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第三話 穢れた魔法 その7

 禍戦士必殺の一撃を喰らい爆裂四散するリボル・リボーン。


「キズナ!!」


四散したリボル・リボーンの破片が宙を舞うのを目撃して

驚愕し立ち尽くす魔法猫クロシロウ。

その隙をつき、禍戦士ブービー・トラップが殴りかかる。


「クロシロウ!!」


ユニベルサリスの呼びかけにハッと気を取り直したクロシロウが

間一髪でそれをかわすと

空を切った禍戦士の拳が轟音をあげ大地に突き刺さり

砕けた大地の破片が飛沫のごとく飛び散った。


「目の前の敵に集中しろ!」


忠告を受け、敵に向き直ったクロシロウは

禍戦士の攻撃を避けつつ反撃を試みる。

魔法猫パンチの一撃!

魔法猫キックの二擊!!

そして渾身の体当たりの三擊!!!

だがいくら攻撃を決めようともその魔力は禍戦士の、

血管の塊のような表皮を流れ霧散してしまうのだった。


一方、ユニベルサリスは戦うクロシロウを横目で見ながら、

禍戦士スター・トラップに更に左手刀を突き刺す。


「むん!」


力を込めグルリと両腕を振り回すと、

その一撃がうずを巻き、禍戦士の体に波紋状の穴を生じさせる。


ポッカリと口を開いた穴の奥に、スター・トラップ本来の姿を確認すると

ユニベルサリスはスター・トラップ目掛けて掌底の一撃を食らわす。

魔力を込めた衝撃にスター・トラップの体がびくんとのけぞると

白い光の文字列(ランゲージ)が体中に走り、

その胸に埋め込まれていた魔針虫が押し出されて顔を覗かせた。


素早く魔針虫を掴み引き抜こうと試みるユニベルサリス。

魔針虫は足を回転させ、その腕に突き刺した。


だがユニベルサリスは構わずに満身の力を込めて一気に引き抜く!


「グオオオオオオオオ!!」


凄まじい雄叫びをあげ

ブスブスと煙を上げ動きを止める禍戦士。

ユニベルサリスが魔針虫を握る腕に力を込めると、魔針虫の蠢く足が腕からはじき出される。

更に魔力を込めて握るユニベルサリス。


すると魔針虫の周囲の空間が結晶化し始め

ついには魔針虫をその中に取り込んでしまった。


禍戦士は、それに呼応するかのように一気に崩れ去り

砕けた破片は塵となって消えていく。

そして中からは、一糸まとわぬスター・トラップが倒れ出てくる。


意識の無いスター・トラップを優しく受け止めるユニベルサリス。


ユニベルサリスは手早くスター・トラップの顔色、呼吸、心拍数を確認する。

そして、その無事を確信すると、クロシロウの方を向き叫ぶ。


「本体です!中の本体に術語(ランゲージ)を叩き込め!!」


ユニベルサリスの忠告を聞いたクロシロウは、間合いを取り姿勢を一際低く構えると、

一気に禍戦士へと飛びかかっていった。


「ニャー!!」


叫び声を上げ、禍戦士へ取り付いたクロシロウは両前足を使い

猛烈な勢いで体表を殴り!砕き!掘り進んでいく!


「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャーーー!!」


これぞクロシロウの必殺技!ニャニャニャラッシュ!!


ニャニャニャラッシュの猛攻にひるんだ禍戦士は

捕まえていたリボンの歩兵(リボンズ・ポーン)を放り出しクロシロウに掴みかかるが

時すでに遅く、クロシロウは体表を削り取り内部の本体へと到達していた。


「ニャニャーーー!!」


クロシロウが光る肉球を禍戦士体内のブービー・トラップへと叩きつけると

光はブービーの体へと移り、身体を駆け巡る!

そしてその体に白く光る魔法文字を浮かび上がらせた!

さらに魔法文字は輝きを増し、渦を巻きながら収束し文字列(ランゲージ)を形成すると

胸の魔針虫の頭を押し出した!


クロシロウはバギン!と音を立て魔針虫に食らいつくと

魔針虫はもがき、蠢く足を使い抵抗するが、

クロシロウはものともせずに魔針虫を咥えたまま走り出した!


