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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
大躍祭
56/65

招かれざる客

 ここは深淵アビス連合アジト。そこは今一触即発の空気で埋め尽くされていた。


(クソッ……今撃ち合って勝てるのか?)

 俺の目の前には深淵アビス連合の長3人、阿久比、美麗、巣流が既に臨戦体制に入っている。

 対してこっちもシオンと沢田さん、俺も得物を抜いている状態。

 次の瞬間!


「シュッ!」

 巣流が音もなく苦無を投げる! その苦無は一直線に沢田さんの眉間を狙う!


「チッ!」

 だがそれをシオンが間一髪で弾いた! だが流れるように美麗が鉛玉を放つ!


「シオン!」

 俺はサイドステップで躱しつつ引き金を引く!


「当たるわけないじゃない」

 だが美麗は顔を少し逸らすだけでそれを易々と躱した。

 そして俺たちは物陰に隠れる。


「クソが! なんで交渉のはずがドンパチになってんだよ!」

 俺は文句を垂れながらも脳を回転させる。


(チクショウ、交渉のつもりだったから二式戦闘服だし弾は少ないし煙玉もない。沢田さんもあの感じチャカなさそうだしなぁ……シオンは言わずもがなだし)

 俺は超速で脳を回転させ様々な手を考える。そして一つの答えを導き出した!


「沢田さん!」

 その瞬間、俺は沢田さんにチャカを投げ渡す! 


「これであそこを!」

 俺の意思が通じたのか沢田さんが頷く。次の刹那!


「おっしゃぁぁあ!!」

 俺は物陰から飛び出し、爆発的な踏み込みで前に出る!


「何を……」

 それを見た美麗と巣流は一瞬固まる。理由は単純。奴らからもチャカを投げ渡したところは見えていた。そして奴らは苦無とチャカを構えている。

 だからこそ俺が遠距離を捨てて奴らに正面から突っ込むことは予想もしていなかったのだ。


(何か策が? いや、だとしても撃ち殺す!)

 だが美麗が引き金を引こうとする……その次の瞬間!


(なっ!)

 なんと辺りが一瞬で暗闇に包まれた!


(あの野郎、ブレーカーを撃ちやがった!)

 そう、俺が沢田さんにチャカを渡して頼んだこと、それはこの暗闇を作ることだ!


(闇討ちを狙う気か!)

 巣流も美麗も俺を近づけまいと周りに弾や苦無をばら撒く! でも、それじゃあ無理なんだよ。


「みいつけた……」

 その刹那、俺は既に巣流の背後にいた。


「チッ!」

(あのクソガキ!)

 美麗がチャカを向けるが俺は冷静に巣流の後ろに隠れる。そして同時に奴の首筋に刀を押し当てた。


「動くなよ。動くんならこいつの首刎ねんぞ。一応教主様らしいからな」

 俺は冷たい声で美麗を睨みつけながら言う。


「ぐっ……!」

 そして美麗はゆっくりとチャカを下ろした。


「先にキレておいてあれだけど、話し合いをしたいだけなんだ」

 俺は諭すように言った。するとずっと座っていた阿久比が立ち上がる。


「……分かった。話くれぇなら聞いてやる。だから放せ」


 俺は沢田さんの方を一瞥した後、ゆっくりと後ろに下がった。


「んで、なんで祭りを止めるか……だっけ?」


 阿久比が話を戻した。


「理由って言われても……まぁ安全のためだ」


「安全?」


 僕はその言葉を理解できない。急に馬鹿になったわけじゃない、コイツらが安全のために祭りを中止させる。それが理解できないのだ。


「あぁ、これを見ろ」


 そう言って奴が取り出したのは大量の写真。


(写真? しかもこんなに……)

 写真自体この時代珍しいが僕は沢田さんと一緒にその写真を見る。


「なっ……」「なんだこれ」


 だがそこに写っていたのは、整然と並べられた生首と壁に書かれた「巣流を出せ」の文字。


(しかもこれただのペンキとかじゃない……たぶん、血だ)

 僕が戦慄していると阿久比が続ける。


「1ヶ月位前から哭星会の人間が30人近く行方不明になってる。そして4日前にこれが送られてきた」


「犯人に目星は?」


「ついてない。怪しいところも当たったが全部ダメだ」


 僕はもう一度写真を手に取る。すると僕の心を一瞬、謎の違和感が撫でた。


(なんだ?)

