト・ストークの手を握る。

瞬間、流れ込んだ魔力のプレッシャーがホワイト・ストークをおそう!


バシュン!


ホワイト・ストークの体のあちこちが玩具のように開き

自らの存在を現す魔法文字が顕になる。


「うおっ!?」


 い、一瞬で!このパワー!なんという高純度の…!!


「おのれ!」


咄嗟に空間から剣を抜いたホワイト・ストークがなないろを切りつける!

だが、なないろは腕を螺旋状にひねりながら振りかぶり

ホワイト・ストークを振り回し、地面へと叩きつけた!


衝撃で跳ね上がるホワイト・ストークの体。


しかしなないろは掴んだ手を離さずに

ニ度、三度と激しく叩きつける。


突然の衝撃に声も出ぬホワイト・ストーク。

腕の骨はバラバラに砕けて、引きちぎれんばかりに引き伸ばされ、

流れる血が周囲に降り注ぐ。


「あ…ああ…あ」


目の前の惨状を恐怖の目で見る日笠薫。

降り注いだ血が頬にかかり、涙のように流れ落ちた。


なないろの体を覆う粘液が蠢き、腕を伝いホワイト・ストークへと取り付くと

なないろは手を離し、空高くホワイト・ストークを投げ捨てる。


粘液に体の自由を奪われたホワイト・ストークはなすすべなく地面へと落下した。


いや、わざわざ自由を奪う必要さえなかったあろう、

ホワイト・ストークは白目を剥き、ピクピクと痙攣を繰り返すだけであったのだから。


「ば、馬鹿な!ホワイト・ストークが一瞬で?!」


 なんという予想外!既にここまで進行していたとは!

 まさに恐るべし!王冠持ち!

 こうなったら私も奥の手を使うしかないか?

 いや、アレを使うのは危険すぎる…準備が整っていない…

 私自身が飲まれてしまう可能性が高すぎる!


ジリジリとドクター・ダーク・ドーンに近づくなないろ。

ドクター・ダーク・ドーンはキョロキョロと辺りを見回し、

ヘタリこむ日笠薫を見つけると、飛びかかり羽交い絞めにした。


「きゃぁ?!」


「少々、時間稼ぎをしてもらうぞ!日笠薫!!」


ドクター・ダーク・ドーンが日笠薫をなないろの方へと突き飛ばすと

薫はバランスを崩し、なないろの前に倒れ込んだ。


「さあ!あんなふうになりたくなかったら、なないろに語りかけろ!」


瀕死の状態で倒れているホワイト・ストークを指差し、薫を促するドクター・ダーク・ドーン。

だが薫は恐怖の為、なないろを見上げることしか出来ない。


「恐怖で声も出ぬか…だが私はこの隙に撤退させてもらう…あばよ!」


立ち去ろうとしたドクター・ダーク・ドーンだったが

一旦足を止め、倒れているホワイト・ストークに近づくと

きつく握り締められた拳をこじ開け、指輪を取り出す。


「これこれ、忘れるとこだった」


さらに、なないろが開いたホワイト・ストークの『隙間』に手をつっこみ

自身が書き換えるのに使った魔法文字を抜き出す。


「まあまあ、ご苦労だった、ご褒美に『解放』してやる…

 でもこの様子じゃぁ、魂まで解放されちまうかもしれんがな」


勿論、言葉の通りにご褒美で解放したのではない。

『真名支配』出来る数には限りがある。

その数は、支配する者、される者の力の強弱にもよるが、

今のドクター・ダーク・ドーンでは、ジーナ・マカラの力を使っても

支配出来るのは20人程度の数だろう。

その負担を軽減するために、

役に立たなくなったホワイト・ストーク=塩谷和徳(しおたにわとく)を切り捨てたのだ。


「では改めて、今度こそ!チャラバ~イ!」


ドクター・ダーク・ドーンは吐き捨てると一目散にその場をあとにする。

急ぐその様は滑稽ですらあるが、この切り替えの速さこそが

ドクター・ダーク・ドーンが生き残ってきた理由でもあるのだろう。


ひとり取り残された薫をゆっくりと見下ろすなないろ。

親友を前にしてもその顔に表情はなく、白い肌に返り血が赤く不気味に映える…


 此処ハ何処ダ…


 ここは魔法使いの結界の中…


 ソウダ…アノ時、私ハ支配サレソウニナリ…

 …そう…あの時、私は魔法使いの戦いに巻き込まれて…


 コノ娘ト交ワロウトシ…

 王冠持ちニとりつかれソウになっテ…



混乱する意識の中、なないろの視界が日笠薫を捉える。



 コレ…   誰ダ?