禍戦士の体を削りながら

まるでコンパスのように魔針虫を中心に回りだすクロシロウ。

叫び声をあげ苦しみ始める禍戦士。


次の瞬間、禍戦士の胸に生じた大きな穴からクロシロウが飛び出す!


回転しながら着地したクロシロウは

口に咥えた魔針虫を一撃のもとに噛み砕く!


その一撃に禍戦士は断末魔の叫び声をあげ、ボロボロと崩れ去り

中からブービー・トラップがこぼれ落ちる。


ブービー・トラップに駆け寄り、息があるのを確認したクロシロウは

リボル・リボーンを倒した禍戦士ミスティーのもとへ急ごうとするが

ユニベルサリスがそれを止めた。


「ちょ?!何してるのよ!!」


「落ち着け!まだキズナは力尽きてはいない!」


「え?!」


ユニベルサリスの言葉に驚くクロシロウ。

冷静になって禍戦士を見やると、なにやら異変があることに気づく。


キズナを倒したはずの禍戦士は

何故か自分たちに向かっては来ようとはせず、その場で狂ったように腕を振り回し暴れているのだ。


よくよく目を凝らしてみると禍戦士の周囲を何かが旋回している・・・

旋回するそれは『リボン』

細く、長く、帯を引く赤いリボンであった。


「!!」


クロシロウは改めて周囲に散らばったリボル・リボーンの破片を観る。

リボル・リボーンの破片かと思われていたそれらはいつの間にか

禍戦士を取り巻くのと同様の、赤いリボンへと姿を変えていたのだった。


そしてそれらのリボン同士は全てが、

更に細く伸びたリボンでひとつにつながり合っていた。


「クロシロウさんは初めて見るんだったね、

 これが愛染キズナ、リボル・リボーンの必殺技・・・・・・」


ユニベルサリスが説明する間も

赤いリボンは風を巻き上げ、空を切りながら禍戦士の周辺へと集まっていく。


「リボル・リボーン・リボン・リボーン・リボン・アラ(荒)モード!!」


「リボル・リボーン・リボン・リボーン・リボン・アラモード?!!」


瞬間、リボンは禍戦士の体へと一気に巻き付いた!

ギリギリと音を立て、禍戦士を締め上げていくリボン。

動きを封じられた禍戦士が怒りの雄叫びをあげようともリボンは容赦なく締め付け続ける!


「キズナ!内部の本体に直接攻撃を!」


ユニベルサリスの叫びに答えるかのように

禍戦士の表皮を砕き体の中へとめり込んでゆくリボン。


めり込んだリボンは、すぐに内部のミスティー・クールの体へと到達し巻きつくと

表面に魔法文字が浮かび上がる。

そしてそのまま光り輝くと、

強力な魔力を伴った文字列(ランゲージ)の奔流がミスティー・クールの体へ流れ込む!

その力は胸に埋め込まれていた魔針虫をあっけなくはじき出した!


呻き苦しみ出す禍戦士。

その胸が一瞬膨れ上がったと思うと体表を突き破りリボル・リボーンの腕が飛び出し、

弾き飛ばされた魔針虫をガシッと掴む!

間髪を入れずリボル・リボーンは握り締めた魔針虫を一撃のもとに砕く!


