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第三話 穢れた魔法 その4

なないろ達が和気あいあいと会話を楽しむ中、

時計が22時の訪れを告げる。


「あ、もうこんな時間なんだ・・・」


「んじゃ、そろそろお開きに致しますか」


日笠薫の言葉に一同が同意すると

みんながそれぞれ後片付けを始める。

楽しい時間は、あっという間に過ぎていく、と言われるが

なないろは、今日、いつになくそれを実感していた。


見送りのため、玄関に集まった一同を前にミコトが口を開く。


「今日は、お招き頂き、ありがとうございました。」


「ううん、私も楽しかったし・・・」


「今度は是非、僕の所にも遊びに来てくださいね?

 勿論、泊まりでもOKですよ!」


「うん!・・・ほ、え!?」


ミコトの言葉に元気いっぱいに答えたなないろ。


だが一瞬考えた後、

その意味を咀嚼し、みるみると赤くなる。


「お、お泊り!?は、はぅ~~~!」


赤くなって混乱するなないろを前に薫が大げさに割って入った。


「ぬぁ~!あれほど言い聞かせたっツーのに、ま~た泊まりとか言ってるし、この人!

 ダメです!ななは渡さ~ん!」


薫はふざけて後ろからなないろを引き寄せ、抱きしめながら言うと

ミコトは笑いながら言った。


「いやいや、そこは冗談です、冗談!」


そんなミコトに対し、ツッコミを入れる薫。


「・・・あんた、もしかして、ななの反応が見たくて言ってない?」


「えっ!?」


だが薫のツッコミに声を上げたのは

ミコトではなく、なないろだった。

その意味するところに、なないろはますます混乱する。


いや、でも、もしかしたら・・・?

そう思った恋華憩(こいはないこい)愛染(あいぞめ)キズナも揃ってミコトに質問する。


「「そうなの?」」


「いやいや、まさか!」


笑い声を上げながら答えたミコトを訝しげに見つめる薫、キズナ、憩の三人は

同時に、同じ思いを抱いた。


「「「めっちゃ、あやしい・・・・・・」」」


薫もミコトのノリにも慣れてきたらしく、

皆で楽しそうに冗談を言い合えるぐらい打ち解けてきたのだろう、

今の場の空気は先刻、虹乃家に来る前よりも

より柔らかに感じられるものになっている。


「ではキズナ、予定とは変わりますが今夜は僕とあなたで周囲を

 憩は、ななと薫についていてあげてください」


「解りました」


自分を守るために行動する魔法使い達になないろが心配気に声をかける。


「あの、無理はしないで!危ないと思ったら、逃げちゃってくださいね!」


「大丈夫です!無理はしませんので安心してください。それに、

 こう見えても僕、案外強いんですよ」


それを聞いていた恋華憩(こいはないこい)愛染(あいぞめ)キズナがうんうんと頷く。


「それじゃいきましょう、ユニ、キズナ」


魔法猫のクロシロウがスルスルとミコトの肩に乗りながら

二人に合図する。


それを見た使い魔クマルマルが自分もついていこうとするが

恋華憩に引き止められてしまった。


「クマルマルは残るの!」


「クマルッス!」


クマルマルはそう答えるとUターンし、

ポテポテと薫の足元まで歩いていく。


ミコトと共に玄関から出ていこうとしたキズナは

最後に元気よく振り返ると、なないろ達に敬礼をした。

薫の足元にいるクマルマルが敬礼をし返す。

それを見たキズナがニコっと微笑み、声に力を込めて言った。


「では、行ってきます!」




 同時刻、高級マンションの17階にある一室。


そのベランダから2人の少女が虹乃家を眺めていた。


小柄な少女、晴山(はれやま)ルカは手にしたカメラの液晶画面を覗き込み

大人びた少女、八雲(やくも)ナルミに自分が見ているものの説明をはじめる。


「いるいる!ひの、ふの、み~の・・・5人、なないろン家の周囲に、魔法使いが5人確認出来るっす。」


「6人よ」


「えっ」


「6人。あと一人、ほら、あそこのコンビニの右の建物の影に潜んでいるわ」


ナルミはそう言いながら手早くその場所を指し示す。

だが、ルカにはそこに何者の姿も確認することは出来なかった。


「ん~全然分からないぞぉ・・・カメラに映らないタイプかな?」


ルカがカメラの液晶画面から目を離し、その方角を凝視すると

ナルミがルカの耳を軽く引っ張って言った。


「まじまじと見るのはやめなさい。気づかれるわ」


「魔女会の奴っすかね?まさか聖魔法騎士団が見張ってるんじゃあ・・・」


「あいつらならもっと堂々としてるわよ。恐らく私らの同類じゃないかしら?」


「ほへ~、みんな虹乃なないろに御執心って訳だァ・・・・・・あッ!」


突然、声を上げるルカ。


「師匠師匠!ユニベルサリスと魔法少女Aが外に出てきましたよ!」


「どれ・・・ああ、リボル・リボーンね。ってことは部屋に残ったのはフリー・フリーズ一人か・・・」


何やら思案するナルミ。

ルカは手すりに置いたカメラの液晶画面を覗いたまま、ナルミに語りかける。


「しかし、あれですね、うちら運がいいっすね!

