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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第一章 妖狐衆
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成長と試練

 あれから2週間以上が過ぎた。

 その間はひたすらに鍛えて避けて防いで失敗して吹き飛ばされて壁にめり込んで(?)走って的を打ち抜く日々。

 毎日あざだらけになって体バッキバキでどんだけ逃げ出そうと思ったかわからない。

でもそんな中で少しずつ変化が起きていた。

 まず全身に筋肉がついてきて龍樹さんの攻撃にも前より吹っ飛ばされなくなり、またロボ相手でも一体ならなんとか相手できるようになってきた。

それに全体的なスピードも上がって前は気絶しそうだったあのメニューもこなせる程にスタミナもついたのだ。

 それとみんなと過ごしているうちに教えてもらったのは、僕たちのような特殊能力を持っている超人の中でこれから確実に戦わなければいけない厄介な奴は「破壊神」を含めたおよそ三人。

確認されているというものと龍樹さんの能力だ。

(本人曰く、怪力と驚異的な再生能力らしい)


そして二週間目の朝が来る。いつも通りに着替えて一階に降りて挨拶をする。


「おはようございます」


 だがおかしい、食卓に誰もいない。

(いつもなら百合さんと龍樹さんは絶対にいるのに……)

 不思議に思っていると訓練場に続く入り口から龍樹さんが出てくる。


「おう、おはよう」


「あっ、おはようございます。えっと、何されてるんですか?」


「まぁいいから、台所におにぎりがあるはだろ? それ食ってから降りてこい」


 そう言って下に戻ってしまった。


(まぁ良くないんだけど……)

だが言われた通りに台所に行くとおにぎりが三つ置いてあった。


「これ、どれがどれなんだ?」


 ぱっと見で全く分かんない。

おんなじサイズでおんなじ形でおんなじ海苔がおんなじ風に巻かれてる。

さながらくじ引きでもやってるみたいだ。


「まぁ、あれがなければ……」


 僕がおにぎりの具で唯一嫌いなもの、それは魚卵系だ。イクラっていうのがどういうのかいまいち分からないが数の子などのあの粒食感がどうにも好きになれない……(個人の意見です)。

初めて食べたのは小6の頃だが、そこで味わった嫌悪感から今まで食べないように努力してきたのだ。

でもこの状況では避けようがない。


(くっ、腹を括るしかないか)

そうして一番左のおにぎりを手に取って頬張る!

次の瞬間、口の中に広がるのはほのかな塩味と旨み……これは鮭だ! 鮭は大好物なんだ!

そして一気に平らげる。

百合さんが作ったであろうそのおにぎりは格別の旨さだ。

そして二つ目も勢いのまま頬張ると広がるのは醤油と鰹の味……おかかだ! これも美味しくいただく。

そしてついに三つ目だ。

ここまで全て当たりだから最後にハズレが来るなんてこともあるから少し怖い。でも龍樹さんの言っていた感じ急がなければいけなさそうだったから意を決して頬張る!

すると強い酸味が感じられる……そう梅干しだ。初めて食べたがとても美味しい! 結果二口でおにぎりを食べ切った。

お腹いっぱいになりコンディションは抜群、そして言われた通りに梯子を降りて訓練場に行く。

そこで目に入ったのは武器を持ち戦闘服に身を包んだ妖狐衆のメンバーだ。


「おっ、やっと来たか」


 僕が唖然としていると大丸さんが声をかけてくれる。


「はい、おはようございます。これはどういうことですか?」


 我慢できずに質問する。


「あー、まずはいつも通り訓練しろ。今日は俺たちも参加するぞ」


「え? あ、はい」


 衝撃だったが考えてみれば簡単だ。大丸さん達だって人間だ、訓練なしではどうしても身体能力を維持できないんだろう。だから参加するだけだ。

そして妖狐衆全員での訓練が幕を開けた。

筋トレこそはいつも通りだったが他の訓練に入るといろんなメンバーがアドバイスをくれてとてもためになった。

そして今日はえらい早くに訓練が終わった。


「お疲れ様でした!」


 そう言って上に戻ろうとすると、大丸さんが呼び止める。


「ヨウタこれ食って少し休んでな」


 そう言っておにぎりを渡してくれた。具は朝と同じだったから感想は省略する。朝同様めちゃくちゃ美味しかった。とだけ言っておこう。

そうしていると大丸さん達がストレッチをしている。


「え? 何してるんですか?」


「ん? ああ、今日はお前が妖狐衆に来て二週間だろ? ウチでは候補生は試練を受けて合格すれば正式なメンバーになれるんだ」


(ん? なんだ入隊試験的なやつね? ……は?)