禍戦士は前のめりに倒れ込みながらボロボロと崩れ去り、塵と化す。

風に巻き上がる塵の中には、ミスティー・クールを支えたリボル・リボーンがそそり立つ。

掲げた拳からも塵と化した魔針虫が、風に煽られ空へと四散していった。


リボル・リボーンの生還に呼応し、走り寄ったリボンの歩兵(リボンズ・ポーン)達が

それぞれ『はぐれ』の魔法使い達を受け取り介抱し始める。

リボル・リボーンも歩兵(ポーン)にミスティー・クールを任せると

大きく一息ついた。


「ふう」


「キズナ!」


「もう!やられちゃったかと思ったわよ!」


「ゴメン、ちょっと油断した。まさか魔力を受けつけないなんて・・・」


「どうやら、あの禍戦士は

 食らった魔力を吸収、己の力を付加し攻撃に転用出来る能力

 を持っていたようですね」


「そして、それらの源は、

 彼らに埋め込まれていたソイツの力だった、てわけね」


ユニベルサリスの持つ魔針虫を一瞥しクロシロウが言う。

リボル・リボーンは魔針虫をまじまじと見るとユニベルサリスに疑問をぶつける。


「でも、よくコイツに気づきましたね?」


「ええ、一見、体表を流れていった魔力はバラバラにちっていくように見えましたが

 ほんの一瞬、一箇所に集中していくのが確認できたので

 そこに何かがあるんだろうと思いまして・・・」


「なるほどね・・・・・・

 ところで、ソイツどうするの?」


クロシロウがユニベルサリスの手の中の魔針虫を指し示しながら問い掛ける。


「詳しく調べれば何かわかるかもしれない」


歩兵(ポーン)!」


ユニベルサリスは歩兵(ポーン)の一体に声を掛けると

手にした魔針虫を投げて渡した。


「それを持っていてください。

 他のポーンは彼等の介抱を頼みます」


ビシッと姿勢を正し命令を聞いた歩兵(ポーン)達が忙しなく動き出す。


「僕はこれから、ななのところに急ぎます。

 クロシロウさんは、ここで彼らとキズナの介抱をお願いします」


「?!私なら大丈夫!一緒に行きます!」


「ダメです。君は消耗している。

 戦いには参加させないし、一人で置いてもいかない」


有無を言わさず話を進めるユニベルサリス。


「クロシロウさん!あとは頼みます!」


「OK!任せて」


クロシロウに後を託したユニベルサリスは

空高く一気に跳躍するとなないろの元へと急ぐ。

リボル・リボーンは口惜しそうにその姿を見送っていた。


「心配しなくても大丈夫よ。向こうには憩もいるし、なんてったってユニベルサリスなんだから!」


フォローするクロシロウ。

だがリボル・リボーンは明らかに不満そうだ。


 私はまだ戦えるのに!ユニベルサリスは私のことを軽く見てるのか?

 確かに、今の戦い方は無様だったけど、それは油断していたからだ。

 もう一度、私の真の力を見てもらえれば、きっと見直してくれるはず!


「さて、こいつらを運ぶためにセバスチャンを呼ばなきゃね・・・キズナ、スマホ貸してもらえる?」


「クロシロウさん・・・ゴメン!!」


そう言うとリボル・リボーンはリボンの歩兵(リボンズ・ポーン)を引き連れ、一気に跳躍すると

脱兎の勢いでユニベルサリスの後を追う。


彼女の立っていたその場には、残されたスマホが回転しながら宙を舞う。


「ちょ?!キズナ!!」


クロシロウは、あわててスマホを受け取りつつ

引きとめようとするが

リボル・リボーンの姿は既に遠く、小さくなっていく。


「もう!強引なんだから!!」


言いながら手早くスマホを操作するクロシロウ。


「……もしもし?セバスチャン?大至急、すぐにこっちに来て欲しいんだけど……

 え?!襲撃?!そっちも?!」


いつものように落ちつた口調で電話に出たセバスチャンは

魔女の家が現在襲撃を受けていることを淡々と告げてきた。


「はい、現在ミス・ストーン・ラヴァー様方と一緒に迎撃に応っておりますので

 少々お待ち頂く事になるかと…」


電話に雑音が混じり始め、声がだんだんと小さくなっていく。


「…申し……ません、誠に失礼な……すが、

 少々……んで来ましたので、一旦切らせてい……」


セバスチャンが言い終わる前に通話は切れてしまった。

多分、ミス・ストーン・ラヴァーか敵が魔法使いの世界を展開させたのだろうとクロシロウは思った。


「もう!どうすりゃいいのよ!」


クロシロウは悪態をつき、傍らに横たわるはぐれ魔法使い、スター・トラップの頭をポコンと叩く。

ビクっと反応し、何やらうなされ始めるスター・トラップ。


「うう……ネギが…ネギがぁ~…」



クロシロウは

ネギじゃなくてネコだよわたしゃ!

