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第二話 魔法使いの世界 その6

いろいろあって一回だけ休むつもりがインフルにかかったりで

こりゃあもうジタバタするよりまるっと休もうと思い

一ヶ月休ませていただきました。


今回より通常運転、週一の更新となりますのでよろしくお願いします。

 「本名は 昼田操(ひるたみさお)あらためてよろしくね♡」


保健室に現れた少女はそう名乗ると

その場で踊るように、くるりと可愛らしくターンする。

続いて、足元のクマルマルも一緒にくるりとターンした後

ペコリとお辞儀をした。


「え?ああ!クマルマルのマスターの?・・・なんか、前会った時と

 印象が違うけど・・・ふとった?」


「ちがうし!?太ってないし!むしろ縮んでるし!!」


日笠薫の失礼な一言に猛反論する操。

なないろは空気を変えようと二人の会話に割って入る。


「そう!そうだよ!私たちと同じぐらいだったのに

 今はかなり小さいよね!」


「縮んだっていうか『元に戻った』ね。

 私はエレメンタル・スタイルになると成長するの。

 いろんなところが。ばいーん、と」


薫は、ばいーん、という感じでもなかったけど、と言おうとしたが、ぐっとこらえる。


「へえ~、そんなのもいるんだ!?」


「エレメンタル・スタイル、その姿は個人で大きく異なるんです。

 例えばモンスター的なものに変身する者もいるし

 ロボットみたいな姿になる者もいますよ」


補足するユニベルサリスを横目に操は話を続ける。


「まあ、魔法使いのお勉強は後回しにして・・・九○○号から大体の話は聞いたわ」


「九○○号?」


なないろが不思議そうに聞き直すと

クマルマルがしきりに自分を指し示し猛アピールをする。


「九○○号、すなわちク・マル・マル!」


ユニベルサリスの解説にクマルマルがしきりに頷くが

そんなクマルマルの頭をちょんと小突き、愚痴をこぼす操。


「まったく・・・クマルマルが一人で校内をうろちょろ見学してるのを見た時は

 一瞬、こりゃあ破門もんだ!とか思ったわよ・・・」

 

操の言葉にクマルマルは「破門は嫌!」とばかりに首を振った。


操は構わず愚痴りながらも、手にした魔法猫のシロクロウそっくりのぬいぐるみを

なないろの膝の上にポンっと置く。


「クロシロウさんの、ぬいぐるみ?」


訝しがるなないろの視線を受けて

ぬいぐるみがスックと立ち上がる。


「どっこいしょ」


「え!?」


「意外!?クロシロウさんの正体はぬいぐるみだった!?」


「ええ!?マジデ!?私も知らなかった私の秘密!?・・・ってンな訳あるかーい!」


日笠薫のボケに、ぬいぐるみが激しくノリツッコミした後、

頭部をぽこんと外すと中から本物のクロシロウが姿を現す。


「は~い♡」


「クロシロウさん、なんでそんな格好しているの?」


「まぁ、いろいろあってね、それよりも・・・ごめんなさい!なな・・・」


クロシロウは項垂れ、なないろに謝罪の言葉を延べる。


「話は聞いたわ、プールで襲われたって・・・私が守ると大口叩いておきながら・・・」


「あ~、うんその話はもう済んだっていうか・・・」


「・・・クロシロウさん・・・」


日笠薫がバツが悪そうに言葉を濁す中、

なないろはいつになく真剣な表情になると

いきなりクロシロウの体に手をかけ、

着ているぬいぐるみを一気にズリ下げた。


「!?イニャ~ン!!」


着ていたぬいぐるみを脱がされたクロシロウが艶声をあげて体を隠す真似をするが

体を隠す、というよりも体に巻かれた包帯を隠したいのが本心のようだった。


「やっぱり・・・クロシロウさん、怪我してる」


「ハニャニャニャ、バレてた?」


「その怪我、私を守る為に?だからぬいぐるみで隠してたんでしょう?