 僕はまた写真を凝視する……その時、ようやくその違和感の正体がわかった。


「シオン……これ、どこかわかる?」


 僕はシオンに写真を渡して尋ねる。


「どこって言われても……こんな壁と生首だけじゃ場所なんて……って」


 その時、シオンが目を見開いた。


「ここ……って、」


 シオンが信じられないと言う顔で僕の方を見た。


「んで、そこってどこなんだよ」


 阿久比が僕たちを急かす。


「ここは……二番地区にある、八百屋の壁です」


 そう、僕たちが驚いている理由。それは戦争が始まる前、バレないように買い物をした八百屋。そこがこの写真の場所だったからだ。


「はぁ? 八百屋ぁ?」


 阿久比が呆れたような顔で僕たちを睨む。美麗も巣流も、沢田さんだってそんなこと信じていなかった。


「信じられないのはわかります。ですが、確かにここは八百屋の壁です。理由は……ここ」


 僕はそう言いながら写真の右上、そこの端っこを指差す。


「ここにうっすらと札が見えるんです」


「ん〜〜?」「ほんとね……」「確かに見えなくもないが……」


「ここの札、八百屋にも同じ形のものが貼られているんです」


「でもそんなんどっかの路地裏かもしれんだろ」


 沢田さんがそう言って皆が頷く。


「確かにそうですがなんとなく……そう思うんです」


 僕はそれしか言えなかった。確かに札はどこにでもある形だ。でもここが八百屋だと言う可能性を信じるべきだと感じた。


「……わかった。それを信じよう」


 すると沢田さんが口を開き、そう言ってくれた。


「なんでだよ」


 阿久比はまだ納得していない。


「とりあえず状況は分かった。ここで結論を出せる問題じゃないな……」


 沢田さんが確認すると全員が頷く。


「じゃあ、会合の場を用意しよう。大丸殿、久世殿、私。そしてそっちの幹部9人とこちらの護衛、合わせて15〜16人で改めて話し合うのはどうだ?」


「まぁ……良いだろう。だがやるなら巣流の護衛と犯人の特定は絶対条件。それは伝えとけ」


「分かった。日時と場所は後日」


「分かった」


 そうして僕たちは深淵アビス連合のアジトを後にした。


「青山。この状況をお頭達に報告。それに舎弟衆をすぐに動かせるようにしておけ」


「承知しました!」


 それを受け取った青山は一足先にアジトに向かって走り出した。


(あの八百屋で写真が撮られた……そして巣流の「神の技」……嫌な予感がする)

 そうして僕たちは足早にアジトは帰還した。


 ◆◇◆◇


 それと同じ頃、二番地区のとある空き家。


「こんなもんでいいかなぁ?」


 そこに真っ黒な服で身を包んだ男が1人、生首を並べていた。


「なんだぁ? お前そんな事やってんのか」


 そこに大柄の男が入ってくる。


「あぁ、佐賀さん……お店は良いんですかぁ?」


「別に良いんだよ。テメェこそ弱くなってねぇか? 蛇川」


 そう、この男は……龍樹との戦闘以来姿を見せていなかった蛇川だ。


「別にぃ、逆により強くなりましたよ」


 そうして2人が話していると奥の部屋から謎の男が出てくる。


「うるさいのぉ……こっちは起きたばっかだってのに」


 そう言って出てきたおどろおどろしい雰囲気の男。


「あぁ目覚めたか、コブラ」


 それはなんと……龍樹に殺されたかと思っていたコブラだったのだ。


「佐賀も来ていたか……あとはマムシだが……」


「マムシさんは死にましたよぉ。狐の女に殺されましたぁ」


「そうか……焦ったのだな」


「元々、勝手に出しゃばって来た奴だろ? こっちとしては戦力に変わりはない」


 マムシの死、それを聞いても全員の顔は全く変わらない。


「どうするのだ? アイツら呼ぶか?」


 佐賀がコブラに聞くがその答えはNOだった。


「まだ早い。できるだけライテイとの戦闘まで取っておきたいからな」


深淵アビス連合には布石を打っておきました」


「なら待機じゃ……奴らがどう動くか、ゆるりと待とう」


 その言葉を聞いた蛇川と佐賀が頷く。



 そうしてこの世界に招かれざる客が来ようとしていた。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回はなんとか深淵アビス連合との交渉が終わり蛇川とコブラの再登場となりました!

徐々に読まれるようになって嬉しい限りです。

それではコメントや感想、評価などしていただけると嬉しいです。

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