甘く歪んだ創りて
血溜りの様などす黒い夕日を背に、枯れた大地をゆっくりと進む。踏んでいく大地は固く、跡をつけることも許さない。細々に生えている草木は我が身を隠さんと生きているのか死んでいるのかもわからないほど消えそうだ。
なにも残らない下を見つめ男は息を吐いた。もうあの頃のようには二度と創らない。いや、創れないのだ。革靴の底で土を削る。ガリガリと削るが、あの時ほど真剣みはない。対して面白みもない行動を繰り返しやっていると、なぜだか無性に自分を殴りたくなった。
『神にいくら願おうと、所詮ゴマ粒にもならないものにはいくら頭を下げても見つけてはくださらない』
あの者はこういい、この世を去った。
嘆いてもいい、ただこの理不尽な怒りはどこから来たのだろうかは想像したくはなかった。
目に視えるものに縋り付き、泣き叫び目を腫らしたあの女は今頃何処にいるのだろう。
出会った瞬間飛びついてきたあの幼児は?
笑いあったあの豪快な男共は何をして生きているのだろう。
生きているのだろう…?
私は何をした?此処をどうしたのだ。息を細くして枯れているこの大地はなんだ。この無残な状態は?なぁ、何なんだ。
* * * * * * * *
手を腫らして何日か経った。掻き乱した大地は何本もの細い線が浮かんで何かを描いていた。
なにかの呪文を男は呟く。流暢な何処かの言葉で、刻む。
「創れないものなど、わすれてしまえばいいんだ。これは私にしかできないことなのだから。」
甘く歪んだ顔で、目元を乱して呟いた。
へこんでは消え、へこんでは消えを繰り返し、大きなものは創りだされる。
そして、カフスはばら撒かれる。無条件に、友となれるものを目指して。