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第四話 驚異の魔王 その7

 結界の中をなないろの元へと急ぐ、

魔法少女『グラン・ギニョール』こと昼田操(ひるたみさお)

走り続ける彼女の頭の中に声が響いた。


『操…操!』


「憩?!」


ピクっと反応し周囲を見回す操。

だがどこにも声の主の姿は見当たらない。

そう、その声はこの場で発されたものではない、何処か他の場所より念話でなされているものなのだ。


『よかった、思ったより近くにいるみたいね…状況は?!』


聞き覚えのあるその声は、

グラン・ギニョールと同じ『魔女会』に所属する

魔法少女『フリー・フリーズ』こと恋華憩(こいはないこい)の声。


『憩!ごめん!間に合わなかった!ななと薫が部屋の外に出ちゃった!

 今、リボンの指示で追いかけているけど…』


『のようね…でもまだ捕まったわけじゃない!

 私と憩もリボンの光を追っている!あきらめないで!』


魔法少女リボル・リボーンこと愛染キズナが励ましの言葉をかけると

グラン・ギニョールは力いっぱい答えた。


『諦めるわけないじゃない!』


『そのいきよ、操!リボンはなな達にも渡している!光が導いてくれるはず!』


三人の魔法少女は、決意も新たに叫ぶ。


『『『必ずななを、薫を守ってみせる!!』』』





 別の結界の中で戦う二つの影。

がっしりと組み合あったその魔法使いは、

なないろを守る魔法使いユニベルサリスこと命ミコトと

魔改造人間としての姿を現した魔法少女『ブレイズン・カーフ』こと橘ミルイ。


ユニベルサリスを押し切れないとみるや、ブレイズン・カーフが一声吠える。


「ブモーーー!!」


体中に配された斑上の金属プレートがスライドし、

もうもうたる蒸気が勢いよく噴出すると、ブレイズン・カーフのパワーが増し、

ジリジリと押され始めたユニベルサリスが、ついにガクッと片膝をつく。


ブレイズン・カーフは、さらなる力を込める。

その腕がユニベルサリスを捻り潰すかと思われたつぎの一瞬、

ユニベルサリスは腕を離すとブレイズン・カーフの左脇に潜り込み、その豪腕に腕を絡めて捻る。

柔よく剛を制す!

自らの剛力を受け流され、もんどりうって大地に叩きつけられるブレイズン・カーフ。


「ブモーーー!!」


間髪を入れずにユニベルサリスの掌底が、吠えるブレイズン・カーフの下腹部めがけて放たれる!

光の結晶が魔法陣を描き、腕から流れ込んだ光が無数の魔法文字を形成し体中を流れていく。


それに伴い光の結晶がブレイズン・カーフの体を覆っていくと、ついにはその身を全て包み込んでしまう。


水晶に包まれその行動を停止するブレイズン・カーフ。

ユニベルサリスが触れた掌底をさらにひねると

内側に向かってパタパタと折れ曲がっていき、

手のひらに収まるほどの小さな水晶となった。


戦いを終えたユニベルサリスは

先程、水晶に閉じ込めたマトイとコノハに近づくと手のひらを当てる。

流れ込んだ魔力はブレイズン・カーフ同様に二人を小さな水晶に変えていった。


ユニベルサリスが水晶を手に取ると、周囲の空間が揺らぎ

結界が消え、静かな、現実の町並みへと戻っていく。


間髪をいれずに空に舞い上がったユニベルサリスは、再びなないろの元へと急ぎ進む。





 なないろと薫がリボンに導かれ結界を進んでいると、なないろが突然足を止めた。


「薫ちゃん!待って!」


「どうしたの?」


「シッ!」


なないろは指を口に当て薫に指示すると

周囲に目を配り、聞き耳を立てる。


「……なにか…いる!!」


その途端、物陰から、なないろ達のもとに無数の影が走り寄ってきた!


