表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
妖狐衆
5/29

成長と闘い②

訓練でボロボロの体を引きずって何とか二人についていき、着いた先は昨日通った街とは真逆の方向にある定食屋平蔵と書かれた店の前。

「ここは?」

「俺たちが世話になってる定食屋」

そう言いながら大丸さんと百合さんが店へと入っていく、僕も恐る恐る入ってみるとそこには温かな空気があった。

懐かしいようなそんな温かさだ。その時大丸さんが

「安子おばあちゃんいる?」

とかなり大きな声で言った、すると奥から

「はいはい、今行きます」

と元気な声が聞こえて一人の女性が出てきた。

「って嶽久君に百合ちゃんじゃない! 久しぶりね!」

女性は見た感じ70歳に近い感じだが元気がこれでもかと溢れている。すると女性が僕に気づく。

「あら、見ない顔ね。新人君?」

「はい、最近入ってきて。自己紹介して」

「あっはい、亀山ヨウタと言います」

「ヨウタ君ね。安子と申します、よろしくお願いしますね」

互いに自己紹介が済んだところで僕のおなかが大きな音を立てる。その瞬間一気にみんなが笑う。

「そうだなw腹減ってるもんなw」

「いいよ、席に座って。壁にメニュー貼ってるから決まったら教えて!」

「あ! 俺いつもので!」

「私も」

「分かったよ」

そう言って安子おばあちゃんは厨房へ入って行った。

(僕も何か……)

そう思って壁の上の方を見ると壁一面に色んなメニューがびっしりと貼られていた。唐揚げ、カレー、うどんまである。

どれにしようか迷っていると、とあるメニューが目に止まる。

(味噌カツ定食)

なんだか美味しそうな響きだ。

そうすると安子おばあちゃんがお盆を持ってくる。

「はーい、嶽久くんのね」

「よっしゃ!」

そうして出てきたのはデッカいカツ丼、カツも分厚くどんぶりいっぱいにご飯が盛られている。

そして大丸さんは子供みたく目を輝かせて見つめてる。

(早く食べればいいのに……)

そうは思うが注文が先だ。

「あ、あの」

「はい!」

安子おばあちゃんが元気よく答える

「あの、味噌カツ定食一つ」

「あいよ! ご飯の量は?」

少し迷ったが今ならなんでも食べれる気がする。だから……

「大盛りで!」

「分かったよ! 待っててね!」

そして安子おばあちゃんは厨房へ戻った。

それから5分ほど後、百合さんの料理が出てくる。

メニューはナボリタンだ、鉄板に乗って下には卵が敷いてある。大丸さんほど大盛りではないが食べ応えがありそうだ。

そして例の如く目を輝かせる……ほどじゃないが楽しみにしてるのが分かる。

それから15分もすると僕の料理が出てくる。

見てみるとカツはすごいくらいに分厚く、キャベツも山盛り、味噌ダレの匂いが食欲をそそるがビックリしたのはご飯の量だ。

確かに大盛りとは言ったが。これは大盛りというか昔話に出てくるような盛り方してる。そして全員が揃ったところで

「いただきます!!」

大丸さんが号令をかけて食べ始める!まずはカツにかぶりついてみる。すると、めちゃくちゃ美味しい!

柔らかいカツに濃い味噌が絡んでご飯が進む、それはそれはご飯が凄い勢いで進む。

何より運動した後の飯がまずいわけがない!

キャベツもみずみずしく味噌との相性も抜群だ!百合さんもがっつくほどではないがフォークが止まらず動いてる(それでも食べ方はすごい上品だ)

大丸さんは3人の中で一番の勢いで食べている。

きっと楽しみで仕方なかったのだろう。

結果、お腹いっぱいまで食事を楽しんだ。食事をここまで堪能したのは初めてかも知れない。そして大丸さんが立ち上がってお会計をする。そこで僕は自分の失態に気づく。

(財布、忘れた……)