 私に気を使わせないために・・・」


「・・・・・・」


「そうよ」


言葉に詰まっているクロシロウを差し置いて操がなないろの疑問に答えた。


「ちょ、ちょっと操!」


「バレちゃったんだし、遠まわしに言ってもしかたないでしょう?」


「そう、クロシロウさんのこの傷はなないろを狙った魔法使いとの戦闘で負ったもの」


「やっぱり・・・」


操の話をしっかりと受け止めるなないろ。

操はそれを見届けるとさらに話を続ける。


「どうやら、ある程度の覚悟は出来てたみたいね・・・話が早くて助かるわ。」


「なないろ、今日現在までの間に私達は3度、あなたをを狙う魔法使いとの戦闘に及んでいる」


「二人目、三人目は大したことなかったんだけど、一人めのがヤバイ奴でね、

 『ヘル・レコード』の『ファントム・ファルコン』って奴なんだけど

 クロシロウさんに怪我を終わせたのはそいつよ」


操は大げさな素振りでさらに続ける。


「どいつもこいつも、ユニベルサリスが来る前に事をすまそうとしたんでしょーが、

 悪いけどここにはこの『グラン・ギニョール」がいっるつーの!

 加勢に入ったらとっとと逃げ帰りやがりましたよ!」


言葉では強がっているが、操のスカートからちらりと覗く太腿に

包帯がまいてあることになないろは気づいている。


自分を守るために多くの者達が傷ついている・・・

そんな状況がなないろの心をも深く傷つける。


「あなたも私を助けるために戦ってくれたんだね・・・ありがとう、操ちゃん」


なないろの言葉に操は一瞬、キョトンとしたがその表情は見る見ると真っ赤に染まっていった。


「え、あ~、う、うん・・・(なんか調子狂うわね・・・)」


「え~っと・・・そ、そう!伝えることがあるんだった!」


軽く咳払いをしながら操がさらに続ける。


「事態は予想以上に進行してるの。我々の想定以上にね」


操は一呼吸おいた後、なないろと薫を交互に見つめ言い放つ。


「そこで!虹乃なないろ!日笠薫!

 放課後、あなた達には、ある場所まで行ってもらいます!

 私はそのことを伝えに来たの」



 カーテンに遮られたひとつ離れたベッドでは蜘蛛使い八雲ナルミが

蜘蛛のイヤリングで聞き耳を立てている。


「・・・グラン・ギニョール・・・ガキのくせに食えない奴だ・・・」


 先程グラン・ギニョールがカーテンを開けたのは間違ったからではない・・・

 奴め、あの一瞬でこちらに探りを入れてきやがった!

 こんなこともあろうかと

 盗聴蜘蛛はイヤリングに擬態させていたから問題ないとは思うが・・・


「気づかれたか・・・いや」


 まだ確信したわけではあるまい・・・

 だからこそ今の会話でこちらの出方を探るつもりだな!


 こうなったらますます余計に迂闊な動きは見せられない・・・

 焦らず冷静に対処しなくては!


ナルミが思案する中、倉持良子がおずおずと申し訳なさそうに話しかける。


「あの・・・ナルミさん?私、そろそろ戻らないと・・・」


「ああん!?」


「ひっ!あ、あの、ご、ごめんなさい!もうチャイムが鳴ったし、

 先生、戻ってお仕事しなくちゃだし、あの、その・・・」


イラついた気持ちを思わず倉持良子にぶつけてしまったナルミは

慌ててフォローする。


「あ、ごめんね、良子ちゃん、すこし考え事していたものだから・・・

 そうですね、もう戻らないとイケナイですよね」


 そうだ『生徒』を調べるのに『教師』程適切なものはいない・・・

 今はこの教師を利用し、虹乃なないろとその周囲の者をゆっくり調べるとしよう・・・

 焦ることはない、すでにユニベルサリスが来ているのなら、

 他の魔法使いも、そう易易と虹乃なないろに手出しは出来ないという事だからな!

 逆にそれを利用して事を有利に進めてやる!


そう結論づけると、ナルミは一息大きく深呼吸し、

周囲の片付けを始め、汚れ物等をタオルにくるむと紙袋に詰め始める。



 コンコン!


