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第三話 穢れた魔法 その3

コンビニの駐車場にリムジンと、それに続いてオートバイが入って来ると

周囲の人達は場違いな高級車の登場にちょっとした騒ぎになった。


停車したリムジンのドアを運転手のセバスチャンが開けると、

中から、ユニベルサリスこと命ミコト、日笠薫、そして虹乃なないろが降りてくる。

足元には魔法猫のクロシロウと使い魔クマルマルが付き従っているが一般人には見えない。

優雅に歩くクロシロウに対し、クマルマルは車からピョンと飛び降り着地しようとしたが

足がもつれて、ベシャリと倒れ込んでしまう。

周りを見回し、恥ずかしそうな顔をするクマルマル。

しつこいようだが、勿論、一般人にその姿は見えてはいない。


バイクを停めた愛染(あいぞめ)キズナと恋華憩(こいはないこい)

リムジンから降りてきた三人へと歩み寄り声をかけた。


「えっと、はじめまして、といったほうがいいのかな?」


キズナが髪を払いながら、なないろに向かってあらためて自己紹介しようとすると

なないろが言った。


「えっと、愛染キズナさん、ですよね、魔女の家の名物娘の・・・・・・」


キズナはチラリと憩を見るが憩は、我存ぜぬ、と行った様子でしらを切る。


「あぁ~、『アレ』覚えてたの・・・・・・

 そう、私は愛染キズナ。でも名物娘ってくだりは忘れてね」


「あいぞめ・・・きずな・・・?」


魔女の家でその名を聞いた時から何か引っかかっていた薫が

ハッと気づき声を上げる。


「あっ!思い出した!愛染キズナって、あの有名読者モデルの!?」


「あら?読者さん?ありがとう、でも有名ってほどじゃないけどね!」


「あの石像のモデル、キズナさんだったんだ!?・・・

 ?でも、それなら、あの石像は何故あんな妙ちきりんなポーズで?」


未だにあの時の石像は、

愛染キズナ本人がミス・ストーン・ラヴァーによって石化された姿だと気づいていない薫に対し、

キズナは懸命に言いくるめようとする。


「そのことは忘れて!?あなた達は何も見なかった!!OK!?」


「ブフゥ!」


と、突然吹き出すなないろと薫。


キズナの後ろで、憩があの石像のモノマネをしながら

『アヘペロ』と命名した変顔にダブルピースのポーズで顔を出すのを見たなないろと薫は

思わず吹き出してしまったのだ。


「!?」


二人の反応に、背後の憩に気がついたキズナが振り向き

突っ込みを入れようとするが、憩いはひょうひょうとそれを躱す。


「い~こ~~い~!」


「オホホホホホホホホホ・・・・・・」


まるでお笑い芸人のようなノリの恋華憩と愛染キズナ。

二人の美少女は、その容姿に似合わず、気さくでノリのいい性格のようだ。


 この二人とならすぐに仲良くなれそう


虹乃なないろと日笠薫は顔を見合わせながら笑顔で頷きあう。


改めて自己紹介しあった一同は、コンビニ店内へと買い出しに向かう。

意気揚々と先陣をきる薫。


「さて、それではコンビニ買い出しへ、レッツら・ゴー!!」


コンビニに入った一同は、あれやこれやと相談しながら買い物を終えると

再び車に乗り込み、虹乃家を目指す。





虹乃家、

そしてその玄関口へと到着した一同。


肩にクロシロウを乗せたなないろが差し込んだ鍵をひねり扉を開く。


「さあ、どうぞ皆さん上がって」


「では、お邪魔しま~す」


クロシロウとなないろに続いて

クマルマルを抱いた薫、キズナ、憩の順で玄関をくぐる。

ミコトは静かにそれを見守るとキズナ達に声をかけた。


「それでは、キズナ、憩、後はよろしくお願いします」


そう言うとミコトは、キズナ達にその場を任せ立ち去ろうとする。


「あ、あの!」


「?」


「あの・・・ミ、ミコトさん・・・も、一緒にどうですか?」


立ち去ろうとするミコトに、なないろが少し遠慮がちに声をかける。

心臓がドキドキと早駆け、顔が熱くなるのが自分でもわかる。


「ありがとうございます。ですが、これから周囲のパトロールに行かなければなりませんので・・・」


「あ、ううん!無理に引き止めてごめんなさい!」


慌てて答えるなないろ。


「まあ、少しぐらいなら、いいんじゃないの?」


と、そんななないろの様子を見ながら薫がぼそりと呟く。


「そうそう!私も、もっと、ユニベルサリスさんと仲良くなりたいな~」


言いながら憩は腕をミコトの腕に絡めながら念話で語りかけてきた。


(キズナのポーンも展開してあります。

 ここは二人を安心させる為にも、お邪魔させてもらっては?)


