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花園~ムスカリ~  作者: 菅野いつき
縋之山村
2/3

恐怖と癒し

初ホラー下手だけど読んでください。難しいですね

「ーさま。お客様?終点です」

 何処からか聞こえる声で目を開けた私はしばらく何が起きたのかわからず、ぼーっと起こした人(バスの運転手だと思われる)の顔を見つめていた。

 運転手はそんな私に何かを思うこともなく、笑顔で「終点の縋之山(すがのやま)神社(じんじゃ)前です」と言った。その言葉で私の目は完全に覚める。そうだ、私は縋之山村に用事があったんだ。

「あ、すみません。起こして(いただき)ありがとうございます」

 私は言葉と同時に立ち上がる。運転手は「いえいえ」と、笑いながら運転席へ戻っていく。その後を追うようにしてバスの出口へ向かった。

 運賃箱(うんちんばこ)にお金を入れて私はふと思い出す。あの写真の場所は何処だろうか。運転手が笑顔で此方(こちら)を見ていた。私はバッグから封筒を取り出し、その中から二枚の写真のうちの一枚を引っ張り出す。

「あの。この場所が何処だかわかりますか?」

 運転手に写真を差し出した。それは、大家族の集合写真と思われる物だ。

「あぁ、そこね。引き返すとき通るから乗っていきなよ」

 運転手の思いがけない言葉に私はただ「え?」と言った。

「あ、お金は取らないよ。そこの前、バス停がある訳じゃないからさぁ」

 私は理解できずに硬直する。すると、それを見た運転手は「それに」と付け足した。

「それに、この村って結構迷いやすいんだ。他から来た人とか迷って、通り係のバスや車が助けるって感じだし」

 そう言い微笑んだ運転手に、私は甘える事にした。

 再び座席に座りバスに揺られる。気が遠くなる寸前まで聞こえていた声は、今は全くといっていいほど聞こえない。一体あの声は何だったのだろうか。不思議に思うがあまり深く追求してはいけないような気がする。

 私は窓の外に広がる景色を眺めた。喉かな所だと思った。田んぼや住宅が点々と並んでいて、その間を鳥たちが忙しく飛び回っている。バスから降りたら風の()も鳥の鳴き声も良く聞こえそうだ。

 そうこう考えているうちに目的地に着いたようで、運転手さんが「着いたよ」と、私を呼んだ。私は急いで運転手の横まで行き、お礼を言う。

「そこね。今は、若い男性が住んでるよ。」

 バスの窓越しに建物をみた。

「ただ、その人。なんか怖いんだよね。この家、一応昔はこの村の(おさ)の家だったんだけどさ。長が死んでからは後継ぎはいなかったから、当時一緒に住んでた同居人が貰ったんだよ。村の図書館だし避難場所にもなってる」

 長々と運転手は説明してくれた。

「そうですか」

 怖いとはどんな感じなのか。

 私はバスから降りて家の前に立った。運転手は「じゃあ、また」と言ってバスを走らせ、そのバスは十秒もたたぬうちに走り去ってた。辺りは日が落ちてきて少し薄暗くなっていた。建物に住んでいる男性に事情を話さないといけないかも知れない。

 家を見る。とても大きな建物だ。茶色い壁が目立つ。窓も結構多い。多分三階だてだろう。玄関も大きな木でできたと思われる扉が付いている。

 私はその扉をゆっくり開ける。ギィィィという音と共にゆっくり開かれる。中は電気がついていて明るい。私は顔だけを覗かせて辺りを見渡した。中は二回に繋がる階段が真ん中にあり、その両脇に扉がある。本棚もあり、テーブルやソファーも置かれていて落ち着ける空間となっている。

「あの~…すみません」

 私は恐る恐る声をだした。しかし、返事はない。

 ゆっくりと足を踏み入れる。誰かがいる気配はしない。ゆっくり足を動かして部屋の中心まで来る。右横が本棚の状態になった。そうなると元々読書好きの私の脳が、黙っている筈もなかった。自然と目は本棚の方へ向いた。そして、本棚の本の題名を端から目で読み始める。本能的に面白そうな本を探してしまう。

