始まりの花
題名は意味ありません。
今回はだいぶ短いです
目が覚めた。
目の前には見覚えのない風景が広がっている。茶色い本棚。木造の茶色い壁。そこには花やら風景画やらが飾られている。何でここにいるんだろう。私は頭を押さえ考えた。答えはすぐに出てきた。昨日は夜遅かったためここに止めていただいたのだ。
私はベッドから下りて昨日食事した場所へ向かう。
そういえば今日、変な夢を見た。一人の男の子が私に必死に何かを伝えようとしている夢だった。しかし、私には声は届かずに。そこで目を覚ました。あの男の子は何が言いたかったのだろうか。疑問に思いながら歩く一階の廊下。昨日の地震の陰はもうほとんどなく見える本棚はどれも綺麗に片付けられている。
私は昨日きたリビングのドアをあけ中に入った。
「おはようございます」
そこにはエプロン姿の男性がいた。私はこの男の名前が何であったかを必死に探す。しかし、名前は出てこなかった。
「ごはんできましたよ」
テーブルの椅子に腰を下ろすと男が二人分の食事を運んできた。それをテーブルに並べる。
男は手を合わせる
「いただきます」
私も男に続いて言い朝食を口にした。それはとても美味しいものだった。
二人はしばらく無言で食べ続けた。
先に沈黙を破ったのは彼だ。
「あの。今日帰ってください」
男は静かな声でそう言った。
「嫌です」
男としばらく見つめあった。
「はぁ~。仕方ありませんね。正直今貴女をここから一人で帰しても危ないし」
男は空の食器を持って立ち上がる。
「2日、後2日だけいることを許します。ただし、ここからは出ないこと。あまり多くの部屋は覗かないことです」
水の流れる音と、カチャカチャという音が聞こえてくる。
「あ、ありがとうございます」
笑顔でいう。
「しかし、昨日あんな恐怖があったのによくここにいたいと思いますよね」
男は失笑し私は苦笑した。
「あ、そうだ。貴方の名前は何ていうのですか?」
私も空いたお皿を持ち立ち上がりながら言う。
「僕は霧島です」
男は笑顔でそういった。
「きりしま……さん」
私は繰り返し言っていた。
「はい。霧島です。で、貴女は?」
慌てて口を動かす。
「あ、えっと由紀子です。葵由紀子です」
男は優しく笑った。
これが、長い長い縋之山村での不思議な物語の始まりだとこの時は誰も知らなかった。
読んでくださりありがとうございました。
今回ホラー要素はありませんでした。