憩の提案に躊躇するミコトにクロシロウは目で合図を送る。


(そうね、顔には出さないけど、二人とも不安でしょうしね。特にななが)


スっと手を滑らす動作をしてミコトの答えを待つクロシロウ。


「・・・そう、ですね。それでは少しだけお邪魔させていただきます」


ミコトが笑顔で答えると、

途端に、ぱあっと明るくなるなないろの表情。

ものすごくわかり易いなないろの反応に、

薫は、しょうがないなぁ、と言いたそうな顔でなないろを見た。


そうして皆を家の中へと招き入れつつも、

今のなないろの頭の中は、ひとつの事でいっぱいだった。


(きゃ~!いっちゃった!ミコトさんって呼んじゃった!!)


嬉しさの反面、こうも考える。


(でも、いきなりで、馴れ馴れしい女の子だと思われちゃったかも・・・?)


少し不安にも思ったが、言ってしまったものは仕方がない、

これを機会にもっと仲良くなれますように!

となないろは願うのであった。


かくして、なないろの家で開催されることになった魔法少女の女子会

(男子が一名いる時点で女子会とは言えないのだが・・・)


テーブルの上に広げられているのは

途中で寄ったコンビニで購入してきたお菓子や炭酸飲料等。

それらを皿や器に綺麗に並べたり、グラスを用意したりする薫。

キズナと憩は薫に指示を仰ぎながらそれを手伝う。


ミコトはというと、台所でちょっとした料理を作るなないろを手伝い

テキパキと作業している。


「大体終わりましたので、こちらの料理を運んでおきますね」


「あ、うん、ありがとう。こっちももうすぐ終わるから」


なないろは、皿を両手に持ち、手なれた様子で運ぶミコトを横目で見送りつつ、

なんでもこなせるミコトにあらためて感心しながら、

ただ一緒に料理をしているだけなのに

なんだかとてもウキウキしている自分をちょっと不思議に思う。


なないろは包丁でフルーツを切りながら、ふと、


なんだか、新婚さんみたいだな~


と、なんとなく、ぼ~っと考えていた。


・・・・・・新婚さん!?


何気に思った自分の考えを改めて意識したなないろは

自らの突拍子もない発想に慌てて、包丁を持った手を滑らせてしまう。


「痛っ!」


滑った切っ先はなないろの指を裂き、真っ赤な血がじんわりとにじむ。


「大丈夫ですか!?」


「ひゃっ!?」


いつの間にか戻ってきていたミコトが

背後から肩に手を添え心配そうに覗き込んできたので

なないろは思わず変な声を出してしまう。


「だ、大丈夫、ちょっと切っちゃただけ、平気・・・」


「じっとしてて?」


ミコトはなないろの傷を羽毛で包み込むかのように優しく手で覆う。

そしてそのまま滑らすように傷を撫でると

なないろの手の傷は一筋の痕も残さずに綺麗に消え去った。


なないろの顔を見つめニッコリと微笑むミコト。

魔法使いの不思議な力を目の当たりにしたなないろは目を丸くさせながら礼を言った。


「すごい・・・あ、ありがとう・・・」


「どういたしまして」


ミコトと目があったなないろは、

そのまま魅入られてしまったかのように見つめ続ける。


「オホン!」


その沈黙を破り、

いつの間にか台所に入ってきていた薫が

大げさに咳払いをして二人の注意を引いた。


「なんか手伝うことがあるかと思って来たけど、お邪魔でしたかな?」


芝居がかった薫の声に我に返ったなないろは

自らの手を握るミコトの手の暖かさに気づき、慌てて手を引っ込める。


「ふぁ!?かかか薫ちゃん!?」


「ってか、あんたらったら、ベタすぎだっつーの~」


「ななななんのことだかさっぱりだよ。

 あ、あとはこれ、運ぶだけだから!」


なないろは慌ててテーブルの上のフルーツポンチの皿をつかみ、いそいそと台所を出て行った。

その姿をやれやれといった感じで見つめる薫は、

思いついたようにミコトに振り返ると、ビシッと指差して冗談交じりに言った。


「不純異性交遊ダ~メ、絶対!」



居間の中央にあるテーブルには、お菓子類やジュース等が並べられている。

キズナは、なないろが作った小料理を箸でつまむと口の中に放り込みじっくり味わうと

満足気な笑顔を浮かべため息を漏らす。


「ん~~~!おいし~~~い!!なな!美味しいよ!コレ!