保健室のドアが再びノックされると、ガラリと開かれ

体操服に身を包んだ少女、光明院蘭が入ってきた。


「失礼いたします」


その姿を確認したクロシロウは瞬時にヌイグルミを着なおすと

操の腕の中へピョンと飛び込み、

クマルマルも慌ててベッドの下へと潜り込んだ。


クマルマルとクロシロウの慌てぶりを見た操が

薫にそっと耳打ちをする。


「今入ってきた娘が例の?」


操の問いに薫はコクンと頷く。


光明院蘭はその手に紙バッグを持ち

なないろの横たわるベッドへとやって来ると

ユニベルサリスに声をかける。


「虹乃さんを助けてくれたお方ですわね。わたくし光明院蘭と申します。」


「ぼくは(いのち)ミコトです。よろしく」


 ユニベルサリス=ミコトは微笑みで返す。

 蘭は次に操に目を向けると声をかける。


「あら?下級生の方もいらっしゃいますわね?」


「昼田操で~す。よろしくお願いしま~す」


「よろしく」


蘭は挨拶を澄ますと、なないろの顔を覗き込み問いかけた。


「虹乃さん、具合はどう?もう大丈夫?」


「うん、みんなのおかげで、もうなんともないよ。

 光明院さんも、色々とごめんね、迷惑かけちゃって・・・」


「何言ってるんですの、虹乃さんが無事ならそれでいいですわ」


蘭はそういいながら手にした紙バッグを薫に渡す。


「はい!これ。東条さんが持っていくって言ってたのですけれど

 彼女、取り乱し気味だったのでわたくしが代わりに持ってきましたわ」


「メイが?なにこれ?」


「貴女方の着替えですわ。それとも貴女、その格好のまま校内を練り歩くおつもり?」


蘭の指摘に、薫は自らの格好を再認識する。

水着の上にユニから借りた制服を羽織ったラフすぎる格好・・・

ユニの魔法で既に乾いてはいるが男子が目にしたらちょっとドキリとしてしまうだろう姿。


「あ!いや、わたしはなんともないのに

 保健室の備品を使うわけにはいかないじゃない?そんなんでほら・・・」


「いや、それよりもアンタこそなんで体操服で校内を練り歩いてるのよ?」


「それが・・・何故か制服が紛失してしまったのです・・・」


「え!?盗まれちゃったの!?」


「・・・それは考えたくありませんわね・・・

 何かの手違いで誰かが持って行ってしまった、とかではないかしら?」

 

「その・・・下着も?」


「え?ええ、下着も」


「ってことはアンタ今、ノーブラ・ノーパン!?」


「ちょ!?止めてくださる?殿方の前で・・・!」


ガタン!


「あ()っ!!」


突然、二人の会話を遮るかのように大きな音が鳴り響く。


カーテンの後ろでは会話を盗み聞いていた八雲ナルミが

椅子に足をぶつけ悶絶していた。

それを見ていた倉持良子が咄嗟に跪きナルミの足を確認する。


「大丈夫!?ナルミさん!」


「アタタタ・・・」


カーテンの向こう側からは日笠薫も声をかけてきた。


「八雲さん、倉持先生、なんかすごい音がしたけど大丈夫?」


「いや、大丈夫、大丈夫、椅子に足をぶつけただけ。大した事ないから」


「ホントに?何かあったら遠慮なく声をかけてね?」


「いや!ホントに大丈夫だから・・・何度も気を使わせちゃってごめんね」


狼狽え、答えながらも八雲ナルミの興味は今、違う事に惹かれていた。


 制服を盗まれた?(下着も)という事は・・・

 今、保健室に入ってきたあの女が噂の

 『THEパンティー』!!


何が噂なのかはよくわからないが、

とにかくナルミの中では噂になってる、ということなのだろう。


 み・・・見たい!どんな女が、あんなくっそエロい下着を学校に履いてくるのか?

 顔を見たい!すごく見たい!!

 蜘蛛の目を使えば簡単だが、今、魔法蜘蛛を放つのまずい・・・

 いやまて、今の私は一生徒に過ぎないのだから

 カーテンを開けて覗き込んでも不自然ではあるまい・・・

 いやいや、ユニベルサリスもいるし

 グラン・ギニョールもまた探りを入れてくるかもしれない・・・  

 今は、すこしでも気づかれそうな行動は慎むべきだ・・・


先ほどの一件もあり、度が過ぎる頬慎重になっているナルミは

ただ、『THEパンティー』の顔を確認するというだけのことにも

必要以上に考え込んでしまう。


なにやら思案しているナルミの行動に戸惑いながらも

良子は申し訳なさそうに切り出した。


「で、では、ナルミさん、そろそろ・・・」


「あ、うん!」


 そうか!

