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覇王譚  作者: 砂糖は甘い
王の再来
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第十九話 到着

 里から飛び立って早、三日。

 メルドルン領内に入ってからさらに少しが経った頃、遠くにうっすらと街の影が見えてきた。


「エルリア様!!そろそろ降りましょう」

「そうだな」


 このまま、近づいて行っても十中八九撃墜されるので一度、降りる。ここからは徒歩で都市の入り口まで行く。体感だが街まで数百メートルと言ったところか。まあ、多少時間は掛かるが疲れるほどではない。


 数分、移動すれば検問所が見えてきた。入り口から人が連なっている。かなりの人数がいるのか街道からはみ出している人もいる。


「……ここが人類の都市ですか」

「そうだな。来たことなかったか?」

「ええ……話でしか聞いたことはありません」


 フィルはどうだか知らないがシェリアは人類の街には訪れたことが無いのだと。人間と会ったことは幾度かあるらしいが。まあ、それもそうか。本来ならあれだけライトグランドの奥地に居たら外に出る方が大変だもんな。


 しかし、今になって気付いたが変装とか一切してこなかったな。

 幸い、魔族は人と身体的な特徴も大きくは変わらないしバレないとは思うけど。それはそれとして迂闊だったと反省する次第だ。


「う~む」

「どうかしましたか?」


 俺が唸り声を上げて悩んでいればフィルが声をかけてくる。何処からか水筒を取り出してこちらに渡しながら顔を覗き込んでくる。


「いや、退屈だと思っただけだ。大体、こういう時、絡まれてたから」


 そう。退屈だ。

 いや、別にそれでいいのだが、何というか何もないとそれはそれで落ち着かない。

 この体、容姿や体格もあって非常に舐められやすいのだ。その結果、血の気の多い冒険者に良く絡まれてたわけだが……ここには明らかに強そうな男が居るからな。そう簡単に絡んではないだろう。


 そんなことを考えていれば思っていたよりも早く順番が回ってきた。主にやることは犯罪歴の有無の確認と持ち物検査くらいだ。身分証なんて持っている奴がこの世界じゃそこまで多くないため提示は必要ないがあれば見せてくれと頼まれることもある。今回は俺のだけで済んだが。


 検問所を通り外に出る。街に入り辺りの視界も一気に開ける。


 ここはメルドルン王国公爵領ルーシア。

 メルドルン王都に次ぐ第二の都市にして経済の中心。王家に近しい公爵家が統治し世界中から沢山の人が集まる地だ。工芸の街でもあり武具や装飾品、芸能品の製作が盛んだ。住民の約6割がエルフである。元々、繁殖力の強い種族ではないためエルフの国の第二の都市と言っても人口比率はそこまで多くない。


 ライトグランドに対してかなり近い場所にある都市でもあり冒険者や駐屯する騎士の数も多い。政治の中心地は王都であるがルーシアは実質的にメルドルンの中心地であるため、防衛網も厚い。


「久しぶりだな」

「おお」

「これは……何とも……圧巻ですね」


 俺含め三人とも異なる反応を見せた。

 俺は単純に懐かしさを込めて呟き、シェリアは子供のように目を輝かせ、フィルは難しい顔をして感嘆の声を漏らした。


「これに、俺らは追いついて追い抜くんだよ」

「……出来るのでしょうか」

「さあな。やってみないと分からん」


 フィルの疑問に対してぶっきらぼうに返す。

 子供のようにはしゃぐシェリアにはぐれないよう注意をしながら街を歩く。ここから鍛冶場の多くある区画までは少し距離がある。

 道中には服屋や雑貨もある。里の皆にお土産も買いたいしこいつら二人には服をあげてもいいな。

 歩きながらいい店がないか探す。


「お、ここよさげだな」


 大通りに面するそこそこの大きさの店に入る。庶民的な服が多くしかし、品のある佇まいの店だ。他の街でも見たことがある感じそれなりに有名な店なのだろう。生憎、服に興味がなかったから覚えていないが。


「好きなのを選んで買うといい」

「え?でも……」

「我々、お金など持っておりませんが……」

「俺が払う」


 元々、人類の通貨を持っていないことは知っている。

 そして、あらかじめ俺は金を持ってきた。取り出した袋には大量の金貨が入っておりずっしりとした重みと心地よさを感じさせる。


「では、お言葉に甘えて」

「え、ちょ……もうちょいエルリア様に遠慮とか……」


 フィルはそれを聞くなり直ぐに服を選びに行ったがシェリアは不安そうに何か言いたげにしながら服の群れの中に消えていった。


 ここで突っ立って待つのもあれだし俺も服を買おう。まあ、俺が選ぶのは毎回、パーカーとジーンズなのだが……この店にあるだろうか?


「ありますよ。こちらです」


 店員に案内され少し奥の方の棚に案内された。そこにはそれなりの種類のパーカーがつるされていた。これだけあれば好みのモノを選べるだろうな。


 暫く俺のファッションセンスと格闘し最終的にはラフで動きやすいパーカーと伸縮性のあるこちらも動きやすいジーンズを購入。


「エルリア様、これでどうでしょうか」

「こっちも決まりました」


 服が決まったのか二人とも戻ってきた。

 丁度会計をしようとしていたところなのでまとめてしてしまおう。


「お会計、13000ダルクになります」


 因みに、外食すると平均的に一食1000ダルクくらい。


 そんなことはどうでもよくて、二人とも買った服に着替えてもらったがとても似合っている。シェリアは黒の半袖に薄めのパーカーを羽織っている。

 フィルは執事服。イメージとも合致しているし元が良いから服も良く似合っている。


「んじゃ、行こうか」


 店を後にし歩き出す。道中、雑貨屋と宝飾屋に寄ってルフェア達にお土産を買っていったため、到着が考えていたよりも遅くなったが誤差である。


 鍛冶場の近くにまでくれば既に熱気が伝わり周囲の温度がちょっと上がったような気すらした。トンテンカントンテンカンと金属を槌で叩く甲高い音が絶え間なく聞こえる。騒音を考慮してなのか周辺に民家はなく商店など人が住んでいない建物が多い。


「これは……やはり、凄いですね」

「ああ、ここまでの鍛冶場はなかなか見たことが無い」


 さらに少し進めば遂に目的地である鍛冶場のある地区にたどり着いた。地区に入ったばかりの場所には武器屋が多くあり店頭にはここで作られたであろう武具が並んでいた。

 どれもかなりの高品質でこの国の鍛冶技術の高さが窺えるものだ。


「しかし、ねぇ。ここにリエールは居ないだろうな」


 ここに来たのはリエールを探すため。なのだが、実際は俺は王宮に居るだろうと思っている。そのため、ここは寄り道みたいなものだ。

 通り道に偶然、大きな鍛冶場があったからそれっぽい理由で訪れたのだ。


「さてと、買いも……じゃなくて、捜索を始めますか」

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