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覇王譚  作者: 砂糖は甘い
王の再来
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第十五話 復活

「なあ、ルフェア」

「何でしょう?エルリア様」


 俺が深刻な声色で尋ねれば軽い調子で返してくる。

 少しためらいがちに続きを言う。


「家ってのはこれ以上のモノは無いのか?」

「ええ、恥ずかしながら技術がありませぬ故……これが限界となっております」


 この里で改善しなければいけないことは山ほどあるが、第一に生活環境だ。家は掘っ立て小屋の様なもの、服は布切れと大差なく食事も焼くか煮るかの簡素なもの。

 この有様では極貧の農民にすら劣る生活環境だ。

 確かに人間に比べ体が強い魔族とは言えこんな生活を続けていれば弱ってしまうのは当たり前だ。

 最低限、真面な服に真面な家を用意してやるのは俺の役目だろう。


 幸い、魔族の物覚えは良く教えられさえすればそれを使うことに問題は無い。頭も悪くないので技術の発展や改良にも期待が持てる。

 自分達で技術を生み出すことも出来るのだが、追われる身ではそれも難しかったのだろう。


「……と、なると、技術者を呼ぶ必要があるな」

「技術者……しかし、どうやって……」

「う~ん……」

「技術者や職人の多い国であればドルワーズ(ドワーフ国)メルドルン(エルフの国)がありますが……どちらとも非常に気難しい種族でありますから……」


 ドワーフやエルフであれば技術的に問題は無いだろう。だが、如何せん気難しい。ドワーフは頑固で偏屈。エルフは排他的。

 来てくれと頼んで素直に受けてくれるとは思えない。


「どうしたもんかね」

「そうですなぁ……あ、リエールはどうでしょう?」

「あいつどこに居るんだ?」

「さあ?メルドルンの王族にでも頼っているのではないですかな」

「ああ、割とあり得るな。んにゃ、取り敢えずメルドルン行くか」


 一応、技術者の知り合いで今も生きているだろう奴がいたためそいつを探すことに。

 こいつも魔王が居なくなった後、行方を眩ませていたが親族であるエルフの王族を頼っている可能性はあるだろう。

 あそこなら教会勢力も出入りしないしな。

 里の事は俺が居なくても回るのでとにかく今は動いて人材を集める。


「移動は……徒歩で?」

「いや、丁度いいのがあるんだよ。こいつがダメだったら徒歩だけど」


 そう言って腰に下げてある籠を見せる。

「ああ、あの時、いつの間にか龍が消えていたので逃げたのかと思っていたのですが……捕らえていたのですか」


 その籠の中に入っていたのは先日、二人で戦って倒した龍だ。


「そ。鑑定したら狂化してたからさ。龍が理由なく狂化する事は滅多にないから原因を調べようと思ってね」


 狂化。読んで字のごとく狂う事。魔力が暴走し狂ったように暴れまわる。多くの場合は進化時に魔力を制御しきれず起こる。しかし、もともと魔力の制御に長ける龍はそれが殆ど起こらない。

