小泉店長はゴッドハンド!?
デコボココンビが今日もレンタル屋で繰り広げる軽いお話。
(ウィーーン)
「いらっしゃいませ、こんばんはー」
自動扉からお客が入ってくると同時に挨拶をする恋。
その店独自の挨拶と言うのがあると思うが、
ここレンタル店【シアター・イン・ザ・スカイ】では
『いらっしゃいませ、こんばんは』と、いらっしゃいませの後に、
時間帯によって『こんにちは』と『こんばんは』を使い分けている。
人によっては、声を張り上げたり、語尾だけを上げていくなど、
人それぞれの個性がある。
また、職業によっても違う。
(ウィーーン)
「いらっしゃいませ、こんばんはー」
お客が続けて入ってくる場合などはどうするのだろうか。
それも人によって変わってくるのだろう。
(ウィーーン)
「しゃいませ、こんばんはー」
入ってくる全てのお客様、平等に挨拶する恋。
(ウィーーン)
「しゃいませー」
子供でも、お婆さんでも、お爺さんでも、お犬様でも、分け隔てなく挨拶する恋。
(ウィーーン)
「しゃせー」
「おい、恋。ちょっと良いか?」
恋の後ろで、声を震わせながら立ち尽くす小泉店長。
「別に悪い事してないもん」
あえて、振り返らずに返答する恋。
「いやいや、恋。お前、その返事は俺が何を言いたいか、わかってるよな?」
「別に・・・」
恋の両方のこめかみに、小泉店長のゲンコツが突きつけられる。
(ゴリゴリゴリメリメリギリギリゴリゴメリ・・・)
「ぎゃがやはや@かk塩splsplぱきjhdが。dさ;、。c」
恋はその場にこめかみを押さえながら、苦悶の表情を浮かべる。
「横着するな。ちゃんと挨拶する事、良いな?」
「わかってるもん」
「なら、実行してください」
「だったら、見本が見たい」
今にも食いつかん表情で立ち上がる恋。
「あ、ああ、わかった。見本を見せてやる」
半ば強引に引き受ける小泉店長。
「いらしゃいませ、こんばんは」
笑顔で会釈するようにお客を出迎える小泉店長。
「ダメだな」
首を左右に振る恋。
「何がダメなんだ?」
「もっと、元気よく!!」
「わ、わかった。いらっしゃいませ、こんばんは」
先ほどよりも大きな声を出す小泉店長。
「ダメだな」
「次は何がダメなんだ、恋」
「気合が足りない、それでは店に来てくれたお客様に対して申し訳が立たないだろ」
そんな事もわからないのかとため息をつく恋。
「いや、だから、な。気合とか抽象的な事を言われてもわからないから、はっきり言ってくれ」
「これだからコイテンはダメだ。まずは心が捻じ曲がっている」
「俺、心が捻じ曲がっているのか」
今まで言われた事がないのか、固まる小泉店長。
「暴力的だし、すぐに怒るし、おれのやる事、言う事に、すぐに反対だし」
恋は腕を組みながら右手の人さじ指で、チッチッとしながら力説する。
「・・・・」
「身長でかいし、鼻が高いし、いつも笑顔だし、」
「おい、恋」
「何処がダメだったか理解したのか、っちょ、ちょ!!」
恋の両方のこめかみに本日2回目になる小泉店長のゲンコツが突きつけられる。
(ゴリゴリゴリメリメリギリギリゴリゴメリ・・・)
「ぎゃがやはや@かk塩splsplぱきjhdが。dさ;、。c」
声にならない声が店内BGMに合わして響き渡った。
「誰のせいでこうしなきゃならないのか、良く考えてな、恋」
そのセリフを最後に、恋はその場に崩れ去った。
気が向いたら更新します。