 良子(よいこ)ちゃんの部屋から、なないろの家がこんなによく見えるなんて」


「そうね。こうして楽に監視できるのは便利よね。

 カメラ程度じゃあ映らないものもあるってのが難点だけど・・・

 まぁ、魔力を使うより奴らに気づかれにくいってのはいいわね」


ベランダからなないろの家を監視し続けるナルミとルカ。

その二人の後ろ、部屋の中では倉持良子(くらもちよいこ)がテーブルに受け皿を並べ

カップを置くと、その中に暖かな湯気を上げるミルクを注ぐ。

ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべながら、良子は二人に声をかける。


「二人共~、コーヒーとホットミルク入ったわよ~」


「は~い、ありがとう良子ちゃん」


そして良子はベランダのナルミの側まで近寄ってくると、


「私はこれからお風呂に入るけど、飲み終わったらそのままにしておいてね、あとで私が片付けるから。

 それと、星の観察はいいけど、あんまり夜更かししちゃダメよ」


そう言い残し部屋の奥のドアから出て行った。

ナルミは立ち去る良子に軽く手を振る。


「さあ、今夜はこれぐらいで部屋に戻りましょう」


「え、見張ってなくていいんです?」


「あんまりジロジロ見てるとバレるしね」


ナルミの予想外の発言に驚き、ルカが意見するが

ナルミはそれに構わずに、部屋に戻ろうとする。


「あの中にユニベルサリスを倒せる奴がいるとも思えないし、奴らもほとんどが様子見でしょ」


「う~ん、あれだ、戦いで疲労してるとこを横からかっさらう~!とかのパターンは?」


「そんなこと考えてる奴、ほかにも大勢いるわよ」


ナルミはルカの方に向き直り、さらに言い聞かせる。


「いい事?ルカ、そもそも、なないろの力もまだ未知数なのに仕掛けるなんて愚の骨頂よ。

 動くならもっと情報を集めてからでも遅くない」


「無理をすれば損する、いつも言ってるでしょう?

 さあ、解ったら部屋に入りなさい」


「は~い」


部屋に入っていくナルミの後に続いてルカがいそいそと後に続く。

ナルミはテーブルの上に置かれたカップを取ると、

ふと思い出したかのように切り出した。


「あ、そうそう、私これから良子ちゃんとお風呂入った後、一緒に寝るから。

 あんた、今日はソファーで寝なさい」


そう言うとナルミは、手にしたカップを口にし、一気に煽り飲み干した。

ルカは突然の提案に、幼児のように駄々をこねる。


「ええ~!!嫌だぁ~!」


「わがまま言わないの!しばらくはここに住むんだから、

 良子ちゃんにはきちんと「(しつけ)」しとかないといけないでしょ?」


「でも、一人じゃ嫌ぁ!暗いの、怖いッス~!」


不満を洩らすルカに対し

ナルミは少々きつめに言い聞かせる。


「明かりつけたまま寝りゃあいいでしょ!大体、暗闇を怖がる魔法使いなんて笑われるわよ。

 いい加減、克服しなさい!克服!」


だがルカはまだ不満そうだ。


「むぅ~~~~~!」


「今日だけよ、今日だけ!

 明日からは3人で仲良く寝ましょう、ね?」


「じゃあ、それじゃあ、それ(プラス)

