新たな仲間
ここは安子おばあちゃんの店。僕はそこで目が覚める。
「ん、うーん……」
目の前にあるのは……お店の天井。どうやら宴会の後そのまま寝てしまったようだ。あたりを見渡してみると机や椅子があちこちに転がっている。ふと外に目をやればすでに日は昇っているようだった。
(起きないと……)
そう思って体を起こそうとした時僕のお腹のほうから声が聞こえる。
「んん……」
そこを見るとなんとシオンが僕の体に覆いかぶさっているのだ。
(え、ちょっ! なんで?)
僕は頭がこんがらがりそうになる。だってそうだろ? 宴会の後そのまま雑魚寝してたら自分の上に異性が覆いかぶさってるんだから。
(とにかくどいてもらわないと……)
僕はそう思いながらそっとシオンを起こした。
「シオン、シオン。朝だよ」
「んん……後4時間……」
「寝すぎだろ、早く起きて!」
そう言って僕はシオンの体を揺らした。するとシオンがようやく目を覚ます。
「あぁヨウタ。おはよ……」
「おう、おはよ……」
シオンが僕の顔をじっと見つめる。
「なんでどかないの? 邪魔なんだけど」
そしてなんと二言目にこんなことを言い放ったのだ。
「いやそっちのほうが邪魔だよ。シオンがいるから動けないの!」
シオンはそれを聞いた後もう一度僕を見つめ目線を下に下げた。すると状況をようやく理解したのか小声で
「……サイテー……」
と言ってしぶしぶ僕の上からどいた。すると後ろから声が聞こえる。
「ヨウタ、なにしてんだ?」
「うわぁぁぁぁあ⁈」
僕は不意打ちの声に驚き高速で逃げる。声の主は龍樹さんだ。
「おいおい、逃げるこたぁねぇだろ? それより……ここで決心するとは大胆だな」
龍樹さんは僕の顔を見ながらバカにするように言った。
「そ、そそ、そんな事あるわけ無いじゃないですか! 起きたらシオンが上にいたんです!」
(何を言ってるんだこの人は……)
僕は龍樹さんの言葉をキッパリと否定するが何故か若干頬が赤くなってる気がする。
「へぇ〜〜?」
龍樹さんはそう言うがその顔はまだニヤついている。
「ん~~……」「おはようございます……」「んん……むにゃ……」
すると僕たちの声のせいなのか他の皆も徐々に起きてきた。
「おはようございます」
僕は軽く挨拶をした後に散らかっている部屋を掃除し始めた。椅子や机を整理してコップやお皿を片付ける。
そして程なくして片付けが終わり、皆で最後に安子おばあちゃんと拓郎さんにお礼をしてアジトに戻った。
「まさかあそこで夜を明かすなんて……」「まぁ戦争も終わったんですから少しは良いでしょ」
そうして皆で笑いながら帰っていると後ろを歩いていた青山達が前に出る。
(な、なんだなんだ?)
突然のことに僕たちは呆気に取られる。そして奴らが僕たちを睨みつけた。
(もしかして、反乱⁈)
いつもとは違う雰囲気に僕はただならぬ危機感を覚える。そしてゆっくりとナイフに手をかけた瞬間、奴らが動き出す!
(来るか!!)
俺はそれとほぼ同時にナイフを抜く! そして攻撃を警戒するが……なんと全くの予想外が起こる。
(……え?)
奴らがとった行動、それは土下座だ。いや、厳密にはその場に膝をついて僕たちを見上げた。
「……」「……」「……?」「……?」「……」
僕たちは互いの目を見合わせるが誰もこれの意味を知らない。
すると先頭にいた青山が口を開く。
「皆様、お気持ちが良くそれを害することは承知の上です。その上でお聞き願いたい!」
『……』
全員の緊張が少しばかり高まる。
そして次の瞬間、青山が放ったのは衝撃の一言。
「我々! 元魔素苦メンバー総勢20名は妖狐衆への入門を希望いたします!」
((((((……は?))))))