 ほら、キズナも食べてみ?」


憩に進められキズナも同じように口の中に放り込む。


「・・・おお!?まじウマじゃない!?コレ!?」


「エヘヘ」


照れ笑いを浮かべるなないろ。


「料理はちょっと自信あるんだ。でも、はりきりすぎて、つくりすぎちゃったかな?」


なないろは照れながら、モジモジとミコトを振り返る。


「ミ、ミコトさんも、よかったら、どうぞ・・・」


「ありがとうございます。それでは、いただきます」


なないろがフルーツポンチの盛り合わせから取り皿へと取り分け

遠慮がちにすすめると

ミコトはそれを受け取り口の中へと運ぶ。


「おお!これはすごく美味しい!」


「エヘヘ、このシロップは我が家の特製なんだぁ~」


言いながらもどんどん食べ進めるミコト。

手にした皿はすぐに空になった。


「あの・・・おかわりいただけますか?」


「うんうん!どんどん食べて!」


ミコトのその一言は、なないろには何よりも嬉しかった。



「いや~、ホントに美味しいものばかりだよね~」


なないろの料理の腕前に感心した憩が続けて喋りだす。


「キズナも、ななに教わって料理に挑戦してみたら?」


「私は、料理ってガラじゃないしなぁ・・・」


「そう?でも、あんたの憧れのサクーラさんも料理得意だってよ?」


「うそ!?マジで!?」


「私も聞いた話で確かめた訳じゃないけど」


「サクーラは確かに料理得意ですよ」


とミコト。


「以前、ご馳走になったことがあります。

 とても美味しい料理でした」


「うっそ!?マジで!?」


「ええ、今頂いているななの料理と同じくらいに・・・」


すると突然、薫が声を上げる。


「って、ユニ!?いつの間にか全部ひとりで食ってるし!」


薫のツッコミにハッとするミコト。

気づけばミコトが持った皿どころか

フルーツポンチの盛り合わせまで綺麗に空になっている。


「は!?申し訳ありません!あまりに美味しかったので

 つい、我を忘れて食べ進めてしまいました!」


「ユニ~~~!」


ぷくっとむくれる薫に、

なないろは、あわててべつの皿を持ち差し出す。


「薫ちゃん!まだこっちに色色あるから!ね!」


それでも薫の機嫌は収まらなず、

ふくれっ面のまま、駄々っ子のように愚痴をこぼす。


「む~、ななの特製フルーツポンチ『が』!食べたかったのにぃ~・・・ユニのくいしんぼ!」


「す、すいません・・・」


薫の一言に、しゅんとするミコト。


そんなミコトと薫のやりとりを見てキズナと憩は不思議な感覚を覚える。


命ミコト、彼は万能の人『ユニベルサリス』と呼ばれ

魔法使いの世界でも知らぬものはないとの呼び声も高い存在だ。

そんな彼がこうして普通の女の子に弄られている・・・

なんだかすごく不思議な感じ・・・でも


「なんか、いいなぁ・・・」


キズナがふと洩らした一言に憩は微笑みを向ける。


今の今まで、

自分たちとは違う特別な存在、そう思っていたユニベルサリスが

ひとりの少年、命ミコトとしてこの場にいる。

そして知らず知らずのうちに張り詰めていた

自分達の気持ちをも解きほぐす、なないろと薫の人柄・・・

それは、実は当たり前のことなのだろうけど

そう感じられるこの場の雰囲気は確かにキズナが洩らしたように


なんかいい・・・


恋華憩はそう思うのだった。


そのあとも

キズナにモデルの仕事のことを聞いたり、憩いに魔法少女の恋愛事情などを聞きながら

会話は大いに弾み、楽しいひと時が流れていった。







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