蛇殺しの獣 ニ
俺とシオンが息を切らしながら得物を構える。その目の前には狂気の笑みを浮かべた八百屋の店主……。
(あのパワーをどうにかしないと……)
俺が頭を回転させた瞬間、
「宴を楽しもうじゃないか!」
奴が地面を割って飛び出す! そして巨大なハンマーを勢いよく振り下ろした!
「ちっ!」「……」
俺たちは避けることしかできない。
「オラァァァァァア!!」
奴が荒れ狂う竜巻のようにハンマーを振り回す! 俺はなんとか致命傷を避けながら奴に一太刀でも浴びせようと食らいついた!
「ドライブ、1!!」
シオンも呼吸を合わせて奴に斬りかかる!
「ワッハッハッハッハッハ!! 良いぞ、もっと楽しもう!!」
だが奴は全てを防ぎながら大声で笑っている。
「これでも食らえよ!」
俺は奴と距離を取るために煙玉を投げた。次の刹那、周りが白煙に包まれる!
「フゥゥゥ。シオン、アイツ殺せるの?」
俺は目を向けずシオンに聞く。
「分かんない……策がはまればもしかしたらって感じ」
「なるほどね……それじゃあ、それに賭けようか!」
俺はその言葉と同時に前に飛び出した!
(小細工なし! 正面から! 腹括ったなぁ!!)
奴はまたもや笑いながら俺を待ち構える!
そして次の瞬間、俺と奴の信念がぶつかった!
「死に晒せぇぇぇぇぇえ!!」
「良い動きだぁぁぁぁぁあ!!」
周りの空気すらねじ曲げるような猛攻が両者の間で交錯する!
だが、ダメージを受けるのは俺だけだ。
「チッ!」
(一撃が重すぎる。いつまでも保たねぇぞ!)
一発受けるごとに骨が軋み、衝撃を逃がせない。
「ガァァァァア!!」
その刹那! 俺は真上に飛び上がり、刀を構える!
「妖狐流剣術! 基本技一、鴗!!」
そして急降下しながら刀を地面に叩きつける!
「うおっと!」
だがその一撃すらも奴は避ける。
「まだまだぁぁぁぁあ!!」
間髪入れずに俺は刀を横に向けて飛び上がる!
(からの……妖狐流剣術基本技ニ! 龍刃旋風〈翔〉!!)
俺は奴を逆袈裟に斬り上げず、回転しながら竜巻のように飛び上がったのだ!
「ぐっ⁈」
これは奴も予想外、切先が胸をハスッた! 奴は避けようとして体勢が悪い!
「シオーン! 今だぁぁぁぁぁあ!!」
その瞬間、シオンが影の中から現れる!
(今まで出来なかったけど……今ならやれる!)
その刹那、シオンの空気が変わる! あの時、烏との戦闘でシオンのリミッターが一つ……外れていた。
(ドライブ……2!!)
次の瞬間、奴を尋常じゃない圧力が襲う!
(なっ⁈)
体勢の悪い奴はなんとか避けようとするが、無理だ。
そして、シオンが瞬きの間に奴の懐に潜り込む!
(この速度で奴の脇腹に風穴開けてやる!)
そして小太刀を突き出し尚も加速する!
(殺った!!)
俺達は勝ちを確信した……だが、
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
その刹那、奴が天に吠える! そして謎のエネルギー波が俺達を吹き飛ばした!
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!」
空中にいた俺はそのまま建物の外壁を突き破り、屋根に叩きつけられる!
「ぐぅぅぅぅぅぅう!!」
シオンは踏みとどまろうとするものの吹き飛ばされ、俺の反対側の建物に突っ込んだ。
(なん……だ? 何が起こった?)
