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妖狐佐々木戦争 その後

「う……ん。あ?」


 知らない天井。アジトでもましてや前の家でもない。


(なんなんだ?)

 僕が体を起こそうとした瞬間、全身に激痛が走る。


「ぐっ!」


 その時、隣からよく知っている声が聞こえる。


「ヨウタ……起きたの?」


「あれ、シオン?」


 何とか隣を向くと全身包帯で巻かれたシオンの姿があった。


「ここ、どこ?」


 何となく察しはついていたが一応聞いてみる。


「後藤さんのとこのベッド。たぶん運ばれたんじゃない?」


(やっぱり……)

 予想は見事に的中した。その時、誰かが部屋に入ってくる。


「お、やっと起きたか!」


 その声の主は龍樹さんだ。それに続いて百合さん、リンさんも入ってくる。皆の話では、僕は淺間と戦闘し勝利した後、頭を打ったのが良くなかったらしくそのまま気絶したらしい。

 それを近くにいた青山が発見し、ここに運び込んだというのだ。

 その時、僕はとある違和感を覚える。


「あの……青山達は?」


 そう、件の青山達、魔素苦メンバーの姿が見当たらないのだ。


「あー、青山達なら外で手当を受けてから死体の処理に向かったぞ」


「そうなんですか」


 そうして話しているとこの人が入ってくる。


「おう、目覚めたか? ヨウタ、シオン」


「お、お頭!」


 そう、お頭だ。その姿を見た瞬間、全員が真剣な顔になる。


「よし。この1か月以上に渡る佐々木組との戦争だが……喜べ! 俺たちの勝ちだ!!」


「い……」「い、」


『いよっしゃぁぁぁぁぁぁああ!!』


 それを聞いた瞬間室内に皆の歓声が響き渡る! 僕もシオンも声を出せない代わりに満面の笑みを浮かべる。


「皆よくやったな! もう終わりだ!」


 そうしてお祭り騒ぎ状態になっていると一つの怒号が響き渡る。


「やめんかぁぁぁあ! 怪我人がおるやろがぁぁぁあ!!」


 その声の主は後藤さんだ。こんな事を言うのも失礼かもしれないがお年に見合わないほどの気迫だ。

 そして全員が静かになった後、彼が咳払いをして続ける。


「大丸さん。あの3人、終わったで。急にこんなに運び込んで……大変やったわ」


 後藤さんがそう言うとお頭と百合さんが少し安堵したような顔を浮かべる。


「あぁ後藤さんそれはすいません。それで彼らはどこに?」


「奥の部屋や。見てきたらええ」


 そう言って後藤さんは扉を指差した。


「そうですか、お前らも来るか?」


 その時、お頭がそう言ったのだ。


「え? 良いんですか?」


 それを聞いた百合さんはついて行き、僕もせっかくなので百合さんに支えられながら連れて行ってもらう事にした(シオンは行きたがってたけど体が動かせないから留守番)。

 だが一つ気になるのはこの先にいる「誰か」。その正体を知っているのはこの2人と後藤さんだけなようだ。


(誰が居るんだろう……)

 そんな風に考えながら歩いて行くととある部屋の前で立ち止まった。


「ここやで」


 そう言って後藤さんが開けた扉の先には衝撃の人物がいた。


「あぁ、大丸殿か……」「狐の槍使い! そのような顔だったのか!」「良いベッドだ……組のソファよりも寝れる……」


「な……」


 なんとその中にいたのは、血の滲んだ包帯を巻かれた唐獅子、淺間、梶野の3人だった。


「……はぁぁぁぁぁぁあああ⁈」


 僕は衝撃的すぎて怪我のことも忘れて大声を出してしまった。


「どうした? ヨウタ……って」「すごい声だったけど……は?」


 それを見た2人の目が点になる。だがそんな事お構いなしにお頭は奴らに話しかけた。


「お前ら、傷の具合は?」


「これしき、わしには擦り傷も同じ」「腹が減った! 飯はまだか!」「まだ体が痛い……不思議だ」


 それぞれの返答は様々だが……淺間以外まともに会話できなさそうなのがよく分かった。


「おい、ヨウタ説明してくれ。なんでここに3人もいるんだ?」


「僕だって分かりませんよ……」


 もう何がなんだか分からなくなっていると百合さんが説明してくれる。


「実は……私が唐獅子を倒した後、トドメを刺そうとしたのですが刺せなかったんです」


 百合さんが語るには僕が裏百合さんと呼ぶ存在は百合さんにも制御は出来ておらず、百合さんがトドメを刺そうとした時に「やめろ」と伝えたそうだ。


「だからここに連れてきたんです」


 百合さんは少しばかり恥ずかしそうにそう言った。

 それを聞いていたお頭も説明を始める。


「梶野は……俺が佐々木を殺して帰る時にずっと食いかかってきたんだ」



 俺は最初に奴を投げて壁に叩きつけた。決して弱い力じゃなかったはずだ。それでも……奴は立ち上がった。


「まだまだじゃあ……親を殺されて、黙ってられるかぁ!!」

 そして奴がドスを握りしめて突進する!


