交渉
ここは武闘派白蓮組の目の前、そこでは今まさに戦いが始まろうとしていた。
「さっさと死ねよ」「ぶっ殺す!」
半グレ、深淵連合の構成員らしき男達が沢田さんと合流した僕達の前に立ちはだかったのだ。
「沢田さん。殺しても構いませんよね?」「あぁ、やってくれ」
俺たちはそれぞれ得物を抜く。互いの殺気がぶつかった瞬間、
「キシャァァァァァア!!」
男の1人がシオンめがけて突っ込む!
「喰らうわけないでしょ……」
だがシオンは奴のナイフを躱し、奴のナイフに小太刀を重ねる!
(確かこんな感じだよね……)
すると奴のナイフを不気味な圧力が襲う!
(な、なんだ?)
男がナイフを引き抜こうとした瞬間、男の動きが止まる。
(あれは、まさか)
僕はシオンのやった技に見覚えがあった。
「重心取り!」
そう、シオンがやったのはまさかの烏の技、「重心取り」だ。過去にシオンは2度、奴の技を受けている。
だがそれだけでコピーできるなんて正気の沙汰じゃない。
(まさか……ずっと訓練場にいたのってこれを完成させるため?)
俺の思いをよそにシオンがそのまま奴に切り掛かる!
「クソッ!」
(動けねぇっ!)
もはや死は避けられなかった。
「あの世に行ってろ」
そして必殺の袈裟を落とした!
「がはぁぁぁぁぁあ!!」
それは首から脇腹までを深く抉る一撃。奴はそのまま力無く倒れた。
(本当にできるなんて……)
俺が感心しているともう2人も突っ込んでくる!
「右回ってくたばれぇぇぇえ!」「予定調和を崩すなぁぁぁあ!」
1人はナタを、もう1人は直刀を持って俺たちを殺しにくる!
「沢田さん! 1人はお願いします!」
「よっしゃぁぁあ!!」
そしてそれぞれが攻撃を受け止める!
「オラァァア!」
「ハァァァア!」
ナタの攻撃が想像以上に重く叩きつけられる!
(クソ! めんどくせぇなぁ!)
その瞬間、奴が勝負に出る!
「右回りぃぃぃぃいい!!」
なんと強引に回転しながら連続攻撃を仕掛ける!
「うおぉぉお⁈」
俺は一瞬でバックステップを踏み距離を取る!
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
だがあいつも気持ち悪い笑い声を上げながら粘着してくる!
(クソが! 使いたくなかったんだけどなぁ!)
その瞬間、俺は立ち止まり、奴のナタを正面から受ける!
「ハァァアア!」
「ギギギギギ!!」
真っ向勝負をしていた時、俺は秘策を取り出す!
(妖陣、幻刃・挟!!)
その瞬間、モヤのかかったような刃が現れ奴を挟むように切り掛かる!
「なぁぁにぃぃい⁈」
奴は急に現れた気配に反応できずその刃に切られる!
「ぎゃぁぁぁあ!! ……あ?」
だが刃は奴の体を通り抜けた。完全に死を覚悟した奴に困惑が襲いかかる。
「取った!」
俺はその隙を見逃さない。奴が困惑しているその刹那、俺は奴の胸を深々と切り裂いた!
「おっしゃぁぁぁあ!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁあ!!」
骨まで断ち切ったその一撃で奴は物言わぬ死体となった。
◆◇◆◇
「はぁぁぁぁあ!!」
「予定崩壊予定崩壊予定崩壊予定崩壊!!」
その時、沢田さんと最後の1人が一進一退の攻防を繰り広げていた!
(巧みだな……的確な攻撃で隙がない。だが!)
その時、沢田さんがより一層踏み込んだ!
「俺に勝てるわけねぇだろ!」
その速度はまさに爆発!
「シャァァァァァアア!!」
だが男がカウンターで突きを放つ! タイミングは完璧……だが、それは通じなかった。
「シュッ!」
なんと沢田さんは本来回避不可能な突きを容易く掴んだのだ!
