もしもの世界「覇王顕現」
「トランぺッターさんこんにちわ!突然ですが三国志についての質問です。もし曹操が赤壁で勝っていたら歴史は変わりませんか?あとこれってトリビアになりませんか?」
これをトリビアにするとこうなる。「曹操が火計を防ぐと、天下統一できる」
実際にやってみた。
後漢末期。それは中国有数の戦乱期であり、多くの人が天に召された暗い時代とも言える。しかし、しかしだ。そんな歴史において「もし」が存在したら…?この物語は三国志を知る誰もが考える「もし」の物語であり、誰にも知られない「外史」の物語…。
さて、そんな時代において、もっとも力を持っていたのが、乱世の英雄、曹操であった。しかし、、そんな彼の数少ない失策といえば、世にいう『赤壁の戦い』であった。「もし」曹操がこの戦いで呉と蜀の連合軍に勝利していたら…?「もし」連合軍の策略に嵌らなかったら…?こんな「もし」の物語は赤壁の地で行われる。
時は少し戻り、赤壁の少し上。覇王こと、曹操は城にてホウ統の進言を聞いていた。
「曹操様、赤壁はそれなりに大きな河川にてございます故、船酔いを起こす者が出るかと。故に船はバラバラで行くべきではないと思われます」
「ほう?ではどうすればよいのだ?」
「鎖で繋げてしまえばよいのです。そうすれば、船上は最早陸地同然でしょう」
「ふむ、そう言われればそうだな…。やってみるか」
こうして曹操はホウ統の進言を聞き入れる。演義でも、曹操はこの進言を聞き入れるが、歴史の捻じれはここら始まる。
時は少し経ち、遂に曹操軍と連合軍が赤壁にて対峙した。一方の対岸を治めるは、侵略を止めんと立ち上がった呉と蜀の連合軍。この軍には名高き諸葛孔明と周瑜という最高の軍師が存在する。この軍は、この二人の「知」で持って曹操の侵略を止めようとしていた。
もう一方は、数で勝る曹操軍。その「数の暴力」を揮うは、曹操軍の有能な参謀、荀攸であった。彼は魏の筆頭参謀で、曹操から高く評価されていた。
さて、そんな相対する両軍であったが曹操陣営に動きがあった。曹操軍の水軍の将軍、蔡瑁と張允が周瑜の策略に嵌り、曹操の前へ招集された。
「その者ら、この私に裏切りの情報が届いている。それは真か?」
蔡瑁と張允は口をそろえてこう答えた。
「否、断じて否でございます」
「そうか…。今回は信じようではないか。しかし次はのような失態は犯すなよ?」
「御意に」
二人は口をそろえて答え、この部屋を後にする。演義では、ここで曹操はこの二人を処刑する。この戦いの一つ目のターニングポイントはここにあった。もしここで、水軍の戦力の要であるこの二人をここで失わなければ、戦いは有利に進んでいたかもしれない。
ここでもう一つのターニングポイントを紹介しておこう。演義において北方人である曹操とその軍団は南の疫病にかかる。もしここで、書かれているほど疫病にかかる人物が少なかったら…?衛生管理がちゃんとなされていたら?この外史では、曹操含め軍人たちの間にはあまり疫病は流行る事はなかった。何故なら、大軍を動かす故、何人もの医師を連れて行く。これが腕の立つ医師だったのだ。
場所は変わり、連合軍陣営。ホウ統は劉備陣営へと帰還する。そう、ホウ統は劉備の放ったスパイであり、作戦を成功させる大きな役目を帯びていた。それは『火計』という策。船を繋げ揺れを抑える…。それは一見正しいと思えるその作戦。だがそれは大いなる間違い。『繋げる』という行為はただ単に燃えやすくするためだけのものだった。
「計画通り…」
こうしてホウ統はほくそ笑む。
そして、とある部屋にて。周瑜は苦虫を噛みしめたような顔をしていた。何故なら、水軍のツートップを葬ることが出来なかったのだから。
「くそ…、私としたことが…。しかし、この遅れは戦で取り返せばいい…。『知』の戦いにおいてこの私が負けるはずがない!」
こうして各々が少しずつ行動を起こしながら戦いは動き始める。
そして戦いの火蓋は周瑜のとある作戦によって切って落とされる。世に言う『苦肉の策』である。今でこそ「苦し紛れの作戦」という使われ方をしているが、本来は自分の肉体を傷つけてまで敵を騙す謀だった。
「ええい、貴様は追放だ!とっととここから出ていけ!」
軍議室にて、周瑜は大声を張り上げていた。当然だ。何故なら「呉の老臣が罪を犯した」のだから。
「言われなくともわかっとるわ!こんなでは呉に未来は無いわい!」
こう怒鳴り返すは黄蓋。孫堅の時代から孫呉に膝を折る兵だった。いや『だった』か。こうしてこんな『茶番』は味方をも騙し、黄蓋は呉の陣営を去り曹操の元へ向かった。ここで、演義では黄蓋は曹操陣営にて火計の準備を進めることになる。しかし、この後に曹操から発せられる言葉だけは周瑜にも予想はできなかった。
「貴様か?こちらの陣営に降りたいというヤツは?」
戦の準備をする曹操は時間がなかった。大軍を率いる曹操にとっては、裏切りの対処など日常茶飯事であった。黄蓋もまた然りである。
「はい。どうかこの黄蓋をこの曹操様の傘下に収めてくれないでしょうか?」
「……。誰かいるか?」
少し間を空け曹操は兵士を呼んだ。そして、この後の歴史を塗り替える一言を放つ。
「この者をひっ捕らえ、獄に入れよ。コイツの眼は嘘を付いている」
「なっ!そんな!そんなバカなことが…!」
こうして黄蓋は捕らえられた。黄蓋とホウ統を起点とした周瑜の火計の策。これはものの見事に失敗してしまった。演義において、この二人の連携と周瑜の知によって成功している。しかし、この外史においてはすべて曹操が上回ってしまった。
こうして、火計は行われず『赤壁の戦い』は開戦してしまった。曹操は数の暴力にて、連合軍を終始圧倒する。連合軍も応戦するが、最後にはバラバラになり各自で撤退していく事になった。
そして赤壁にて曹操は天下統一の足掛かりを確固たるものにし、その勢力を広げていくことになる。天下統一を目指す人物には様々な『IF』が存在する。曹操のこの物語は『本当にあったかもしれない物語』であることを忘れないでほしい。
劉温「やっぱりIFはいいアルね。人類が生み出した文化の極みヨ」
だねぇ。IFはやっぱり歴史家のロマン!ダメだとわかっていてもせずにはいられない!
劉温「でもやっぱり三国志列伝にも…」
はい…。書きます…。では!
劉温「ばいばいアル!」