「「キャー!」」


突然の事に驚き、声を上げるなないろと薫。

だが周囲の影たちはその叫び声に、逆に驚き飛び上がる。


「「「「「○×△※?!!」」」」」


わたわたとその場で右往左往するそれらは、

魔法少女『グラン・ギニョール』の従者(フォロワー)であるぬいぐるみ、

『臣民』たちの姿であった。


「こ、このぬいぐるみ達は!」


あっけにとられるなないろの前に、見知ったひとりの少女が降り立つ。


「なな!薫!」


「操?!どうしてここに?!」


予想だにしない人物、

魔法少女『グラン・ギニョール』こと昼田操(ひるたみさお)本人の登場に、薫は思わず声を上げる。


「コレのおかげよ」


グラン・ギニョールは自らの腕に巻かれたリボンを挿し示す。


「いや、そういう意味じゃなくて…」


「ん?…ま…まぁ、ね、あ、あなたたちを守るって約束したんだから、当然じゃない」


魔女の家で薫と喧嘩別れしたためであろう、

グラン・ギニョールは気まずさを抑えて適当にはぐらかす。


「と、とにかく、今はここから出ることを優先しましょう!ほら!行くわよ!」


「み、操!」


「なに?」


グラン・ギニョールを呼び止めた薫はなないろに目配せする。


頷くなないろに頷き返した薫は

グラン・ギニョールに向き直り口を開いた。


「えっと、その…あ!ありがと…それと、魔女の家では言いすぎた…ゴメン」


薫の突然の言葉に顔を赤らめ戸惑うグラン・ギニョール。


「あ、ああ、うん!べ、別に、気にしてないし!私も悪かったと思うし…」


薫はグラン・ギニョールに手を差し出す。


「ということで、仲直りの握手!」


「な、なんか、照れくさいわね…」


グラン・ギニョールはちょっと照れくさそうに微笑みながら、その手を取り握手に応えようとした。

が、その時、


ヒュン!


何かが風を切る音が響き、グラン・ギニョールの体が揺れた。


グラン・ギニョールの手は薫の手を取ることなく、

目を見開いたままゆっくりと倒れこむ。


「?!」


突然の出来事に凍りついた薫となないろは、

目に映るグラン・ギニョールの姿に驚愕し、叫び声を上げる。


「操ちゃん!」

「操!」


倒れたグラン・ギニョールの体には、無数の矢が刺さっていたのだ。


薫は咄嗟にグラン・ギニョールの傍らにしゃがみ込み、

その体に手をかけようとしたが


「ふ…触れちゃ、だ…め…」


か細い声で訴えるグラン・ギニョールの声に戸惑う。


するとグラン・ギニョールの体に刺さっている矢から禍々しい色がにじみ出し、

じわりじわりと体の中に染み込んでいった。


グラン・ギニョールの体を犯すその色、それは呪いの力。

呪がしみこむほどにグラン・ギニョールの瞳から生命力が失われていく。


「臣民達よ、なないろと薫を守れ…」


そう呟くとグラン・ギニョールはガクッと力尽きる。

それに呼応し、周囲の景色が揺らぎ始め、

その様子を変えていく…

グラン・ギニョールが倒れたため、『結界』に固定された『心世界』が消えさっていくのだった。

だが、結界そのものは依然となないろ達を取り囲む。


「操!」

「操ちゃん!」


なすすべもなく叫ぶ薫となないろ。

その背後から、あの不気味な声が響いた。


「クックック…見~つ~け~た~ぞ~~!」


驚き、振り向くなないろと薫。

そこにいたのはドクター・ダーク・ドーン。

手にした弓をホワイト・ストークに投げ返し、

満面の笑みを浮かべてジリジリと近づいてくる。


咄嗟にグラン・ギニョールをかばうなないろと薫、

その二人をさらにかばうようにして臣民達が展開する。


「術者より独立した『命』を持ち術者が力尽きるとも滅びぬ

 従者(フォロワー)『臣民』!