      ハ

 この子   私ノ親友、日笠薫…



なないろの腕が伸び、怯える日笠薫の頬を撫でる。



 ヒ    カ   ル

   ガサ   オ    ……ヒ・ガ・サ・カ・オ・ル…ッテ、(ナン)ダッケ…?

 ひ    か   る



なないろの手が日笠薫の首をつかみグイっと持ち上げる。


「グッ、ア…カハッ…」


苦しみもがく薫に構わずに、値踏みするかのように手を動かし

右から、左からと眺めるなないろ。


「な…な、や…め…てぇ…!」


薫が声を搾り出すとも

なないろは無表情のまま薫を眺め、

やがてゴミでも捨てるかのように放り投げた。


宙を舞う薫が地面に叩きつけられようとしたその時

光るリボンが薫を包み優しく受け止める。


「薫!」


薫を抱き、覗き込むのは

魔法少女リボル・リボーンこと愛染(あいぞめ)キズナ。

魔法少女フリー・フリーズこと恋華憩(こいはないこい)と共になないろを目指し

ついにこの場へとたどり着いたのだった。


「大丈夫?!」


「あ、ああ…うう…」


薫はリボル・リボーンに抱きつき

今起こった出来事を伝えようとするが

怯えた喉から絞り出されるのは意味のないうめき声だけで

どうしても言葉にすることができない。


周囲を見回し状況を確認したフリー・フリーズが

倒れふすグラン・ギニョールを抱き起こしながら言った。


「大丈夫よ、薫…状況は大体理解したわ」


呪いを受け倒れたグラン・ギニョール、

瀕死のホワイト・ストークこと塩谷和徳、

ドクター・ダーク・ドーンの気配は既になく、

膨大な魔力を発するなないろを前に日笠薫が怯えている…


 間違いない!これは我々が最も危惧していた事態、

 なないろの中の王冠持ちの意志が目覚めた!


フリー・フリーズはグラン・ギニョールの体ぐっと抱きしめた後、

クマルマル達に任せ、なないろの前に立ちふさがる。

同様に別の臣民達がホワイト・ストーク=塩谷和徳につき

リボンの歩兵達は日笠薫を取り巻き守る。




立ち尽くしたまま、何故か沈黙するなないろ。


取り押さえるには絶好の機会かのようにも思えるが

フリー・フリーズは動かない。

いや、動けないと言ったほうが正しいだろう。

なないろから感じ取れる王冠持ちの恐るべき力、

その重圧が周囲を圧倒する。

そのためにフリー・フリーズは次に取るべき行動のビジョンが全く見えなかった。

息苦しさを感じ、汗が頬を伝う。


今まで幾多の敵と戦い、冷静な判断と的確な対応で勝利してきたフリー・フリーズ。

だが今、なないろを前にし、何をすべきか?それどころか、

自分が今までどうやって歩いていたかさえわからなくなるほどに精神が張り詰める。


その時、なないろが動いた。


アゴを引き、胸をぐっと突き出すと、背中を突き破り何かが飛び出してくる。

輝くようで暗く、美しくもあり(おぞま)しくもあるそれは『翼』

薄いフィルムのようで、くり抜かれた空間にも見える翼が

幾何学的な動きで周囲に展開していく。


「やばい!羽化するつもりだ!!ななが、消えちゃう!!」


リボル・リボーンが叫び、光のリボンをなないろに向かって放つ。

リボンは瞬時に絡みつきなないろの姿を覆い隠す。


「憩!!」


リボル・リボーンの言葉にハッとしたフリー・フリーズは

伸びたリボンを掴み魔力を込める。

伝わるフリー・フリーズの魔力は光となって流れ込み、

リボル・リボーンのリボンを強固に固定する!


「憩!今のうちにユニベルサリスに連絡を!」


「OK!」


フリー・フリーズは手を組み片膝をつくと、

祈るような姿勢で意識を集中し魔力を高め始める。


二人分の魔力を得て強固に固定されたリボンの内側では

なないろが着ていた服のポケットが振動すると、中から液体が流れ出した。

液体はなないろの体を濡らすことなく体を伝わると、リボンの隙間から染み出していく。


「なんだ?!リボンの隙間から…」


染み出した液体がなないろの足元に水溜りを作ると

その中の水が鎌首をもたげ始め、やがて女性の裸体を形成する。


「水の精霊!?」


そう、これはプールでなないろが、

いや、王冠持ちの力が結晶化させた水の精霊『水娘』

なないろが無意識のうちにポケットに忍ばせていたその結晶が

王冠持ちの力により解放されたもの。


プールでは力の弱い少女の姿をしていたはずの水娘は

今や王冠持ちの力を受け、成熟した女性の姿に成長していた。


立ち上がった水娘は、なないろの体を覆うリボンを両断すると

振り返り、金切り声をあげフリー・フリーズに襲いかかる!


