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妖狐佐々木戦争 蜂の一矢

 ここは妖狐衆アジト前の大通り……ではなくそこから100mほど離れた建物の屋根の上。そこでは闇医者から退院して戦線に復帰したリンさんの姿があった。

 だがリンさんのその姿は何かをとてつもなく警戒しているようだった。


(一体どこにいるの? 早く見つけないと……大変なことになる)

 リンさんがそこまで警戒している相手、それは戦いが始まった瞬間、全員が自分の相手に一直線に向かっていく中1人だけ戦場から離れた人物だ。


(あんなの普通じゃない……おそらくどこかから何かを狙っている)

 僕たちは自分の目の前の相手で手一杯。それなのに意識外から狙われれば確実に瓦解する。

 そのためリンさんは周囲の警戒にあたっていたのだ。

 その時、そことはまた別の場所で動く謎の人影があった。


(さて、俺も動くかな……)

 そうして謎の男は背負っていた木箱を下ろし、蓋を開ける。すると中から出てきたのはなんと木製のカラクリ。

 そして男はそれを木箱から出すと、なんとそのカラクリが音を立てて自動で組み立てられた! そして現れたのは巨大な弩。


「さぁて、誰をやろうか……ん?」

 その男が弩を構えて僕たちに狙いを定めようとしたその時、明らかに僕たちから離れた場所に殺気が感じられた。

 その正体は他の誰でもない、リンさんだ。


「なぁるほどね……」

 そして男はリンさんの殺気に向けて弩を構える。


「まずそっちから死のうか」

 奴がそう呟いた瞬間、弩から豪速で矢が放たれる!


(ん? 殺気⁈)

 だがその刹那リンさんの脳が危険信号を出す!


「ッチィ!!」

 リンさんが横に飛び退いた瞬間、轟音と共に巨大な矢が降ってくる! その威力は防壁となっていた屋根すらも吹き飛ばし、跡はまるで砲弾に穿たれたようになっていた。


(一体……なにが)

 リンさんが跡を見に行くとそこにあったのは矢と呼ぶにはかなり太く、長かった。


(飛んできた方角的に東、距離は200……)

 リンさんは矢の軌道と向きから正確に敵の位置を割り出す。その方向には周りより一際高い建物があった。


「ここから狙うのは無理だね。場所を変えないと……」

 そう判断したリンさんは奴のいる方向を警戒しながら狙撃ポイントを変える。


「ありゃりゃ、避けられたか……しかも場所まで知られて……」

 その時、奴は取り出した望遠鏡でリンさんの様子を伺っていた。


(どうするつもりだ? 遠距離でくるのか?)

 しかし奴は結局動かず、弩でリンさんを監視するにとどまった。


(敵がいるとすれば……あそこの屋根の上)

 リンさんは移動しながらもずっと奴の位置を探っていた。


(ならベストは……ここ!)

 その瞬間リンさんが急ブレーキをかけ、それとほぼ同時にライフルの照準を奴のいるであろう場所は合わせる!


(弾丸装填……角度微調整。発射!!)

 そして躊躇いなく1発の弾丸が放たれる! その鉛玉は空気を裂きながら一直線に突き進む!


(なんだぁ?)

 だが奴もそれに気づく。


「ここは危ねぇなぁ!!」

 そして弩を担いで屋根から降りる! 次の刹那! ライフル弾が奴のいた場所に穴を穿った! だが奴の予想外だったのはその弾丸が着弾した瞬間……なんと爆発したのだ!

 それによって飛び散った破片のうち一つが奴の背中に突き刺さる。


「がっ!」

 しかし奴も血を流しながらなんとか身を屈める。


(あの距離からくるか……油断ならねぇな)

 奴は望遠鏡でリンさんを見ながら策を練り始めた。

 だが同じ頃、リンさんもとある疑問を抱えていた。


(あの矢……本当に人間が射たものなの?)