 結果私の脳が面白そうと判断したのが『花は永遠に』という本だ。その題名の本を手に取る。作者名はない。誰が書いたのだろうと思いながら本をひらく。最初っから真面目に読んでいく主義ではない。途中を開いて読んで面白そうなら最初から読む主義だ。

 ということで、私は半分より前のページを開いて黙読してみた。

 『私はそっと手でピンクのヒルガオを包み込む。全ての悲しみも寂しさも、そうする事で癒される気がしたから』

 私はさらにページをめくった。

『僕は、ここに残るのだろう。残って全てを解決させなくてはいけないのだろう。それが君が本当の意味で幸せになれる方法なのだから。僕はヒルガオを彼女に差し出す。きっと、解決するから』

 何が起きたのか全くわからない。ま、始めから読まないからわからないのだろうけど。

 私は本来の目的を思い出し、私は本を閉じて棚に戻し、周囲の扉を調べた。しかし、どこも開かない。仕方がないから二階に行くことにする。ゆっくりと大きな階段を上がる。途中から階段が折り返していて左右どちらからでも登れるようになっている。私はなんとなく左を選び上へ上がる。二階に着くと周りを見渡した。一階が見える作りになっているため落ちないように階段を囲うようにして木製の策がある。目の前にはカーペットがしかれた空間が少しある。カーペットの上には色とりどりの柔らかそうな椅子とクッションそれから、児童書とかかれた背の低い本棚がその空間を囲うようにある。ここは小さな子供のための空間のようだ。

 左を見た。廊下が続いている。一階との吹き抜けにそって曲がる所もある。何個か扉が付いている。そう部屋数は多くは無さそうだ。

 次に右を見た。右はさっき私が選ばなかった方の階段があり、此方も左と同様の作りになっている。

 私はため息を吐き、左側へと足を進める。と、急に本棚がカタカタと言い出した。次に家の何処からかギーギーなりだす。ガタガタと言う音が遠くで聞こえるなと思った瞬間足元が大きく揺れた。天井に付いた電気が音をたてて大きく揺れる。本棚から数個本が落ちてしばらくすると本棚も倒れた。どうやら地震のようだ結構大きい。近くの策に捕まる。揺れに耐えきれずついにしゃがんでしまう。しばらくして揺れが収まっても動けなかった。

 数分後。やっと立ち上がる事ができた私は外に出ることはせず二階の探索を始めた。理由は外に出てはいけないような気がしたからと、ここの住人がなんとなく心配だったからである。

 何処の部屋もほとんどは鍵が掛けられていた。閉館の時間が近いから閉めて廻っていたのかもしれない。

 次に右側の探索も始める。すると今度はすぐに鍵が掛かっていない部屋を見つける事に成功した。階段に一番近い所にある部屋である。

 私はその部屋のドアをゆっくり開ける。中は荒れていた。本棚は倒れていないものの沢山の本が本棚から飛び出している。

「うぅ…」

 呻き声が聞こえ、部屋の中に足を踏み込んだ。呻き声は扉から真っ直ぐの所から聞こえた筈だ。目をその辺に向ける。すると本に混じって人の手らしきものが見えた。その手を追っていくと、胴体がうっすらと見えて鼻がみえる。

 私は慌ててかけより本を掻き分ける。掻き分けていくと、胴体が見えてきてその人の顔も見えた。整った顔立ちをした男性だった。多分ここの住人だろう。

「大丈夫ですか?しっかりしてください」

 私は必死に呼び掛ける。

「うぅ~ん…」

 男性は、そう言いながらゆっくりと目を開けた。視点が合わないのか、ぼーと天井を見つめている。私は男性の顔を覗き込んだ。すると男性と目があい、男性がはっとした表情になる。そして、慌てた様子で上半身を持ち上げた。