 グラン・ギニョールが倒れてもまだ私に歯向かうつもりか?」


臣民達を一別し、吐き捨てるドクター・ダーク・ドーン。


「よかろう…ストーク!」


ドクター・ダーク・ドーンの声にホワイト・ストークが進み出ると両腕を大きく広げる。

するとホワイト・ストークの周囲の空間が機械的に展開し

無数の武器が顔を覗かせる。

銃、槍、戦鎚、弓矢、剣…


そのうちの弓矢を手にしたホワイト・ストークが弓を引くと

一瞬で無数の矢が放たれ、次々と臣民達を貫いていく。


「「「○×△※※※!」」」


それでも残った臣民が数体、雄叫びをあげ躍りかかるが、

ホワイト・ストークは空間から剣を抜き取り、その全てを一刀両断に切り捨てると

真っ二つにされた臣民の体がボトボトと音を立てて落ちていく。


さらに、ホワイト・ストークは懐から鳥の羽を取り出し、

なないろと薫に向かって投げつけた。


風を切り、進む羽はコウノトリと化し、二人へとまとわりつく。


「きゃあ!」

「このっ!」


なないろが悲鳴を上げ、薫ががむしゃらに腕を奮うも

まとわりついていたコウノトリはドロドロと白い液状に変化し始め

二人の体に絡みつき、その動きを封じてしまう。


「はなせ!はなせ!このぉっ!」


ドクター・ダーク・ドーンはじたばたと暴れる二人に近づきながら

倒れているグラン・ギニョールを見下ろすとニヤリとほくそ笑んだ。


「グラン・ギニョール、その魔力は強大だが無数の臣民へと分け与えているため

 逆に臣民がいなければ本人の戦闘能力は皆無に等しい、か…」


「自らの魔力特性が逆に弱点であるとババァに教わらなかったのか?クソガキめッ!!」


グラン・ギニョールの横腹を蹴り上げるドクター・ダーク・ドーン。

力なく吹っ飛んだグラン・ギニョールが地面に叩きつけられ

刺さった矢がズブズブと体にめり込んでいく。


「やめてぇ!!」

「やめろ!バカァ!!」


ドクター・ダーク・ドーンは叫ぶ薫に近づくと無言で平手打ちを食らわした。


パーン!


「うぁ!!」


平手が激しい音を響かせ、日笠薫がもんどりうって倒れる。

その衝撃に呻き声を上げる薫。


「いい加減にしろよ?このメッスッ(ぶった)っがッ!」


倒れた薫の体に光の魔法文字が走る。


「薫ちゃん!」


なないろが叫び薫のもとへ行こうとするが白い粘液が絡みつき身動きが取れない。


ドクター・ダーク・ドーンは薫の髪の毛を掴みグイっと持ち上げると

顔を近づけて言った。


「これ以上私の手を煩わせるとマジで殺すぞ!」


言いながら薫の体に浮かんだ文字を撫で指で弾くドクター・ダーク・ドーン。


「うあああああああ?!」


その途端、魔法文字が揺らぎ、薫が叫び声を上げ仰け反った。


「しばらく真名をむき出しにして転がってろ…後でたっぷり可愛がってやる!」


ドクター・ダーク・ドーンは薫を投げ捨て

なないろに向き直ると言った。


「貴様もだぞ?虹乃なないろ…私を怒らせるとどういうことになるか…」


なないろは涙を浮かべながらドクター・ダーク・ドーンを睨みつける。

それを見たドクター・ダーク・ドーンは不機嫌さを増し顔を歪ませる。


「ああん?その目はなんだ!その顔はなんだ!その態度はなんだ!!

 貴様は内心、王冠持ちの力を持った自分はひどい目に合わされないとでも思っているんじゃァないのか?」


目を血走らせいきり立つドクター・ダーク・ドーン。


「逆だ!逆!必要なのは王冠持ちの力であって貴様なんぞ、

 死なない程度の肉達磨にかえてやっても問題ないんだぞ!」


怯え、涙を流しながらもドクター・ダーク・ドーンをにらみ続けるなないろ。

それしか出来ない自分の無力さが胸を締め付ける。


「おい!ドクター!!」


「えひゃい?!」


突然、大声で自分を呼ぶホワイト・ストークの声にビビる小心者のドクター・ダーク・ドーン。


「な、なんだ!突然、ビックリするだろうがッ!」


「さっさと済ませろ、私は早くアンジェラの無事を確認しにいきたい」


「うるさい!私に命令するな!」


アンジェラなんぞ、とうにくたばっているわ!