そう、代金を持ってきていないのだ。

(どうしようどうしよう、このままじゃ無銭飲食だ)焦っていると安子おばあちゃんが

「はい、3人で、3000円ね」

「はい、じゃあ丁度で」

「毎度、またきてね」

そうして店を出た。

お金を払わなくてラッキーと思ったが流石に申し訳ないと思い、大丸さんに言う。

「えっと、お代金、ありがとうございます。また払いますので」

「ん? いやお前、給料どころか文無しだろ?」

「あ……」

そうだった、僕は今日から妖狐衆だから小遣いも何もないし急に家出してきたからもちろん家からも持ってきてない。

いつも友達と行く時は決まって自分の分は絶対に払っていた、もちろん貸し借りなんてなかったからそれがいつもになって焦っていたのだ。

「そうでしたね...…すいません」

「良いって、ほら帰ってからまだ訓練続けるぞ」

そしてアジトに帰ると大丸さんが何かを出す。大きさは二メートル弱位で胸、腹、足に三本の棒。

その先にさまざまな武器を付けている。

「こいつが回避・防御訓練用のロボだ! 使い方は簡単、腕のどれか一つに攻撃を当てるとほかの部分も動いて攻撃してくるからそれを避けたり防いだりするだけ」

使い方は何となくわかったが正直、余裕そうだと思っている自分がいる。

「まぁやってみろ」

そう言われてロボの前に立って刀を構える。そして腹にある腕を思いっきり叩く!

(これなら、左!)

そして反対側にガードをする。

甲高い音をあげて武器が衝突する。だが次の攻撃に備えようとすると胸のところにある武器が急加速して向かってくる!

(早い! けど、いける!)

そして反対側にガードを上げると横薙ぎをしていたはずの武器が急に振り下るされたのだ!それには反応できず、体勢が崩れる。

だが追撃は止むことなく足元にある武器が僕のを直撃して見事にひっくり返る。そして頭から叩きつけられる……。

「グエッ!」

情けない声をあげて倒れる。

「ハハッ! まぁ最初は難しいもんな。ほら! もう一回だ!」

「...…はい」

そう言って立ち上がるが受けれて一、二回。

どこからくるかもわからないのにその中で変化をつけてくるのだ、とても受けれたもんじゃない。

回数が10を超えた時に限界が来てその場に倒れ込む。息切れをして這いつくばっていると大丸さんが

「ほら、立て。もう一回だ」

いつも通りの声なのに冷たく聞こえる。もう体力も限界だし身体中あざだらけだ。そして感情的になってしまい、

「じゃあ、大丸さんはこれできるんですか⁈ やってみてくださいよ!!」

と言ってしまう。

「あん?」

瞬時に自分のしてしまったことに気づいて青ざめる。

「あ、あの、いや、違くて……」

頑張って言い訳しようとするが声がうまく出ない。

「そんなんならやってやるよ!」

(へ?)

もうちょっとで声に出そうな程驚く。

てっきり怒られると思っていたからだ。

そうして上に戻って行った。

(何する気だ?)

その時、新たなロボが二体出てきた。僕は頭が真っ白になりかける。

(本当に何をしようとしてるんだ?)

大丸さんはそれを自分の周りに配置して構えをとる。次の瞬間!一回にも思える速さの拳が三回。口ボのそれぞれの腕を叩いて闘いが始まった!口ボはそれぞれの軌道で大丸さんを攻撃する。だがその攻撃を大丸さんは全て弾いたのだ!けれどもロボの猛攻は止まらない。

一瞬最大九撃の攻撃を大丸さんは全て捌いている。 あたりに旋風が巻き起こっているような激しい攻防が繰り広げられる。もはや姿も朧げなほどの速さ、すると大丸さんが静かに

「もうしまいだな」

と呟いた瞬間、大丸さんの回し蹴りが炸裂し一瞬の間でロボの頭部を蹴り抜いて強制的に停止させた。

(す、凄い……)

僕はただ呆然と眺めることしかできなかった。

その時確信する、これが武闘派妖狐衆のお頭なのだと。そして大丸さんがこちらを振り向く。

「ここまでやれとは言わないが、訓練をすればこれに近くはなれる。頑張れよ」

飛んできたのは意外にも励ましの言葉だった。

(僕も、こんな風になりたい)

そんな思いがどこからか湧き出る。

そして大丸さんの言葉に

「はい、頑張ります」

自然に返事が出る。この人にならどこまででもついていけそうだ。

「ってところだが、すまんな。これから当番交代だ」

そう大丸さんが軽そうに言う。

「え?」

考えてみたが単純なことだ。大丸さんだって仕事がある。ずっと僕の相手をできるわけじゃない。

「分かりました」

「話が早くて助かる。すぐに龍樹とリンが来るから休憩しとけよ」

そう言われて僕はその場に座り込む。どんな訓練になるのか楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