表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/43

第四話 驚異の魔王 その3

 「きゃあ!」

 「うおう?!」


突然、なないろの部屋のドアを打ち叩く音が響き渡り、

虹乃なないろと、その親友日笠薫(ひがさかおる)が声を上げて驚く。


「な、何?誰か、来た?」


日笠薫が恐る恐るドアに近づくが

なないろが慌てて薫の腕に飛びついた。


「だ、ダメだよ!薫ちゃん絶対に開けるなって憩さんが」


「わかってるって、開けない開けない…」


そう言い、ドアに耳を当て神経を集中していた薫が

慎重な面持ちでなないろに振り返り言ったった。


「…………何もわからん……」


「ま、まぁ憩さんがあれだけ念を押して開けるなって言ってたから、開けなければ大丈夫だよ、きっと」


恋華憩(こいはないこい)が飛び出して行ってからどれだけの時間が経ったろうか?

まだ数分しか経ってないようにも思えるし、もう一時間は経過してしまったような気もする。

その間、部屋の外からは何も聞こえず、静かに時がすぎていったが

今、扉を打ち付けるかのように響いた音に、二人の間に動揺が走った。


「そうだね、とにかく憩さんが来てくれるのを待とう、

 きっと、ななの大好きなミコトさんも、駆けつけてくれるよ、きっと、うん」


不安を和らげようと、余裕のあるところをみせる薫であったが、その声に不安の色は隠せない。

対するなないろも答える余裕がなく、沈黙が過ぎていくだけであった。


その時である。


「……な、な……」


ドアの向こう、なないろの部屋の外から、微かになないろの名前を呼ぶ声が響いた……





「スパイラル・ヒップ!!」


飛び上がり、パワー・ワードを叫びながら強烈な尻の一撃を食らわさんとするバルチャーズ・ドーター。


迎え撃つフリー・フリーズこと恋華憩(こいはないこい)の頭上に迫り来る巨大なる尻!

腰を落とし構えたフリー・フリーズは頭上の尻へと回し蹴りをお見舞いする!


ドガッ!


見事に決まった蹴りの一撃にドーターの体が、その場でコマのように回転した!


「ンスパイラァァァァァァルゥゥゥ?!」


「ハイヤッ!」


回転し叫びを上げるドーターに対し、フリー・フリーズが一歩踏み込み、

さらなる一撃を繰り出したその時、

バルチャーズ・ドーターの目が怪しく光る。


一瞬のうちにピタッと回転を止め、狙いを定めたバルチャーズ・ドーターが

左手のひらでフリー・フリーズめがけて張り手を繰り出す!


「ドスコーイ!!」


とっさに反応したフリー・フリーズは右腕を振るい防御する。


だが、張り手が腕に触れたとたん、


パーン!!


と音を立て、フリー・フリーズの右腕が真っ平らに潰れた!


「グゥッ!」


たまらずうめき声を洩らすフリー・フリーズであったがすぐさま腰を落としドーターの顎へと蹴りをかます!


もんどり売って倒れ込むドーター。

倒れ込みながらもバック転の要領で着地、すぐさま構えると次の攻撃に備え一歩踏み込んだ。


だが、フリー・フリーズはケリを入れつつ飛び退き、間合いを取ると

潰された自身の右腕を確認する。

肩から腰にかけて面一で体に張り付くように真っ平らになってしまった腕。

だが、最初に感じた衝撃以外、痛みも何も感じない。

その感覚や状態、さらに表面に明滅する光の文様から

これがバルチャーズ・ドーター=アンジェラの特殊魔法能力の一撃であることは明白であった。


「流石ガ、フリー・フリーズ。

 一撃デ、トワ、イキマセンデシタネ・・・」


触れることにより発動するバルチャーズ・ドーター=アンジェラ・マキシモフの特殊魔法能力。


触れたものをキューブに変える、その技名『ランプ・シュガー』!


フリー・フリーズが本来の力を使えたのであれば、防ぐことは容易であったろう。

だが、今は虹乃なないろを守る結界に力を使っているため、

フリー・フリーズは特殊魔法能力を使う事が出来ない。


これがアンジェラの力…

あと三擊、いや二激も喰らえば行動不能に陥ってしまうだろう…

脚か頭部にでも喰らえばその場で終わりだ…

だが、どうあっても、ななをドクター・ダーク・ドーンの魔の手から守らねば!