(おいおい冗談だろ?)

 そしてドスが俺の腹に食らいついた! だが弾が効かないのにドスが突き刺さる訳もない。


「どけよ!」

 そして俺の横蹴りが奴に突き刺さる!


「ぐぅぅぅう!!」

 奴の肋は砕かれ、激しく吐血する。


「クソガァァァァァアア!!」

 しかしそれでも奴は再び俺に突っ込み、ただガムシャラに殴り続けた。殴り、蹴るたびに奴の体からは鮮血が舞い組長室が血で染められていった。


「邪魔だ」

 だがそんな抵抗は意味をなさない。俺は奴を気絶させるつもりで拳を腹に打ち込んだ


「カヒュ……!」

 それが打ち抜いたのは鳩尾、そのまま奴は崩れ落ちた。


(やっと終わったか……)

 俺はは奴を一瞥した後、静かに歩き始めたがその足を掴むものがあった。


(コイツ……なぜ……)

 なんと……梶野は意識が無くなっても尚俺の足を掴んでいた。


(完全に常軌を逸している……)

 俺はその手を無碍に引き離すことはできなかった。


(しょうがねぇな……)

 そうして俺は奴を担いでここに運んできた。



「だが中々壮絶だったからな。怪我の影響もあって今は正気じゃない」


 お頭はそう言い終わるとどこからか取り出したお菓子を口に放り込んだ。


(そんなことが……)

「じゃあ淺間も?」


 僕がそう聞くと淺間がゆっくりと答える。


「あぁそうだ。わしも自害すら出来ずにもがいていたのを大丸殿に見つけられて若頭カシラと一緒にここに来た」


「なるほど……」


 なんと言えば良いか……直接見たわけでも無いのに話だけでも「任侠」というものがどんな物なのかがひしひしと伝わってきた。

 気合いや気概という部分で明らかに自分が劣っていると感じたのだ。


「……それで、これからはどうするんだ?」


 沈黙を打ち破り、お頭が淺間にそう聞いた。


「まずはここである程度治療して、その後は残っている奴らを集めて若頭カシラを中心に今後の方針を決めるつもりだ……故に、もう少しの間迷惑をかける……」


 淺間はそう言うと後藤さんに頭を下げた。


「良いってことよ。金さえ間違えなけりゃ居てもろてかまへんで」


 それに後藤さんは笑いながら返した。


「かたじけない……」「話はまとまったか? 俺は飯が食いたい! 焼肉だ!」「粥でいいだろ……」


 そんな感じで一時ながら後藤さんの病院はかなり賑やかになった。

 その後、3日経った時に佐々木組の3人と僕は動けるようになったため退院、その2日後にはシオンも復帰した。

 それから僕たちは方々に今回の戦争でおかけした迷惑などの謝罪にシマ内を走り回った。それから4日後にはお頭が緊急で会合を開き、関連組織にこの戦争の正当性や結果を報告、佐々木組の代表として出席した梶野は佐々木の行ってきたことや依頼された戦争であったことなどをすべて説明し、シマの一部を妖狐衆へ割譲することと事態の収拾がつき次第新たに組長を立てることを報告した。

 もちろん反対意見が無かったわけでは無いが保守派の看板であり後ろ盾でもあった佐々木組が全面的に謝罪したことで保守派からの指摘は無く、革新派からも目立った反対は無かった。


「ではここに妖狐佐々木戦争の終結を宣言いたします」

 仲立ちの久世さん司会の元、お頭と梶野は終戦を知らせる文書に署名し、ついにこの戦争は幕を閉じた。

 そして……僕たちは安子おばあちゃんの店に集まった。


「皆揃ったなぁ? それじゃぁ……戦争の勝利を祝って! かんぱーーーーーーい!!」


『かんぱーーーーーーーい!!』


 そうしてお頭の音頭で盛大な宴が始まった。


「ほらほら! 腕によりをかけて作ったんだ、ぜぇんぶ食べてって!」「ウチのうどんもありまっせ!」


 料理は安子おばあちゃんや拓郎さんが作ってくれた絶品なものばかりだ。

 僕達は久しぶりの豪華な料理に喜び、思う存分楽しんだ。



 そうして僕たちはこの戦争を乗り越えたのだった。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回でようやく……妖狐佐々木戦争が終了いたしました! しかも丁度エピソード50! なんとキリが良いのでしょう。

さて、これによりヨウタ達妖狐衆を取り囲む環境がまた変わり、新たなステージに進むことになりますので引き続き応援していただきますと嬉しいです。

それではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。

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