「やらせない!」


水娘の前に立ちふさがったリボル・リボーンがリボンから剣を実体化させ魔力を込める。

剣は光を発し白熱化し、水娘を切りつける!

剣先が水娘の体を真っ二つに両断し、その一部を蒸発させる。

さらに剣を振るい水娘を細切れにするリボル・リボーン。

倒れた水娘の体は弾け、水しぶきを撒き散らす。


だが、次の瞬間、

飛び散った水しぶき全てが、大小様々な大きさの少女と化すと、

リボル・リボーンの体に取り付いた。


「なに!?」


さらに水の少女達はリボル・リボーンの唇をこじ開けるように体をねじ込む。

無理矢理に開かれた口から体の中へと侵入していく水の少女…


「ぐお…!ゴボ…!」


リボル・リボーンの食道が圧迫され喉が膨らむ。

膨らみは胸へ、腹部へと移動すると

リボル・リボーンの腹はまるで妊婦のように大きくなっていく。


「ぐぐ…ぐおおお!!」


苦しむリボル・リボーンに追い討ちをかけるように

水娘が腹の中で暴れだす!


「ぐああああああああああああ!!」


内部からの攻撃にボコボコに変形していくリボル・リボーンの腹部。

最後に大きく伸びた一撃がリボル・リボーンの腹を突き破った!


しかし!

リボル・リボーンも瞬時に自分の体をリボンへと変え(リボン・リボーンさせ)そのダメージを受け流す!


リボンは再び一つにまとまりリボル・リボーンの姿へと戻る。

対する水娘はリボル・リボーンの血を吸収し体を再生、赤く、てらてらと輝く。


「つ、強い!コイツ本当に低級精霊か?!

 明らかにハイ・クラスの力を持っているぞ!」


精霊は内包する力によってクラス分けされている。

その中でも水娘は最弱に分類される知能も力も低い存在。

だが、目の前のコイツは明らかに、

無数の眷属を従え、明確な意識を持つ『高級(ハイ・クラス)』の力を持っている!


「だが!どちらでも構わん!…どちらにしろ…倒すまでだからな!」


リボル・リボーンと水娘は再び戦いを開始する!


その間にもなないろの異変は止まらない。

今や空を覆うほど巨大になった翼が空中に不思議な文様を描き始めた。




 一方、虹乃家に貼られた結界に飛び込んだユニベルサリスは

結界自体が振動し、激しく悲鳴をあげていることを察知していた。


「マズイな…このままでは結界が崩壊する…」


思案するユニベルサリスの脳裏に声が響く。


『ユニ!聞こえますか!?ユニ!』


「憩?」


声の主はフリー・フリーズ。


『ななの中の王冠持ちが目覚めました!

 このままでは最悪の事態に!」


フリー・フリーズは全身全霊を込めてユニベルサリスに語りかける。


『今から私が道筋をつけます!急いで!私めがけて来て!ユニ!』


『解りました!』


答えながら猛ダッシュで飛び出すユニベルサリス。


『少々強引ですが、一気に貫かせていただきます!』


高くジャンプし高速で体をひねると

その身に纏ったクリスタル・アーマーが全身を包み込み槍状に変形、

猛烈な勢いで前進すると槍先の空がひび割れた!


さらに槍は空を穿ち、空間をこじ開け異空間を進み始める!


目指すはフリー・フリーズ!


彼女自身が道標となり、示した次元の道を、

ユニベルサリスは力ずくで跳躍する!




 なないろの前に跪いたフリー・フリーズが

組んだ腕を開くと空中に光の点が現れる。


それを見つめるなないろの眼。


恐るべきプレッシャーの中、

フリー・フリーズが一気に両腕を開くと

目の前の空間に光の点が強く輝き、その中からクリスタルの槍が飛び出した!


クリスタルの槍は展開しながらなないろに接触し、

その中から姿を現したユニベルサリスが体をひねり

後ろに回り込むと、なないろを抱きしめる。


全身から魔力を放出するユニベルサリス。

衝撃で震えたなないろの翼が、みるみると結晶化していく。


だが、なないろは腕の関節をありえない方角に曲げ

背後のユニベルサリスを攻撃する。

しかし、なないろの指が首筋に突き刺さろうともユニベルサリスは動じない!