フリー・フリーズは、改めて決意するとグラン・ギニョールに向けて叫んだ。


「みさお!あなたはドクターを追いなさい!」


「でも、憩!」


「いいから早く行きなさい!これは班長命令よ!」


「…………」


「行け!!行って、虹乃なないろを守れ!!」


「もう!!クマルス!憩のサポートにまわれ!残る臣民は私に着いてこい!!」


グラン・ギニョールは後ろ髪引かれる思いを胸にしながらも、なないろの部屋を目指し走り去る。

その後には臣民達が数体ほどついていった。


それを追いかけようとするホワイト・ストークの従者(フォロワー)ジッペイにゴッド・クマルスがパンチを見舞う!

素早く飛び退き、避けるジッペイ。

だがゴッド・クマルスは大地に着激した腕をそのまますべらせながら移動し

フリー・フリーズをすくい上げると自らの頭部へと乗せた。


「叩け!クマルス!」


「「「「「「「「「クマッシ」」」」」」」」」


フリー・フリーズの命令に従い攻撃を繰り出しバルチャーズ・ドーターを攻めるクマルス。


その強力な一撃、いや、一挙手一投足にさえ破壊を伴う巨大なる魔熊の猛攻!

さらに追い込みをかけ、

一気に攻め落とさんとするゴッド・クマルスの巨体がバルチャーズ・ドーターに迫る!


「「「「「「「「「クマッチ!」」」」」」」」」


雷声をあげ、大地を蹴ったゴッド・クマルスの巨体が宙を舞った!


これぞゴッド・クマルス必殺の技『ゴッド・プレス』!!


巨体を生かし、相手を圧殺する驚異の一撃!!


頭上に覆いかぶさる巨体に怯むバルチャーズ・ドーター、

いよいよ迫るゴッドクマルス!


ついに決着がつくかと思われたその時、

ゴッド・クマルスの左肩が爆裂!無数のキューブと化して大地へと降り注いだ!


その衝撃でバランスを崩したゴッド・クマルスはもんどりうって崩折れる。

降り注ぐキューブの只中には、拳を掲げるバルチャーズ・ドーターがそそり立つ。

そう、それは彼女が放った一撃が

ゴッド・クマルスを構成する臣民たちの一部をキューブと化せしめた結果だったのだ。


倒れたゴッド・クマルスが巻き上げた土煙が風に舞い散ると、

そこからフリー・フリーズがゆっくりと現れ出る。

その姿には、バルチャーズ・ドーターの一撃で潰されてしまったはずの右腕がすっかり元に戻っており、

拳をぐっと握り締めながらフリー・フリーズが口を開く。


「なるほど、あなたの特殊魔法能力は

 『対象をキューブ化し終えないと次の対象をキューブ化出来ない』

 簡単に言えば『一体ずつしかキューブ化出来ない』って訳ね……」


「フム、ソウダッタカシラ?」


「ならば、クマルス!分離、散開せよ!」


フリー・フリーズの号令の下、一気に合体を解いたクマルス。

左腕を構成していた臣民達はキューブにされてしまったが、

まだ無傷の、無数の臣民の数が大地へと着地し、

アンジェラの周囲に散開する。


「アンジェラ、あなたに対してはこの方が有効な戦法かしら?」


さらに畳み掛けるフリー・フリーズ。


「臣民よ!突撃せよ!」


「ナラバコチラモ、フモフモフ!ジッペイ!迎エ撃テ!!」


フリー・フリーズの命令に一斉に襲いかかる臣民達。

バルチャーズ・ドーターの命令に迎撃の構えに入る従者(フォロワー)

そして、フリー・フリーズ自身もバルチャーズ・ドーターに向けて突進していった!





 夜のビルを背景に火花を散らす両陣営の魔法使い達。

ペアー・オブ・アングィッシュの巨大な拳が、ブレイズン・カーフの蹴りが、ユニベルサリスを襲う!

だがユニベルサリスはそれらすべての攻撃をやすやすと躱し、隙を狙い掌底を叩き込む!

一撃を食らったペアー・オブ・アングィッシュの体には光の魔法文字(ランゲージ)が走る!