「これは失礼しました」

「い、いえ」

 男性は私の驚いた表情を見ると優しい笑みを浮かべる。

「此方、村の図書館にどういった御用で?」

「ちょっと、調べものを」

「そうですか。ではごゆっくり」

 彼はそういうと苦笑した。

「とは言っても、こんな様子じゃ調べものにならないな」

 そう独り言の用に呟いた。

「眼鏡どこだろ」

 男はそう言いながら散らばった本の中を探す。その時、私の足元で何かが光った。 

「あの。眼鏡ってこれですか?」

 私は光るものを持ち上げる。彼はそれを無言で受け取って眼鏡だとわかると笑顔で「ありがとう」と言って眼鏡をかけた。

 眼鏡をかけた男は顔を上げ私と目が会うと硬直した用な気がしたが、どうやら気のせいだったようだ。男はすぐに笑顔を作ると本を棚にしまい始めた。

「すみませんね。まさか地震が来るとはね。ところで調べものとは?」

 彼は早口に言いながら手際良く本を棚へ戻していく。

「はい。ちょっと家族の事について」

「家族?」

 男は手を止めた。

「あ、まぁ。たいした事じゃないんですけど。私。今祖母が他界してしまって家族も遺族もいないんです。それである写真をみつけて…」

 私はバッグから封筒を取り出し男に見せた。男はその写真を受けとると無言で私を見つめる。

「この写真ってここですよね?」

「ここには貴女の求めるものはありません」

 私の期待に満ちた声と男の残酷なまでに低い声が重なる。

「え…」 

「帰ってくださいますか?調べものもないのにここに居られると困ります」

 彼はそう言い最後の本を本棚にしまった。そして、私を睨み付ける。さっきまでのにこやかな人だとは思えなかった。

 男は立ち上がり廊下へ出る。私もついていく感じで廊下を出た。窓の外には真っ暗な空が広がっている。

 男は部屋から出たすぐそこで立ち止まる。

「まずいな」

 そう呟いたように聴こえた。

 私は男の横をすり抜けて廊下へ出る。所々電気がついておらず不気味な風が流れている。私はなんとなく怖くなり後ずさる。背中に何かがぶつかった。私は恐る恐る振り返る。そこには白い骸骨が立っていた。

「ひっ」

 短い悲鳴を上げ、私は走り出した。

「どうしたんですか!」

 男のびっくりしたような声が聴こええてくる。後ろから足音が聴こえてくる。私は目を瞑った。その瞬間またしても何かにぶつかる。グチョと嫌な音がなった。私は少し間をとり目をあげる。そこにはこの世のものとは思えない人間が立っていた。片方の目から血が流れ出ていて、お腹の辺りは全てが真っ赤だ。内臓が見えている。

「嫌ぁぁぁ……」 

 私は腰を抜かしてその場に座り混んでしまう。私の前に立つ化け物はニヤリと笑う。後ろから近づいてくる足音がだんだん大きくなる。化け物は私に手を伸ばした。その瞬間廊下の電気がつき何者かが私の肩に手を置いた。私は骸骨かと思い短い悲鳴を上げながら後ろを振り返る。そこにいたのは骸骨ではなく眼鏡をかけた男だった。男は息を乱しながら何かを言おうと口を開く。

「やだ……怖い」

 私は彼が言葉を発するよりも先に言葉を発した。そして、安心したせいか一気に力が抜け、男の方に寄りかかってしまう。

「大丈夫ですか?」

 彼のとても優しい声に私は安心した。

「大丈夫……です…」

 安心したら涙が出てきたらしく声が涙声だった。

「何があったかはわかりませんが。もう大丈夫です」

「本当に、大丈夫ですか?化け物とかいませんよね?」 

「化け物……」

 彼は考えるように言う。

「わかりました。少し目を瞑ってもらえますか?」

 私は首をかしげたが、数秒後言われた通り目を閉じた。

「そのまま、立ち上がってください。いいですか?絶対目は開けてはいけません。僕を信じてください」

 彼は私の腕を掴み腰を推しながら歩き出した。しばらくして扉が開くような音が聴こえた。

「ここに。この椅子に座ってください」

 私は言われた通り座る。

「はい。もう目を開けても大丈夫です」

 私はゆっくり目を開けた。そこはリビングだった。とても広いリビング。そのリビングのテーブルの椅子に私は座っていた。テーブルの上には花束が飾られていた。

「ここは安全ですよ。何も変なものはみえないでしょ?」 

 私は周りを見渡した。確かに変なものは見えなかった。私が安心して胸を撫で下ろす仕草をすると彼は台所へ入っていった。彼が台所へ行った後、少し不安が広がったがそれはすぐになくなった。理由はわからない。花を眺めていたら不安なや恐怖が抜けた。色とりどりの花が私の心を癒した。

お読み頂きありがとうございます

次回も読んでいただけたら幸いです

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