 それが気になっていたのだが、原因は未だ不明だ。


 これだけの龍を遊ばせておくのも勿体ないので手懐けてしまおうと考えている訳だ。


「しかし、そんな上手くいきますかな?」

「龍だからな。賢い生き物だ。心配いらないさ」


 一応、龍の魔力は規定値まで減らしてある。少なくともこれだけ減らしておけば直ぐに狂化することは無いだろう。

 それに、龍は賢い。自分より強い相手に無暗に反抗したりしないだろうし受けた恩もしっかり返してくれるだろう。


「ちょっと離れたところまで行ってくるから。昼までには帰って来る」

「分かりましたじゃ。行ってらっしゃいませ」


 短く挨拶を済ませ森へと駆けていく。

 万一、里の近くで開放して暴れられても面倒だ。

 少し走ればちょうどいいくらいの木々の晴れた場所があった。籠を地面において捕獲の魔法を解除する。すると籠が眩く光り中から壮健な龍が現れた。

 俺達から受けた傷は既に癒え元気そうだ。


 スヤスヤと気持ちよさそうに寝ていたが暫くして目を覚ました。


「きゅい」


 思っていたよりも可愛らしい鳴き声を出しながら周囲をキョロキョロと見回してから伸びをする。

 少し待って俺と龍は目が合った。龍はこてんとその巨体に似つかわしくない仕草で首を傾げた。よかった。初手で襲ってくるようなことは無い。

 あと、この様子を見るに思っていたよりも幼い個体なのかもな。


「……きゅい」


 ここからどう切り出そうかと考え込んでいれば急に龍が首をこちらに向けてもたげてきた。まるでお辞儀をするように。


「……まさか、分かっているのか?」

「きゅい!!」

「マジか……俺と戦ったのも覚えてるか?」

「きゅぅ……」


 俺が聞けば申し訳なさそうに頷く。いや、スゲェな、龍って。寝ている時に自分を直した相手を覚えているなんてな。

 んで、狂化した時の記憶もしっかりあると。

 しかし、それに対する罪悪感があるのか身を縮こませている。


「大丈夫だ。それに関してはどうでもいい」

「きゅ……」

「体はどうだ?痛いところとか変なところは無いか?」

「きゅい!!」


「無いよ!!」とでもいうかのようにとても元気よく返事をしてくる。

 可愛いな、こいつ。


 体に異常は無し。魔力にも今は特段、変わった様子もなくマジで狂化した原因が分からん。


「きゅい!」


 再び考え込んでいると龍が爪を差し出してきた。一瞬、攻撃しようとしているのかと思ってしまったがよく見てみれば魔法が纏ってある。これは……契約魔法だ。

 龍ってそんな高度な魔法も使えたんだ。

 そんなことはどうでもよくて一番の問題は内容だ。

 この契約魔法、俺を主人として主従関係を結ぶ契約魔法だ。一般的にテイマーと言われる奴らが生き物を捕獲(テイム)するときに使われる。


 これの意味するところは……

「お前、俺にテイムされたいのか?」

「きゅ!!きゅあ!!!」


 聞けばすごい勢いで返事をしてくる。尻尾がブンブンと振られ翼もパタパタと小さく羽ばたいている。かなり期待されている。

 まあ、別に躊躇う理由もないしそれが目的だった訳だからいいんだけど。

 無理やりテイムも考えていたけれどやっぱり、そんなことはあんまりしたくないからね。


「本当にいいんだな?」

「きゅー!!」

「分かった。なら、『契約』」


 あっさりと宣言をすれば何の抵抗もなく契約は発行された。

 これで、俺とこの龍は強い絆で結ばれることになる。ある程度の位置や健康状態くらいなら離れていても分かってしまうだろう。


「しかし、呼び名が無いというのも不便だな……」

「きゅ?」


 こいつの呼び名がない。ずっと龍と言うのは可哀そうだし、名前を付けてやりたい。龍は知能の高い魔物のため、人語を理解することが出来るという。

 話すことは出来ずとも名前はあっても困らないだろう。

 どんな名前が良いかと聞けばあまり分かっていないのか「きゅー」と言って首を傾げてしまう。非常に可愛らしい仕草だがその巨体でやると非常に危ない。人にでも当たったら首が折れる。


「うーん……」

「きゅいぃ?」


 そうだなぁ、どうしようか。下手な名前を付けるのもどうかと思うし……

 どうしたもんかね。

 あ、これいいじゃん。


 陽の光を反射しキラキラと閃光を放つ鱗。山吹色の瞳孔に眩い元気。

 うん、これにしよう。


レクレール(閃光)……お前の名前だ」

「きゅー!!」


 フランス語で閃光を意味する言葉だ。些か安直すぎる気もするがまあ、他に思いつかないし良いだろう。本人もさっき以上に体を動かして喜んでいる。

 ここじゃ俺しかいないからいいけれど里でやったら大惨事だな。


「おっと、魔力がごっそり……」


 そんな様子を微笑ましく見守っていれば俺の体から大量の魔力がなくなっていくことが分かる。総魔力量の内、約7割くらいがなくなっただろう。

 レクレールは魔力が一気に減った俺を見て心配そうにしているが心配することは無い。レクレールの鼻先を優しくなで心配いらないことを伝える。


 これは名付けの代償。魔力を使って魂に名を刻むことによって魔物は力を増す。それを契約魔法に上乗せして行うことで契約をより強固なものにしたのだ。

 元々、膨大な魔力を必要とする名付けと相手や契約内容によって消費魔力が変わる契約魔法のダブルパンチでごっそり魔力が減ったのだ。

 二日も休めば全快するだろうから心配はいらない。


「さて、里に行くわけだが……お前のその巨体を入れるのは中々に困難だな」

「きゅい……」

「小さくなれるか?」

「きゅ!!」


 龍の中には形態変化を操る種族もいると聞いたことがあるので言ってみれば元気よく返事が返ってきた。どうやら出来るらしい。

 集中しているのか小さく唸り声を上げながら体が光る。光は段々と強くなっていき目を開けておくのも難しいほどのものとなった。


「きゅ!」

「お、成功だな」


 光が収まればそこには手のひらサイズ、とまではいかずとも小さ目のワニ位の大きさまで縮まっていた。これであれば問題なく里で生活することが出来るだろう。身長とか体重とかの問題はあんまり考えなくてもいいだろう。

 この状態でも問題なく飛行できるみたいだし体重もそのままじゃかなりの重量だが重力魔法の応用で頭にのせても大丈夫なくらいには軽くなっている。

 一しきり遊び終わったのを確認しレクレールに声を掛ける。


「……行くか」

「きゅい!!」

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