六話
「入れ」
「失礼します」
重厚な扉を開けると高価な椅子にマッチョな男が座っているという酷くミスマッチな光景が目に飛び込んできた。
そのマッチョな男ーー学園長がこちらを一睨みして口を開いた。
「なぜ呼び出されたのか分かるか?」
「私が落ちこぼれと言われるほど悪い成績を残し、それが3年も続いてしまったからです」
「……まだそれだけならこれからの努力で改善出来る。それだけの時間があったのだが……悪いがその時間は無くなった」
「ど、どういう事ですか!?」
「先日君の父親のアンドリュー隊長から連絡があった。その時アンドリュー隊長はこう言っていた。真理石に映し出されたステータスを見て失望した。お前には学園に通う必要が無い。除籍した後、私自らの手でエリオン王国騎士団隊長である私の息子として相応しい者にする為に死の道で鍛え直してやる」
ーーー死の道。グレイス(故)の持つ記憶にあるトラウマの一つだな。昔グレイス(故)が7歳の頃に行った訓練らしい。その内容は思い出すことができない。
無理に思い出そうとすると、体が拒否反応を起こし、全身がプルプルと震え、額から大量の脂汗、吐き気に目眩。様々な症状が俺を襲う。
俺は直接体験していないのに本能で恐ろしいものであると確信してしまうほどだ。
「ーーーーーーー」
ははははは。もう人生終わりだ。神様ごめんなさい。折角与えてくださった第二の人生、どうやら一週間もしないうちに終わることになりそうです。
「グレイス!」
……はっ!
現実に戻ってくると学園長が俺を心配そうに覗き込んでいた。
「本当に大丈夫か?……その調子では聞いてなさそうだからもう一度話すぞ。流石にアンドリュー隊長の言うことを鵜呑みにする訳にはいかなかった。そこで、アンドリュー隊長と相談した結果お前に試練を与える事になった」
試練という学園長の言葉を聞いた俺は覚悟を決める。
「グレイス、お前は明日からの三日間ドラグーンの森で狩りをしてこい。そして三日目の日没までに森狼を三十体討伐して来るんだ。達成出来れば除籍の話は無かった事になる」
森狼?……って嘘だろ!?
神ペディアによると森狼は単体でDクラス。集団ではCクラスと言われている魔物で、三十体もの森狼の群れを被害を出さず安全に狩ろうとするのならばCランクの冒険のパーティーが数組必要になるそうだ。
そんな魔物を俺一人で狩れと?
「あの……それ本当に一人で?」
「そうだ」
「武器などは?」
「支給する訳ないだろ。自分で調達してこい」
「ええっ!?」
「話は以上だ。今すぐに調達しに行かなければどんどん時間が無くなるぞ?」
「し、失礼しました!」
無茶としか言えない試練。だが、それをクリアしなければ死の道によって死んでしまう可能性が高い。
父さんと学園長の鬼!!
学園長が必死に説得してワイバーンの討伐から森狼の討伐へと変えてくださった事を知らない俺はそう心の中で文句を言いながら俺は武具のの調達の為に急いで武器屋に向かった。
五話の小学部を初等部に変更しました。
エリオン大学をエリオン学園に変更しました。
転生した天才ニートは異世界で最強でしたは今週中に更新します。
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