 思考が停止する。


「えっ、それが今日なんですか? しかも訓練後に⁈ 見回りとかは⁈」


「あぁ、今日は訓練やるからって隣の組織に頼んであるから安心しろ」


「どういうことですか⁈ ってか許されるんですか⁈」


 思わずツッコんでしまう。


「今日って決まってたからな」


 大丸さんがイタズラっぽく笑う


「で、試練って何ですか?」


 話題を強引に切り替える(これ以上ツッコんでもダメだ)。


「試練は至ってシンプル、今からこのメンバーと闘って誰かに一発攻撃を当てろ。それで合格だ」


 また思考停止する。


(え? 攻撃を、当てる? 闘って?)

 今まで龍樹さんとの稽古はやってきたが基本は技を教わるようなもので実戦経験なんて皆無なのにさらに攻撃を当てるなんて、正気じゃない。

……でもここまで候補生として修練しただけ、つまりこのままではあの二人に問いただすどころか会うことすら出来ないかもしれない。

それは絶対に嫌だ。

その答えを出すのに時間は必要なかった。


「やります!」


「分かった、じゃあこれを」


 そう言われて渡されたのはいつもの木刀とペイント銃ではなく鉄で作られた黒い刀とテーザーガン。

僕はそれを手に取って言う。


「こっ、これですか?」


「あぁ、今回は実戦だからな。武器も本気だ」


 刀を抜いてみると黒い刀身に見るだけでわかるほどの鋭い刃が姿を現す。実際に刃物の武器を扱ったことはないがとても手に馴染む。


(これなら、いける!)

そしていよいよ試練が始まる。

僕は刀を正眼に構える。

 対して相手側の先頭は龍樹さんだ、龍樹さんの得物は巨大な両刃斧。龍樹さんはそれを刃を後ろにして構える。

少しの沈黙の後、同時に爆ぜるように踏み込む!

先手は僕の袈裟斬りだ!


「ハァアアア!!」

 その攻撃は龍樹さんの胸に向かっていったが龍樹さんは斧を逆袈裟に跳ね上げて僕の刀を弾く!

 そのまま追撃が飛んでくる!跳ね上げた斧を強引に振り下ろす!

僕は紙一重でそれを横にかわす。

そして轟音と共に斧の刃がコンクリートにめり込み床が割れる。すかさずカウンターの横薙ぎを飛ばすが龍樹さんも猛者だ、柄を持ち上げてガードする。

鈍い音を立てて攻撃が防がれる。


「うおらぁぁぁぁ!」

 龍樹さんが雄叫びを上げながら強引に斧を地面から引き抜く!そして斧と石突を用いた回転攻撃を仕掛けてくる!


「くっ!」

 咄嗟にバックステップで逃げて拳銃に持ち替える!


「喰らってて下さいよ!!」

 心の声が漏れ出てしまうがこの際許してもらえるだろう。そして声と同時に弾丸を二発放つ!


 弾はまっすぐと飛んでいくが龍樹さんの回転攻撃に阻まれてしまった。


(くっ、やっぱダメか!)

それはそうだ、今の龍樹さんはまるで竜巻のように斧を振り回している、正直勝ち筋も何も見出せないが可能性があるなら……。


(あの技を決めるしか)

 そして瞬時に刀に持ち替え、僕は爆発的な踏み込みで距離を縮める!そしてど正面からの斬り合いに持ち込む!


「俺に勝てると思ってんのか? ヨウタ!!」


「があぁぁぁぁ!!」

 壮絶な斬り合いで僕が少しずつダメージを受けていく。

 だが回避訓練の成果が出ているのか攻撃に対応し始めている!そして大振りの技で龍樹さんの体制が少しばかり崩れた。


(ここだ!!)

 瞬時に技の体制に入る!


「妖狐流剣術基本技一……鴗<カワセミ>!!」

 瞬間! 地面を強く蹴り、飛ぶ!


「おおおああああ!!」

 そして急降下し刀を振り下ろす!


「そうきたか!!」

 龍樹さんは超反応でバックステップ! 刀は空を裂いて地面と激突する!


(クソっ!!)

 本来であればここから切り上げに変えて追撃をするのだが距離が遠い。


(なら!)

 僕は手首を強引に返し一歩踏み込んでの逆袈裟に入る! これは龍樹さんも予想外だ。


「変化させてきたか!!」

 龍樹さんが攻撃をもろに食らう!


(やったか?)

 だがすんでのところで斧を間に入れていた!


「おらよ!!」

 そのまま強引に僕を吹き飛ばす!


「ぐあっ……!」

 そのまま壁に飛んでいくが空中で回転して何とか体制を戻す。


(まだだ! また追撃が来る!)

 そしてすぐに構えると同時、奥から黒い影がこちらに真っ直ぐ突っ込んでくる!



 そしてこの戦いは予想もできない展開を迎える。

さて、できる限り駆け足で今話を仕上げられて良かったです。今回はどうでしたか?レビューや感想、コメント、お友達にご紹介などしていただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
(敬語使います) 凄い細かい所まで情景を言葉で表している所に驚きました。 頑張ってください。
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