そう叫びたい気持ちを抑えつつ、

ドクター・ダーク・ドーンは、なないろに手をかける。


「うああああ!」


ドクター・ダーク・ドーンの手からなないろの体へ魔力が流れ込むと

魔法文字が浮かび上がり、なないろは苦悶の叫びを上げる。


「んん~~~?なかなか複雑にからみあっているな~

 やはり一部、存在と溶け合っている…分離は不可能か…?

 だがまぁ、当初の予定通りなないろを支配してしまえば何の問題もない」


ドクター・ダーク・ドーンは自らの宿主であるジーナ・マカラの顔に目配せすると

ジーナはなないろの体に浮かび上がる魔法文字を一別する。


「ジーナ、貴様に任す…真名を抜き出せ!」


その言葉に答えジーナは黙々と手を動かし魔法文字の選別を始めた。


「ん…あああ!」


ジーナの指が魔法文字に触れる度に

なないろの体に苦痛と快楽の波が同時に広がっていく。

混乱する意識の中、なないろの脳裏に様々な思いが去来する。


ユニベルサリスとの出会い

日笠薫との日々

父親の事

母親の思い出

昼田操の献身

東条メイのやさしさ

魔法猫クロシロウの肉球

従者フォロワークマルマルの声

王冠持ちの瞳・・・


ジーナがなないろの真名を全て抜き取ろうとしたその時、

藻掻くなないろの右手が左手の薬指にはめられた指輪に触れた。


その途端、なないろの中に新たな決意が湧き上がる。


 そうだ!この指輪!これを外せば、あの時の力が発揮できるかもしれない!!


指輪に手をかけるなないろ。

一瞬、脳裏に蘇るプールでの記憶がなないろの決意を揺るがす。


「ミコトさん!」


だが、なないろはそう呟くと、一気に指輪を引き抜いた!


なないろの手からこぼれ落ちる指輪…

指輪は床に落ち、軽い金属音を立てて転がっていく…


「ん?」


音に気を取られたドクター・ダーク・ドーンはなないろから視線を逸らし、指輪を凝視した。


その途端、なないろの左腕に文様が浮かび上がり、

抜き取られた真名の文字全てを引き寄せ、奪い返す。


「な、なんじゃい?!こりゃあ?!」


なないろの体を包むオーラが強烈な光を発すると、

溢れ出した魔力がドクター・ダーク・ドーンを弾き飛ばした!


「ぎゃん!」


情けない悲鳴を上げながら倒れたドクター・ダーク・ドーンは

慌てて身を起こし、なないろに向き直った。


無表情で立ち尽くすなないろがドクター・ダーク・ドーンを見下ろす。


「な、なんだ!なにがおこった!?」


「?!」


ゆっくりと歩き出したなないろは、

あっけにとられているドクター・ダーク・ドーンとホワイト・ストークを無視し

日笠薫のそばに寄ると、その体に軽く触れる。


すると、薫の体にからみついていた粘液が消失し

浮かび上がっていた魔法文字は体の中へと消え去っていく。

ほっと息をつく薫に向かって、なないろは声を搾り出し言った。


「に…げて薫…ちゃん…」


苦しそうな声とは裏腹に

表情の無いなないろの顔に薫が問い掛ける。


「なな?!」


「もう…抑えられない…!」


「?!」


「はやく!!」


振り仰ぎ叫ぶなないろの瞳が怪しく光り輝く。

その光に薫は本能的に恐怖を感じ取った。


「な・・・な?」


すくみあがった薫は逃げるどころか、凍りついたようにその場で動けなくなってしまう。


再びなないろの体から光となって溢れ出た魔力が

周囲の結界全体を振動させる!


ゴゴゴゴゴゴゴゴ!


目の前で起こったその現象を目の当たりにし、ホワイト・ストークとドクター・ダーク・ドーンが叫んだ。


「こ…これは、まさか!」


「王冠持ちの力?!」




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