と思いつつ呟いた。


「コイツら、此処に置いていちゃおうかしら!」




 虹乃家なないろの部屋では

虹乃なないろと日笠薫が、ひとつのベッドで静かに寝息を立てながら眠っている。


寝返りを打つ日笠薫。

その薫の右隣で眠っていたなないろが、眠たげな目をこすりながらゆっくりと起き上がると

日笠薫の上に静かに覆いかぶさるようにしながら左側に回り込む。

そして薫が目を覚まさないのを確認すると、

そのままゆっくりベッドから降りていった。


薫を起こさないように静かにドアを開け、部屋を出たなないろがドアを閉める。


「何をしようというのかね?」


「ヒャッ?!」


突然、後ろから声をかけられ飛び上がるなないろ。

振り返るとそこには恋華憩(こいはないこい)の姿があった。


「憩で~す、アハッ♡」


「もう!憩さんったら!もう!漏らしちゃうところだったじゃないですか!」


「漏らしちゃうとこ、とか言いつつ、実は漏らしちゃってたり?」


「…二滴ぐらい」


「二滴ぐらい」


「じゃなくて!!」


陽気に、ボケをかます憩に対し

ドキドキと早鳴る胸を抑えながらも思わずノリツッコミをするなないろ。

憩は手を合わせ、ウインクしながら、さらにいたずらっぽく微笑む。


「ゴメンゴメン、驚かせちゃった?」


「…というか、憩さん、今あきらかに驚かせようとしましたよね?」


「ン~、なんのことかな?フフフ…それより何かあった?」


「いえ、ちょっとおトイレに…」


「そっか~」


トイレに行こうとするなないろ。

その後ろに、何故か憩も着いてくる。


「…あの、憩さん?」


「ん~、ほら、私ボディーガードだから」


「まさかトイレの中にまで着いてくるとか、ないですよね?」


「まさか~、ドアの前で待つって。

 あ、でもユニベルサリスならそうしようとしたかも?」


「そ、それはちょっと…ってか、ドアの前で待たれるのもなんか恥ずかしいんですけど…」


「そお?んじゃここで待つから、何かちょっとした違和感でも感じたらすぐに呼んでね?」


「はい。色々とすいません」


なないろがトイレへ入っていくのを確認すると

憩は窓から周囲を確認し警戒する。


 静かだな…でも、なにか妙な胸騒ぎがする…

 ななの部屋を中心に魔術的防御を施してあるが警戒を怠らないようにしないとね…


憩が思いを巡らしているとスマホに着信を知らせる振動があった。

急いでスマホを耳に当てる憩。


「緊急事態です!今そちらに『暗い日曜日』がむかっている!」


「ユニベルサリス?!」


「追ってはいるが間に合いそうもない!五分!五分もちこたえてください!」


そう一方的に告げると通話が切れた。

憩はトイレから出てきたなないろに駆け寄るとその腕に掴みかかる。


「ひゃっ?!い、憩さん?!また脅かそうとしてぇ…」


「なな!緊急事態よ!すぐに部屋に戻って!」


驚き、不満を洩らすなないろだったが

真剣な表情をした憩の剣幕にただならぬ物を感じ一気に青ざめる。


「な、なに?!どうしたの?!」


「いいからはやく!!」


憩は説明ももどかしく、なないろの体に手を回すと肩に担ぎ上げ階段を駆け上がっていく。


「ふえええええええええええ?!」


勢いよくドアを開け、なないろの部屋の中へ滑り込む憩となないろ。

突然の騒ぎに日笠薫も飛び起きて叫ぶ。


「な、なに?!どうしたの?!」


だが憩は答えずに、なないろを下ろし自分は部屋の外に飛び出すと

ドアを閉めながらなないろ達に言い聞かせる。


「いい?何があってもこの部屋から出ないで!窓もドアも開けてはダメよ!絶対に!!」


「憩さん?!」


「絶対に開けちゃダメだからね!!」


「なになになになに?!」


なないろの呼びかけにも、薫の問いかけにも答えず、憩は部屋を出てドアを閉めてしまった。



「なになに?!何があったの?!ねえ!」


「わかんない、トイレから出たらいきなり……」


 襲撃?!間違いない!ななを狙う魔法使いの襲撃だ!


日笠薫は、そう確信するとベッドから降りてなないろの肩を引き寄せ手を握り言った。


「と、取り敢えず、お、落ち着こう…」


「うん…」


なないろの震えや怯えが体を伝わり、薫にも容易に感じ取れる。

薫はなないろの不安を取り除こうと努めて明るく語りかける。


「だ、大丈夫!!みんな、ついてるんだから!」


そしてそれは、なないろにだけでなく自分自身に対しての言葉でもあった。





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