その瞬間、全員の心の声が重なった。
「ヨウタ殿と百合殿に我々の強者5名が敗北し、それ以降皆様の傘下として働いておりましたが、皆様のその強さと志に惚れたのでございます!」
だが青山がそれを言い切った時、シオンを始めとした女性陣が口を開く。
「ごめん、恋愛対象として見れない」「私も……すいません」「ええと……ご、ごめんなさい……」
「そっちの意味じゃないっすよ!!」
どうやら集団告白か何かと勘違いしたようだが流石にそんな勘違いは青山達もツッコまざるをえなかった。
(何故か後ろの3人くらいが悔しそうな顔をしているが……それは後で聞くとしよう)
そんなやり取りがあった後お頭が前に出て口を開く。
「お前達の思いはわかった。確かに十分な実力もあるし今は人手が足りないからな……」
「で、では!」
青山が目を輝かせた瞬間、
「しかし、それでも認められない」
お頭は冷たくそう言い放った。
「……」
奴らは困惑の表情を浮かべている。
「なぜ……何故なのですか?」
下を向き、悔しさが滲んだ声で青山が聞いた。
「何故……か。率直に言や俺たちの悲願のためだ。その悲願を達成するには同志以外連れてはいけない」
そしてゆっくりと伝える。僕達の悲願、それは僕たちを改造した奴らを追い詰める事だ。しかしそのためには少なくともマムシ以上の戦闘者と戦い、勝利しなければいけない。
どれだけ奴らが戦闘に出ないと言っても敵はそんな事お構いなしに殺しにくる。
(何よりこいつらを……僕たちの都合で復讐に巻き込むわけにはいかない)
僕をはじめとした妖狐衆の面々は今までこいつらと長く関わったが故に、こいつらの優しさを知っている。
(そんなの……ダメに決まってるだろ……)
僕はそう思いこいつらとの別れを覚悟した時、青山が顔を上げた。
「分かりました。皆様には並々ならぬ事情があるのでしょう……そしてきっとその悲願に関わることは我らでなくとも難きことかと思います……」
「うむ……」
お頭が辛い顔をしながらもそう答える。
「……ですが、それでも尚我々は諦めませぬ!」
(え、なんて?)
予想の斜め上をいく返答に僕は驚愕する。そしてそのまま青山が続ける。
「私達は元来、ただの半グレでした。自分より弱い者を貶め、嬲り、気に入らなければ殺す。そんな毎日でした。ですがそんな外道の毎日を皆さんが叩き直してくれました。皆さんの強さに触れるたび、皆さんに何かを教わるたびに自分がまともになっているように思えてくるんです……こんな経験は後にも先にもありません」
青山はそう毅然と語っていった。まるで、一言一言に全員の想いがこもっているのではと思うほどに。
「私達はそれほどの恩があります。なのにそれを返さぬは一生の後悔となりましょう。ならば、せめてこの命、恩返しのために使わせていただきたい! 私達を、その道にご一緒させて下さい!!」
青山は訴えるように、されど覇気のある声で自分達の思いをもう一度お頭にぶつけた。
「……」
お頭はその言葉に何か思うところがあるようだ……。
そして、一つの決断を下す。
「……分かった。認めよう」
(え?)
僕はその言葉に驚くが次の瞬間、それを掻き消すほどの大歓声が鼓膜を揺らした。
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
元魔素苦メンバーの20人は世界の終わりを回避できたかのような喜びを前面に押し出し互いに肩を抱き合っていた。
「ただし!!」
だがそんな喜びの中お頭の声が空気を震わせる。
「あくまでもお前達は傘下の組織だ。入門は認めないし必要があれば容赦なく切り捨てる……それでもいい奴らは、死ぬ気でついて来い」
そして奴らを押し除けて1人アジトへと歩き始めた。
『……。よろしくお願いいたします!!』
そして魔素苦メンバーが一斉に頭を下げた。これによって魔素苦は正式に妖狐衆の傘下となり僕達は新たな仲間を得たのだった。
そしてこの先、僕達は更なる修羅の道を歩む事になる。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は魔素苦の正式な加入を描いてみました。今回から新しい章が始まるので今までとはまた違った作品をお楽しみください。
それではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。