だがそれにも構わず、魔法少女たちの猛攻は止むことがなかった。


リボル・リボーンはユニベルサリスに加勢せんと

腕から蠢くリボンを伸ばしブレイズン・カーフへと放つ。


伸びゆくリボンは素早くブレイズン・カーフの体に巻きつくと、力をまして締め上げた。


「ぐッ?!…おのれ!」


ブレイズン・カーフがうめき声をあげ藻掻くとも、リボンはビクともしない。

続けてリボル・リボーンがリボンを手繰り寄せようとしたその時、

ブレイキング・ウィールの脚の一閃がリボンを切り裂いた!


矛先をユニベルサリスからリボル・リボーンへと変え、走り来るブレイキング・ウィール。

回転する足の円盤がリボル・リボーンへと迫る!


とっさにリボンを前面に展開し防御に転じたリボル・リボーンであったが

円盤の一閃は展開したリボンを容易く切り刻むと、さらにリボル・リボーンの頭上へと振り下ろされた!


ガギィン!!


「?!」


必殺の一撃がリボル・リボーンの頭をかちわった!

と、思われたその時、円盤は紙一重の距離で激しい金属音を響かせながら停止していた。


「リボンを使う私にとって貴女(あなた)の『切り裂く』攻撃は最悪な組み合わせではあるけれど

 私の技はそれだけじゃないと知っていただけるかしら?」


ニヤリと笑うリボル・リボーン。

その背後からは、いつの間にか六体の従者(フォロワー)『|リボンの歩兵《リボンズ・ポーン』が現れ

ブレイキング・ウィールの円盤をガッチリと掴み、固定しているのだった。


「なるほど、さすがは『リボンの魔女騎士』!」


「否!この場合『リボンの騎士団』と言っていただこう!」


リボル・リボーンが叫び、呼応したリボンの騎士団がさらなる攻撃を加えようとしたが、

ブレイキング・ウィールは体をひねり回転すると、円盤に取り付いていた歩兵達が跳ね上げられる。

機を得たとばかりに、床に手をつき逆立ち、両足を振り回し攻撃に転じるブレイキング・ウィール。


リボル・リボーンは素早く冷静に表情も変えずに身を伏せるとブレイキング・ウィールの腕を蹴り払う。

間髪を入れず追い討ちをかけ、取り押さえようとするリボンの歩兵。

ブレイキング・ウィールは倒れ込みながらも、それらを的確にさばききり着地すると

さらに飛び退き間合いを取った。


にらみ合うリボル・リボーンとブレイキング・ウィール。


隙を伺い合う両者が再び攻撃をくりだそうとした時、

ユニベルサリスが念話でリボル・リボーンに語りかけてきた。


(キズナ!彼女らの目的は時間稼ぎ、ここで我らを足止めさせる事です!)


「!」


(ななが危ない!ここは僕に任せて先に行ってください!!)


ブレイズン・カーフとペアー・オブ・アングィッシュの攻撃を防御していたユニベルサリスが

一転、ペアー・オブ・アングィッシュの体に掴みかかり抱え上げる。


「なんと?!」


ユニベルサリスは驚くペアー・オブ・アングィッシュを

力の限り、ブレイキング・ウィールへと投げ飛ばす!


「ドォォォォォォりゃぁぁぁ!!」


「うお~~~~~ぅ?!」


一直線に飛んでいったペアー・オブ・アングィッシュが、ブレイキング・ウィールに激突する!


「ぐぁっ?!!」


死角から飛んできたペアー・オブ・アングィッシュを受け止めることができずに

共に弾き飛ばされるブレイキング・ウィール。


その隙にリボル・リボーンが二、三回後ろに飛び退くと、

踵を返し、夜の街をめがけて飛び出していった。


「ぬっ?!こちらの意図に気づいたか!!追えっ!!」


「そうはさせません!!」


言うが早いかユニベルサリスが呪文を唱えると、周囲の景色が一変、

幻想的な空間が発生し、あたりは異空間に包まれる。


そう、ユニベルサリスは彼女らを閉じ込める為、周囲に『結界』を張ったのだ。


魔法使いの戦闘空間(バトルフィールド)『世界』が空間を塗り替える力なら

『結界』は空間を切り取る技。


今、ユニベルサリス達が戦うこの場は周囲より孤立した異空間となったのだ!!








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