「ぐっ……ぎぎ!」
奴はなんとか直刀を引き抜こうとするがびくともしない。
「もういいか?」
その瞬間、沢田さんの握力で直刀が折れた。そしてそのまま、流れるようにカウンターが飛ぶ!
「くたばれやぁぁぁぁあ!!」
「がはぁぁぁぁあ!!」
沢田さんのナイフは奴の喉を深々と抉った。
こうして僕達は襲撃者を亡き者とした。
「ふぅ、行こうか」
沢田さんはナイフを拭いてそう言った。
「死体は?」
僕が不思議に思い、そう聞くと
「うちの若いもんがやる」
その言葉とほぼ同時に白蓮組の敷地内から回収係と思われる人達が来て死体を片付け始めた。
(へぇ〜、便利だな)
こんな事を言うのもあれだが二、三ヶ月前は死体を前に吐きそうになっていたのに今や死体の処理現場を見て感心してしまっている。
(僕もここに染まったのかな)
そんなふうに思いながら沢田さんと共に深淵連合のアジトに向かい始めた。
◆◇◆◇
「……ここ、ですか」
「あぁ、深淵連合のアジトだ」
僕達の目の前には巨大な建物、三番地区は元々軍の基地があった場所であり今もコンクリート製の建物が多く存在するエリアだ。
「開けるぞ」
そう言って沢田さんがゆっくりと扉を押し開ける。不気味に軋む扉の先には、3人の男女がいた。
「よぉ沢田。よく来たなぁ、歓迎するぜ」
そう言って不敵な笑みを浮かべるのは赤髪の筋肉質な男。この件の中心となっている者、阿久比だ。
(両隣にいるのは美麗と巣流か……って、アイツら!)
僕はその2人を見て思わず息を呑む。そこにいたのはあの定例会合の時にいた奴らだったのだ。
(あの雰囲気から普通じゃねぇとは思っていたけど……)
僕は戦慄した。あの場で僕はおそらく1番弱かった。目の前にいた佐々木組の護衛だけで精一杯だったのだ。なのにあの場にはそれすらも軽く凌駕する恐ろしい存在がいたことに気付きもしなかった……。
(下手をすればあの時に僕は……)
もしもの事を考えると、とても汗をかかずにはいられなかった。
「んで要件ってなんだ? こっちも忙しいんだ」
阿久比はふんぞり返ったような姿勢でそう言った今までの組織では当たり前のようにあった気遣い。それがここでは微塵もないのだ。
「……単刀直入に言おう。なぜ祭りを止めたがる?」
だが沢田さんは堂々と奴を見据えて言い放った。
実はこの沢田さんは次期白蓮組組長を背負うと言われている。今の白蓮組長は難病にかかっており先は長くないそうだ。
そのため今ほとんどの運営は沢田さんが握っている。そんな人が放つ圧はまた違った色味を持つものだった。
「なぜ……か。そうだなぁ」
阿久比は考えるように上を見上げたと思ったら邪悪な顔をして、
「気にいらねぇからに決まってんだろ!」
そしてこんな事を言い放ったのだ。
「「!!」」
僕達は予想だにしなかった返答に驚きを隠せない。
「……気に入らねぇ……か。灯篭祭はこの街に活気を持たせ、結束を強める大切な行事だ。それをそれで片付けるねぇ……舐めてんのか?」
その瞬間、沢田さんの怒りが一気にマックスまで跳ね上がる!
だが阿久比はそれすらも鼻で笑い、
「そんな腐ったもんなんてジジババしかやんねぇんだよ! 時代見ようぜぇ?」
なんと挑発するようにそう言い放ったのだ!
その時、沢田さんの堪忍袋の緒が切れた!
「テメェ!!」
その瞬間、シオンは飛び出そうとする沢田さんの前に出て小太刀を抜き、僕はチャカを抜いて奴らに向ける!
その先の奴らは、なんともう既に得物を構えているのだ。
(速い……)
その瞬間にこの場所の空気が針のような鋭さを帯びる……。
そうしてこの交渉は予想だにできない結果を迎える。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は戦闘と交渉の二つを書けて嬉しいです。これから一体どうなるのか! お気長にお待ちいただけると嬉しいです。
またコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。




