四話
昔々神様は魔物と人間が共存する世界を創り出しました。
人間に知恵と魔法、魔物には圧倒的な身体能力と固有能力を与えました。それぞれが足りないものを補う事で平和な世界を築く事が出来たのです。
平和な世界。それは永遠に続くと信じられていました。しかし、ある日誕生したイレギュラーによって平和は壊されてしまいました。
神様が人間にのみ与えた知恵と魔法。本来ならば魔物には未来永劫その力を手に入れる事は出来ないはずでした。しかし、ある日誕生したイレギュラーは知恵と魔法を身に宿して生まれただけではなく、あらゆる魔物を超越する身体能力と固有能力をも所持していました。
そんなイレギュラーは共存する世界が気に食わず、そんな世界をぶち壊して自らが望む世界にする為に世界征服を始めました。
神様はイレギュラーの事を邪な者であり、神の域にまで足を踏み入れようとしていた事から邪神と名付け、世界征服を阻止すべく動こうとしました。
ですが神様は直接邪神を消滅させる事が出来ませんでした。神様は邪神を消滅する事は可能でしたが、それをしてしまうと長い時間神様は力を使えなくなってしまうのが原因でした。
神様は悩み、出した結論が自らの力を人間に与える事でした。そうして生まれたのが勇者、世界最強の邪神に立ち向かうべく神様の力を授かった希望です。
勇者は神様から与えられた力を使いなんとか邪神を封印する事が出来ました。自らの命と引き換えに。
数千年経った今でもその時の影響により人間と魔物の争いは続いています。ですが、それは既に均衡が保たれ日常化しているので大した問題ではありません。
問題なのは邪神の封印が弱まっている事です。神様はその事に対して先手を打とうと自らの力を与えるに相応しい人物を探しましたが、見つかりませんでした。
その為にとった最終手段が死んでしまった他の世界の魂をこちらの世界の肉体に移す事でした。
そうして神様は勇者となりうるに相応しい魂を連れて来ました。
「この話を嘘だと捉えるかどうかは君次第だ。嘘だと思うのならそれでいい」
神様は自らの感情を話に込めずに客観的に語った。それを嘘、作り話だと断言するには内容が真実味を帯び過ぎている。
「だが、これが嘘で無いとしたらどうする?」
俺には関係無い。転生する気なんてない。
「君は大切な人を失う悲しみをもう二度と味わいたくないと言ったな。だから転生したくないのだとも。だが、先程の話を聞いて分かるように君が転生しない事で邪神に対する対抗手段は無くなってしまい、多くの人々がその痛みや悲しみを味わう事になる」
っ!それは!!
「そういう事なんだよ。今の君は自らの感情を優先して人々を見捨てようとしているんだ。まだ幼い君にこんな重大な責任を負わせてしまうのは申し訳無いと思う。だが、君しかいないんだ!頼む。力を貸してくれ」
で、でもさっき何もしなくてもいいと言ったじゃないか!それは嘘だったのか?
「嘘じゃない。ただ、俺から力を与えられた君は自らの人生を歩んでいく上で必然的に関わっていくことになる。それは巡り巡って最終的には邪神と対峙する事になる」
それを聞いて転生したいと思いますか?
「普通は思わないだろうな。だが、大切な人を失う痛みや悲しみを知っている君なら必ず引き受けると思っている。安心していい。転生した後は先程の話の事などは記憶に残らないようにしておく」
………どっちにしろ拒否権はありませんよね。
「すまないが諦めて転生してくれ。それが世界の為であり、君の為でもある」
……はぁ、わかりました。そこまで言うのなら転生します。でも、僕は見知らぬ不特定多数の人々と大切な人を天秤にかけるような状況になったら迷わず大切な人を選ぶと思います。それでもいいんですか?
「確固たる意志がある者は強い。君の意志がそうであると言うのならば最期までそれを貫き徹せ」
わかりました。それと、転生するのには条件があります。与えられる力は可能な限り決めさせて貰いたい。それだけです。
「元よりそのつもりだ」
頑丈であり、努力が報われる肉体。それと生きていくために必要な知識が欲しいです。
「そのぐらいならお安い御用だ。だが初めにも言った通り君は少年の肉体に宿る事になる。だから肉体の方は数日間待ってもらうことになるがいいな」
わかりました。
「世界を救ってくれ」
善処します。
僕は神様が創った世界に転生した。
転生した天才ニートは異世界で最強でしたの方もよろしくお願いします。