遺書と二枚の写真
こんにちは、初のホラーです。
第一話
私は昔から叔母と二人でここに住んでいる。
車の音がして、少し歩けばファミリーレストランもコンビニエンスストアも大型スーパーやデパートそれに駅だってある大都市で、何不自由なく暮らしていた。
そんな平凡な日々を送っていたある日祖母が倒れた。
ある暑い日、高校の時の出来事だった。すぐさま病院へ搬送されたが間に合わなかった。祖母はまもなくこの世を去った。
多額の貯金と不思議な遺書を残して。頼る親戚なんていない私はその貯金と日々のバイトでなんとかやりくりをして、高校受験に合格。今年なんとか大学へと進学できるようになった。
そんな高校三年生の卒業前の日曜日。私はふっと思い出し祖母の遺した遺書が入った封筒を再び開けた。遺書にはこう書かれていた。
『私の可愛い孫、由利子へ。貴女がこれを読むとき、きっと私はもう貴女の前にはいないでしょう。貴女がちゃんと生活できるようにおばあちゃんいっぱい貯金しておいたからね。それを使ってちゃんと生きるのよ。由紀子。貴女は小さい頃からお転婆で元気で本当に目が離せない子だったわ。貴女は両親がどうしていないのか気になっていたわね。その真実を知りたいなら、勇気があるなら、おばあちゃんはその真実を知る方法を教えてあげる。だけど、気を付けてね。嫌な思いをするかも知れないから。そうね。縋之山村に行きなさい。そこに、貴女が落としたものたちがいる。忘れないで危険が沢山あるから。貴女が大きくなって、両親の事をどうしても知りたくて、行く心の準備が整ったら行くのよ。最後に絶対に今の自分を見失ってはダメよ。それは、悲しい結末へ通じるのだから。気をつけて。おばあちゃんは由紀子の事を愛してるし、ずっと見守ってるわ。貴女のおばあちゃんより』
「もう、おばあちゃんったら」
多すぎるふりがなに私はつい呟いてしまう。一体、私がこの遺書をいつ読むと思っていたのだろうか。それとも、漢字が読めないと思っていたのだろうか。何はともあれ、おばあちゃんらしい。私は笑った。
だけど同時に何処か不気味な遺書だとも思った。遺書が入った封筒の中には他に二枚の写真が入っている。一枚目は私にも記憶があった。中学2年の秋におばあちゃんが、落ち込んでる私にお花を観に行かないかと誘って行った山だ。山と言っても低い方で、ほんの三十分あれば徒歩で登れてしまう。それに、人の手が入っている。咲いていた綺麗な花たちも人に育てられた花だ。山の上の人口的な花園とでも言うべきだろうか。
そこで他の観光客に頼んでおばあちゃんと二人で撮ってもらった写真。今も眼瞑れば色鮮やかに思い出せる。おばあちゃんと最後にとった写真。もう一つは私には覚えがなかった。ある大きな民家の前で老夫婦と若い夫婦が2組それから子供が三人写っている。子供は九歳くらいの男の子と五歳くらいの男の子と女の子だ。皆いい笑顔で写っていて幸せそうだ。私はその二枚目の写真をじっと見つめた。周りの景色は何処か見覚えがある。直感的にそこは縋之山村だと思った。私は今も父親のこと、母親の事がしりたい。そう思い、卒業式が終わったらその村へ、この写真の場所へ向かってみることにした。
何度も電車を乗り換えて、最後の乗り換えの電車に乗る。電車の外の風景は田んぼや畑、山ばかり。そのせいか、乗っている人も少なかった。
私は遺書の入った封筒を開け中から二枚の写真を取りだした。それを交互に見つめる。そして、お婆ちゃんの遺書の内容を思い出していた。
遺書には確か『両親の謎を知りたければ、縋之山村に行け』と書かれていた。そして『危険』『危ない』『自分を見失ってはいけない』とも書かれていた。果たして、何の事なのだろうか。私はさっぱりわからない。両親の事を知るのに何で危険が伴うのだろうか。
あれこれ考えているうちに目的の駅に着き私は降りる。駅前のバス停まで移動して、バスが何時に来るのかを確認する。十四時五十二分。後三十分くらいで来るみたいだ。それまで待とう。そう思い近くのベンチに腰を降ろした。
バスは時間ぴったりに来た。バスの中に入り椅子に座る。私の他はお客はいない。バスはゆっくり発車した。
バスの中から見える風景は綺麗とても綺麗だ。都会育ちの私が想像していたよりも、もっとずっと綺麗だった。それは春ということもあるのかも知れない。緑が生い茂り、花が咲き、風が吹く。言葉では言い表せない大自然が広がっていた。たまに田んぼに作業中の老人らしき人影がみえる。それだけでもなんとなく幸せな気分になった。
やがて、バスは森に入った。周りは暗くなり私は少し恐怖を感じた。森はだんだん深くなって行き不気味さも増す。本当に子の道であっているのだろうか疑いたくなる。
突然声が聴こえた気がした。何を言っているのかはわからない。女の人の声だ。背筋が凍り付いた。
「フフフフフ。」
また声がした。次ははっきりと、笑っているようだ。なんだろう気分が悪い。
「やっと、来た。私の願いが叶う。貴女が来れば私たちは、また……」
それは不気味な声だった。ずっと耳元で鳴り続ける。後ろに気配を感じた。気のせいだと自分に言い聞かせる。耳鳴りがする。その耳鳴りが激しくなるに連れて頭がずきずき痛くなる。私は痛みに耐えきれず気を失った。
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