いや、これが逆にチャンスとなったのだ!


流れる血がなないろの左腕を赤く染めると

その血に魔力を込めるユニベルサリス。


血は瞬時に結晶化し、なないろの左腕を覆っていく。

王冠持ちの力が弱まり片膝をつくなないろ。


ユニベルサリスは、

表情を取り戻し始めたなないろの顔を優しく傾けながら

自らの唇を重ねる。


なないろの魔力機関にダイレクトに接触したユニベルサリスの魔力が、

念話となり、なないろに語りかける…


『なな…虹乃なないろ…』


なないろの答えはない。

だがユニベルサリスは続ける。


『大丈夫、怖がらないで…

 何も心配いらないよ…あの時と同じようにやればいいんだ…』


 あの・・・とき・・・


『そう、あの時と同じ・・・君の胸にある名前を言ってごらん?』


 なまえ・・・そる・・・きゅーと・・・


『そう!唇を動かし喉を震わせ唱えるんだ!』


 ・・・・・・・・・・・・


『君ならできるよ、なな・・・僕と一緒に唱えよう・・・君のその輝く魔名を!』


なないろの舌が動き始めるのを感じ

ユニベルサリスは唇を離す・・・


「我が・・・魔名・・・」


声を搾り出すなないろ。

ユニベルサリスは優しく微笑み頷くと

なないろと共に叫ぶ。


「「ソル・キュート!!」」


その途端、なないろの体を光が包み込み、

クリスタルに覆われた王冠持ちの翼が砕け、あたりに降り注ぐ。


なないろの左手を覆っていた真っ赤なクリスタルも砕け落ちるが

その下から、薬指から肘までを、薄く覆うように、

金と光のラインで装飾された銀色の手甲が姿を現す。


光が収束すると、白いドレスに身を包んだなないろと

それを抱くユニベルサリスが姿を現す。


ユニベルサリスは、なないろを優しく下ろすと

なないろは自らの足で立ち、ゆっくりと目を開く。



王冠持ちの力の終息とともに、

小さなクリスタル・プレートに戻った水娘を拾うリボル・リボーン。


「なんとか収まったようね」


リボル・リボーンは、再び小さな結晶に戻った水娘を指ではじき、

受け止めながら言った。


「なんとかね・・・でも・・・」


フリー・フリーズは倒れているグラン・ギニョール=昼田操に駆け寄ると

呪いの槍を慎重に抜き取り応急処置を施す。

リボル・リボーンもホワイト・ストーク=塩谷和徳をとなりに運び

二人は残された力で治療魔法を施す。


「い・・・憩?・・・」


グラン・ギニョールが、うっすらと目を開けフリー・フリーズを見た。


「操・・・よく頑張ったね・・・

 あなたのおかげで、なな達を助けることができたわ・・・ありがとう、操・・・」


「そう・・・よかった・・・」


グラン・ギニョールは呟くと光に包まれて、

エレメンタル・スタイルが解除されると昼田操(ひるたみさお)の姿に戻る。

同様にグラン・ギニョールの結界も揺らぎ消え去っていくと

周囲が再び、静かな住宅街へと戻っていく。


「ちょっと・・・疲れちゃった・・・少し・・・眠らせてもらうわ・・・」


呟き、目を閉じたグラン・ギニョールがガクッとうなだれると

フリー・フリーズとリボル・リボーンは絶叫した。


「「操ー!!」」


「いや、死んでないから・・・」


「「おおう?!」」


目を開け答えた操に、少しビビる二人。


「ほんとに・・・寝るだけだから・・・あんた達の治療魔法、期待してるんだからね・・・」


強がる操にホッと胸を撫で下ろした二人の魔法少女は、

再び治療魔法へと専念し、操とワトクの治療にあたるのであった。



王冠持ちの力が収束した後も

しばらくぼうっとしていたなないろであったが

ハッと意識を取り戻すと、

慌てて日笠薫の姿を探す。


「薫ちゃん!」


リボンの歩兵に守られた薫に駆け寄るなないろ。

だが、薫の様子がおかしい・・・

体を震わせ、まだ何かに怯えているようだ。


「薫ちゃん!大丈夫?!どこか怪我・・・」


心配したなないろが薫の体に触れようとした時、


「イヤーーーーーー!!」


突然、日笠薫が叫びをあげ、

逃げようと体をよじる。


「!?」


驚き、手を引っ込めて薫を見るなないろ。


怯えた薫は、なないろを見ながら、ブルブルと震え呟いた。


「ば・・・ばけもの!!」




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