 教師に付き添って出て行けばいいだけの話だ!

 その時にチラリと挨拶でもしていけば自然に『THEパンティー』の顔を確認できる!


ムクムクと首を擡げてきた好奇心の為、

『虹乃なないろを探る』

という当初の目的をすっかり忘れてしまったナルミは

勢いよくカーテンを開けると

倉持良子に言葉をかける。


「さあ、倉持先生、教員室まで付き添いますよ」


言いながらナルミはなるべく自然な感じを装い、なないろ達の方へと目を向ける。

案の定グラン・ギニョールこと操は警戒し、こちら注意深く見ている。


「もういいの?」


「ああ、うん・・・」


日笠薫の問いかけにも、心ここにあらず、といった面持ちのナルミ。


さらに、虹乃なないろもユニベルサリスもこちらに目を向けるが・・・

肝心の『THEパンティー』はこちらに背を向けたまま、バッグから制服を取り出し

日笠薫に渡しはじめる。


 くっ!・・・『THEパンティー』!こっちを向け!こっちを向け~!!


もはや当初の目的も忘れ『THEパンティー』の確認に固執するナルミ。

『THEパンティー』=光明院蘭以外の全員が自分を注目していることも忘れ

蘭の後ろ姿を只、凝視するばかり。


その時、背後からの熱い視線に気付いた蘭がゆっくりと振り返った・・・


ついに、その顔を見た時、八雲成海は確信した。


 あっ!こいつなら履く。履いてくる。そんな顔をしている!


自分を凝視するナルミに気づいた蘭は

訝しげに問いかける。


「?わたくしに何か?」


「あ、いや、なんかとっても素敵な人がいるな~と思って・・・」


蘭はナルミの答えに、恥ずかしげに身をくねらせながら照れた。


「あら!素敵だなんて、そんな・・・うふふふふ」


そんな仕草にも中学生とは思えない色気を放つ蘭。


 コイツは・・・


ナルミは欄に対しなにやら考えを巡らしながらも、良子に声をかける。


「それじゃあ、行こ♡倉持先生!」


言うが早いか、くるりと踵を返すと素早くドアを開け

良子の腕をつかみ保健室から出ていくナルミ。


「では、私たちはお先に失礼しま~す」


「う、うん、お大事に・・・」


慌ただしく出て行くナルミ達に戸惑いながらも声をかける薫。


保健室のドアを後ろ手に締めながら  

ナルミは蘭に感じたモノに考えを巡らす。


 『THEパンティー』・・・あれは天性の『魅力』を持つタイプ・・・

 鍛えれば、いい『魅惑』の魔法使いになれる才能を秘めていると見た。

 なにか、利用価値があるかもしれないし・・・あれも一応マークしとくか。


「よし!」


ナルミは自らに喝を入れるように声を上げたあと

良子に振り返り満面の笑顔で言った。


「さあ!行こう!良子ちゃん♡」



 ナルミ達が退室した後、

操はすぐにナルミ達がいたベッドに駆け寄ると

クマルマルと共に、くまなく痕跡を調べ始める。

ベッドの下、マットレスの間、シーツのシワまでも・・・


甲斐甲斐しく動き回る操を覗き込み薫が声をかける。


「何してん?」


「ん~、ちょっと気になる事があってね・・・」


操は答えながら美品のチェック表を取り、記入された名前を確認する。


「倉持良子・・・八雲ナルミ・・・」


 教師の方は少しおどおどした感じだったが敵魔法使いである可能性は低いだろう。

 問題は女生徒『八雲ナルミ』

 私がカーテンを開けたあの時、一瞬、足元のクマルマルに目を向けたような気がしたんだが・・・

 しかし、立ち去り際には虹乃なないろではなく光明院蘭に固執しているように見えた。


「ふむ・・・やはり魔法使いではないのか?・・・」


ナルミの好奇心が、図らずしも操を混乱させることになっていようとは

当のナルミは知る由もないのであった。




















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