 今度の日曜日に何処かに遊びに連れてってくれるなら、ガマンするッスよ・・・」


「ちゃっかりしてるわねぇ・・・でも『何らかの対価を求める』その姿勢、良いじゃない?」


ナルミはほほ笑みを浮かべながらルカを見つめ

その頬を両手で優しく覆う。


 「『交渉に使えるチャンスは逃さない』・・・ンフフ、解ってきたじゃない。

 いいでしょう!何も予定が入らなかったら、どこか連れてってあげる!」


「マジっすか!?やったぁ!!」


「交渉成立ね。

 んじゃ私、お風呂入ってくるわね。覗いちゃダメよ、見たら目ン玉えぐり出すから」


「は~い」


言い終わるとナルミは背を向けたまま手を振り部屋から出ていった。

ルカはそれを見送りつつ、椅子に腰掛け

カップを手に取り、口を付けミルクをすするが


「あちちち!」


と、その熱さにすぐ口を離し、フーフーと息を吹きかけ冷ます。

そして今度は慎重にカップに口を付けゆっくりと飲み始めた。


「ん~~~?どこ連れてってもらおうっかなぁ~・・・」


ホットミルクを飲みながら、ルカは幼い子供のように日曜日への期待に胸を膨らますのであった。




なないろの家から出てきたミコトとキズナは

周囲を観察しながらそのまま歩を進めていく。


「いますね・・・6人。ポーンの報告によれば、どれも『はぐれ』のようです。

 ですが、『暗い日曜日』は確認していません」


キズナが報告するがミコトはそれを聞いているのかいないのか、

遠くの空を眺めているようにキズナには見えた。

だが、実際にはそうではない。

遠くに立つ一際高いビルに視線を向けていたのだった。


何やら険しい顔付きのミコト・・・


そんなミコトの様子を不思議に思い

クロシロウが声をかける。


「何かいた?」 


「いえ・・・気のせいだったようです」


ミコトは視線をキズナへと戻すと改めて答える。


「そうですか、ですが『暗い日曜日』は必ず何らかの行動を起こすはず・・・

 このまま警戒を怠らず、分かれて周囲をパトロールしましょう」


ミコトの言葉にキズナとクロシロウが頷き

二人の魔法使いと一匹の魔法猫はそれぞれ別の方向へと散開していった。



 なないろの家から遠く離れたビル。

ミコトが見つめていた、そのビルの屋上。

そこでは『魔女会預かり』の魔法少女、マギナ・デンタータこと牧野安留葉(まきのあるは)

横になり空を眺めていた。


「・・・気づかれたカ・・・?」


無表情で空を眺める安留葉の口が緩む。

ユニベルサリスの視線を避けようと

咄嗟に隠れた自分の滑稽さに安留葉は思わず笑い声を洩らす。

『牙の魔女』と呼ばれていた時はこんな滑稽なやり方は考えもしなかっただろう。

絶対の自信と誇りを持っていたあの頃なら全て力で解決していたはずだ。

目の前に立ちふさがる全てのものを力でねじ伏せたシンプルなあのやり方で。


だが、今はそんなことどうでもいい・・・

今の自分の目的の為ならどうでもいいことだ・・・


そう思いながら手元にビニール袋を引き寄せる安留葉。

食欲は無い、が何か口にしていたほうがいいだろう・・・

安留葉はそう考えるとコンビニで買った菓子パンを手に取り一口かじる。

そして、これから起こるであろう事を思い、再び静かに待ち続けるのであった。



 なないろの家から離れた場所にある路地裏、

空調の室外機やビールの空き瓶が積み重ねられている薄暗い闇の中では

キズナが『はぐれ』と呼ぶ魔法使いが二人、周囲を警戒しながら何やら密談を交わしていた


「スター様~、やっぱりやっぱりやめましょうよ~」


手下の魔法使い、貧相な痩せ男の『ブービー・トラップ』の問いかけに

お色気過多の年増女『スター・トラップ』が声を荒げる。


「何言ってるんだい!ブービー!こんな千歳一隅のチャンス、逃すわけにはいかないよ!」

「うまい具合になないろを手に入れられれば

 アタシ達『トラップ一家』がなないろを通し魔法使い共を支配できるかもしれないんだよ!?」


「つったって、我々の実力じゃユニベルサリスには手も足も出ませんし、

 もう、こうしてること自体無駄なんじゃないかな~?」


「そんなんだからアンタはいつまでたっても三流なんだよ!

 いいかい?なないろを狙ってるやつらは他にもいるんだ。

 そいつらとユニベルサリスが戦って消耗しているところを横からかっさらうんだよ!」


「そんなにうまくいくかな~」


「うまくいくかな?じゃない、うまくやるんだよ!!もう!」


スター・トラップは憤慨しながら辺りを見回す。


「ところで、ハニーはどうしたんだい?」


「ハニーちゃんは今日はイベントがあるとかでこれないって言ってましたけど?」


「なんだい!?それ!聞いてないよ!?」


「まったく!イベントと魔法王の座、どっちが大切なんだろうね!?」


「お前もきちんと言い聞かせたんだろうね!?ブービー!」


ますます憤慨したスター・トラップ。

だがブービー・トラップは答えない。


「ブービー?」


スター・トラップは振り返るがそこにブービー・トラップの姿はなかった。


周囲の違和感に気づき、上の方に視線を向けるスター・トラップ。

姿を消したと思っていたブービー・トラップはそこにいた。


だが・・・・・・


宙に浮いたブービー・トラップの姿は真四角の、異様なものに変わっていた。

例えるなら『透明な箱の中に押し込まれた』コンパクトな、人の肉のブロック。

その中央にある顔、

その口が、パクパクと痙攣するかのようにうごめいている。


人の体がこんなにも小さくなるものなのか?


肉の箱と成り果てたブービー・トラップが絞り出すように呻く。


「ス・・・スターさまぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」


肉の箱がドスンと音を立て地面に落ちる。

だがこんなにもおぞましい姿にされようともブービー・トラップにはまだ意識があるらしい。


「すたぁぁぁぁぁさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ひ!ひぃ!!」


涙を流しスター・トラップに助けを求めるブービー・トラップ。

しかし、スター・トラップはあまりのおぞましさに恐怖し後ずさる。


後ずさったスター・トラップの肩が何かに当たり動きを止める。


スター・トラップはその感触に恐る恐る振り返ると

そこにはふくよかな体型の、どちらかというと肥満体型、の、

おとなしそうな雰囲気の大柄な女が立っていた。


女はスター・トラップの肩に置いたままの手に力を込め、

ニッコリと微笑みこう言った。


「・・・ヒューマン・キューブノ作リ方ハネ・・・」



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