Ep.2
4日後、体と喉、頭の痛みは完全に取れた。ようやくベットでの生活から解放される。『ジョルジ』医師の診察で薬はしっかり飲むのと栄養バランスを考えた食事を食べるようにと言われた。
伯爵家にいた時より少し元気になった少女だったが、世話をしてくれたメイドと他2人に浴室に連れていかれた。
1週間と4日も風呂に入れなかった…いや、もっと言えばほとんど入ってなかった。臭いは魔法で消してたから何とかなったが髪はボサボサで痛んでるし汚れてる、あまり清潔ではない。
そんな少女を洗うメイド達は何故か楽しげな様子で彼女を清めていた。何度も何度も頭を洗い、流しては洗いの繰り返し…
2時間後、ようやく入浴が終わった。疲れ果てた少女に対し、メイド達はやりきった顔をしていた。しかしそれで終わらなかった。
あの男性が呼んだのかはわからないが、仕立て屋が来ていた。彼女はヘアーサロンも経営してるらしく、少女の酷く傷んだ髪を整えた。長い前髪やハネた、傷んだ髪を切る事30分…少女はまた浴室に連れていかれ髪を流した。
…身支度をする事計4時間弱…仕立て屋とメイド達は燃え尽きたように動かなくなった。
▼△▼△
朝8時頃から始まって終わったのが昼の12時頃…
少女はメイドと執事に連れられあの男性の元に案内された。
執事が扉をノックすると入るよう言われた。
「失礼いたします、旦那様」
「……!!」
旦那様と呼ばれた男性の目に広がったのは…白銀の髪に薔薇色の瞳をした小さな子供だった。あの少女だ…灰色の髪だと思ってた髪は手入れがされてなかったせいでくすんでいたのだ。
白き病 アルビノにとてもよく似てるが、少女の容姿は病気によるモノではない、生まれた時からこの姿だったのだ。
美しい白銀の髪と薔薇色の瞳…まるで小さな宝石のような少女だった。
男性は綺麗になった少女を見て口を開いた。
「…あ、姉上…」
「??」
男性は驚いた表情をして少女に近付き、少女と目線を合わせて話しかけた。
「失礼、取り乱した…。本当の姿なのか?」
「わ、わかんない…」
「わからない?親で同じ姿をした者は?」
「お母さま、いない…。顔、わかんない」
「っ!?…そうか…」
舌足らずな声で答える少女の返事に、男性は何か察したのか暗い顔して少女の頭を優しく撫でた。
それは執事とメイドも同じのようで、少女の母親は少女が赤ん坊の頃に亡くなったとわかったようだ…。
男性は真剣な顔に戻り少女に話しかけた。
「自己紹介がまだだったな。ワタシは『グラジオ=ロベリアス』、君の母の弟だ」
「ロベリアス?おとうと?…」
少女には何が何なのかわからない…。ロベリアス公爵の言ってる事は理解できるが…
そもそも少女は母親の顔も過去も知らないため、どう答えるのが正解なのかわからない。
公爵は少女にわかりやすく伝えた。
「弟と言っても血は繋がってないがな…。だが此処は君の家でもある」
「いえ?(私の家?此処が?)…!」
公爵は何もわかってない少女を抱き上げ何処かに向かった。
慣れた手付きで幼い子供を抱え、子供が落ちないようしっかりと抱えて歩く、彼は廊下にやってきた。
廊下の壁には何枚もの肖像画が飾られていた。
公爵のようなまさに悪魔=魔族のような容姿をした男性や女性、白髪の男女の肖像画が何枚かある。
そんな中、一際若い女性の肖像画の前で立ち止まった。少女は公爵が見るよう言った肖像画を見ると…心が反応した。
「っ!!」
知らない人の筈なのに目が話せない…
公爵が見せたのは、白銀の長髪に薔薇色の瞳をした美しい女性の肖像画だった。鼓動が強くなるのを感じる…
わからない筈なのに、知らない人の筈なのに…
本能が告げる…彼女が母親だと…
「っ…」
鼓動が彼に聞こえてしまいそうだ…。
そんな少女の体を優しく抱き締める公爵は彼女について話した。
「彼女の名は『マリアローズ=ラ=ロベリアス』、ロベリアス公爵家の令嬢だった、正統な魔族…いやロベリアスの悪魔の血を宿す者だった。
しかし彼女が消えた事により、正統な血筋は途絶え、養子であるワタシが公爵家を継いだ」
「ロベリアスのあくま…(あくま…魔族って事だね)」
こんなに美しい女性が悪魔|《魔族》だなんてにわかに信じがたい…少女が知ってるのは母親が魔族だと言うこと…容姿や顔、身分までは教えてもらえなかった。
そういえば…父は繰り返し言っていたか…
『親が商売で悪魔奴隷を買って、無理やりわたしと結婚させたのだ!…死んでくれてせいせいする。…余計なモノを残していったがな』
「……」
あの発言と関係してるのか?確かにこんなに美しい悪魔|《魔族》なら拐われ奴隷や良からぬ商売に巻き込まれやすいだろう…。美人はホントに美しいが…美人は面倒で損をするとも言われてる。
「…この人…拐われた?」
「!!」
「「?!?!」」
少女の発言に公爵達は驚いた表情をしたが、公爵はすぐに真剣な顔に戻った。
「…姉上は体が弱い方だった。そしてとても美しい方だった…【魔界】に紛れ込んだ人間達や混血の魔族達が卑怯な手を使い彼女に手を出そうと企む輩も多かった…。この度にワタシは彼女を守ってきた…だが、そうだな…」
「……」
彼の様子からして、恐らくマリアローズは少女の予想通り…人間の女拐い達に拐われ、美しく事から娼館ではなく見世物兼奴隷としてそっちの店に売られてしまったのだろう…
「わかった、もう聞かない」
「……すまない、君が大きくなったら全て話そう」
「うん…」
きっと少女を出産して命を引き取ってしまったのも、元から妊娠・出産に耐えれる身体ではなかったからだ…でも今の自分にそれ以上の事を尋ねる権利も効く権利も無い…
…改めて肖像画を見るとマリアローズだけではないが、公爵家の者のほとんどが白銀の髪に薔薇色の瞳をしてる…ロベリアスの悪魔の象徴なのだろうか…。
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