俺は起き上がろうとするが体が言うことを聞かない。
(目眩に手足の痺れ……頭打ったか……)
そう思うと同時に頭から生温かい液体が流れているのが分かる。
(ただの衝撃じゃない……脳が直接揺らされるような感覚だった……)
同じ時、シオンも甚大なダメージを受けていた。
(ドライブ2でもノーダメージじゃないし……反動で動けそうにない……)
その瞬間、シオンが血を吐く。
「ガハッ!」
腕も見ると青色の斑点が少し浮かび上がっていた。
(クソッ……)
結果は一目瞭然、僕たちの負けだ。
「フゥ……フゥ……」
だが奴も何故か膝をついていた。
(やはり無供給状態での「あれ」は楽じゃないな……)
今の技は奴の中にある「何か」を大量に消費するようだ。
「だがお前らも動けねぇだろ……腕もらってくぞ」
それでも奴は立ち上がり、一歩一歩進んでいく。しかしシオンの吹き飛ばされた建物の前に来た時、奴の足が止まる。
(いや、待てよ。あの女……あの時感じた力は俺すらも超えていた。万一に耐えられていればカウンターが来るか? ならガキの方……いや、あそこまで行くのは無理だ……)
そうして奴は一つの決断を下した。
「ガキども、今日は見逃しておいてやる! 覚えておけ! 俺の名はラーテル! 蛇を狩る者だ!」
それを言い終えた奴は夜の闇へと消えていった。
「あ……んあ?」
僕は意識が朦朧としながらも奴の言葉は聞こえていた。
「シ、シオン……動ける?」
僕はまだギリギリ生き残っていた通信機でシオンに聞く。
「む……無理。反動で喋っても痛い……」
「とりあえず龍樹さんを呼ぼう」
それから僕達は龍樹さんに回収されて闇医者、後藤さんの所で眠った。
◆◇◆◇
その翌日、僕とシオンの病室に妖狐衆の全員が集まり情報共有が行われた。
「なるほどな……やはりあの男は黒だった……」
「それに巣流を狙ってた奴との同盟もあったなんて……敵は想像以上に分厚そうですね」
リンさんが確かめるように言う。
「ですが幸い、そのラーテルが巣流を狙うことは無さそうです。私達が彼らから離れればあの剣士しか巣流を狙いません」
「それはそうだが……龍樹が取り逃すほどの隠遁の使い手、並の護衛には任せられんぞ」
「確かに……」
病室に重い空気が流れる。
「……いや、護衛は俺たちがやろう」
その時、お頭がそう言った。
『え?』
全員が意外だと言わんばかりの表情になる。
「お頭……それは何故ですか?」
百合さんが首を傾げる。
「ずっと引っ掛かってたんだがな……リンがマムシに襲われてからもう2ヶ月近く経つ。それなのに俺達が襲撃を受けたのはあれ以来昨日が初めてだ」
(確かに、言われてみれば……)
奴らの目的は僕たちの腕だと言った。腕そのものが目的なのか腕にある何かが目的なのか分からない。
しかしあの戦争が終わって皆無防備な状態で外にいることも少なくなかった、それなのに奴らは襲ってこなかったのだ。
「俺の推察だが、奴らは俺たちとの交戦を避けているんじゃないか? マムシが殺され、奴らにも俺達より優先すべき何かがあるのかもしれない」
「そういえば! コブラが死ぬ直前、マムシの存在がまるでイレギュラーかのように言ってました!」
「なるほど……今回はやむなく交戦しましたが、本来は避けていたと?」
「それが正しければ祭り中は安全そうですね」
そうして僕達は一度解散した。
◆◇◆◇
一方その頃、二番地区のとある空き家では……。
「佐賀ぁ……俺は言ったはずだ、妖狐衆との交戦は避けると。何故交戦した!」
そう言うのは憤怒の色に染まったコブラ。その目の前には煙草を蒸すラーテルの姿があった。
「奴らがついてきたからやったまで。ここがバレるより100倍マシだろ?」
「貴様なら撒くこともできたはず! なのに何故交戦したかと聞いているのだ!」
「うるせぇ、それ以上喋るな……叩き潰すぞ」
その瞬間、ラーテルの目の色が変わり殺意がむき出しになる。
「やってみろよクソ野郎」
コブラも対抗して圧が増していく……次の刹那、蛇川が2人を静止する。
「お二人ともぉ。喧嘩はやめましょうよぉ……」
その言葉に部屋の空気が少しばかり軽くなる。
「次からは俺に従え」
「命令によるな」
そうして険悪な空気でその場は収まった。
そしてこの裏で蠢く影が、僕達の喉元に飛び掛かろうとしていた……。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は八百屋の店主改めラーテルとの戦い! そして祭りを巻き込むこの戦いは完全にあの剣士一派との一対一になりました。どうなることやら……。
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