 それは先制攻撃で放たれたあの矢。矢を放つのであれば最初に思い浮かぶのは弓、しかしあの大きさの矢をあの距離飛ばすのはおよそ人間の所業ではない。


(ならば他に何かあるはず……)

 次に思い浮かぶのはボウガンだがそれでも相当な大きさがなければいけない。でも最初にいた奴はそんなの持っていなかった。


(でも敵がどんな武器を扱っていても不思議じゃない)

 リンさんの心に油断の文字は無かった。特に佐々木組はその資金力と長年の統治によってどんな武器でも扱う人間がいればいくらでも作れる。


(なら距離を詰める!)

 奴の武器がボウガンだと仮定すれば大きさは少なくとも人と同じような大きさになるだろう。ならばそれ以外の武器を持っている可能性は低い。

 そう判断してリンさんは距離を詰めた。


「ん? おいおいマジかよ……正気か?」

 だが奴は望遠鏡でリンさんの接近をいち早く察知した!


「なら死ね!」

 その瞬間! 奴が弩に矢を装填し、弦を引いた。そしてあの矢を放つ!


(来た!)

 その瞬間、リンさんが能力を発動した!


真透紫眼しんとうしがん!!)

 次の刹那、リンさんの視界が紫色に染まり、あらゆる情報が脳に流れ込む!


「ここ!」

 そして奴の矢を紙一重で躱した!


(なに⁈)

 だが奴も次々と矢を放つ! それは弩では考えられないほどの早さ。砲弾並みの威力を持つ矢が屋根を破壊しながらリンさんに降り注ぐ!


(集中……矢と矢の間を見極めて突っ切る!)

 しかしリンさんも能力を使いながら奴の矢を回避していく! そしてライフルの引き金に指をかける!


「食らえ!」

 そして巨大な矢の間を縫うように数発の弾丸が突き進む!


(策を練ったようだが、それじゃあ甘ぇ!!)

 その瞬間、奴が持っていた木箱の中にあった紐を引っ張った!

 次の刹那、木箱が変形しなんと大盾へと姿を変える!


「カラクリ使い舐めんなよぉ!!」

 そしてリンさんの弾丸をその盾が受け止めた!


「チッ!!」

(カラクリか……厄介ね)

 それでもリンさんは足を止めずライフルを乱射する! そしてついに奴との距離が50m程にまで縮まった。


(この距離なら矢を避けやすくなる!)

 そう、奴の持っている弩は遠距離からの狙撃ならまだしも近距離ではどうしても装填の時間によって隙が出来てしまう。そのためリンさんは遠距離からの撃ち合いではなくわざわざ距離を詰めたのだ。


(なるほど……ここまでくれば確かにこいつは使えねぇ……でもな)

 その瞬間奴の弩が形を変えた。矢の発射機構が外れ、本体の部分が開いて現れたのはなんと大量の銃口!


(なにっ⁈)

 リンさんが回避行動をとるがすでに遅かった。


「蜂の巣になってろよぉぉぉおお!!」

 そして奴がスイッチを押した瞬間、大量の銃口から数えきれないほどの飛礫つぶてが襲い掛かる!


「ぐぅぅぅうう!!」

 リンさんは無慈悲な弾丸の雨にさらされた。一応ライフルを盾にしてはいたが隠しきれなかった部分は一気に血に塗れる。


(よっしゃ、計算通り!)

 飛礫を食らったことでリンさんの動きが止まる。それを見た奴は外したパーツを掴む。するとなんと弓幹ゆがらのところから薄いムチのような刃が姿を現した。


「コイツで止め刺してやるよ」

 そしてゆっくりと奴が歩み寄る。そしてリンさんの目の前で立ち止まる。


「恨みはねぇが……死んでくれよ!」

 そして奴が刃を振るう!

 しかしその瞬間、奴が動きを止める。


(ん? なんだこりゃ……)

 その視線の先にあるのは円柱形の物体。

 次の瞬間、それが眩い閃光を全方向に放つ!


「ぐあっ!!」

 直前までそれを凝視していた奴はその強烈な光をまともに食らってしまう!


(チャンス!)

 その瞬間! リンさんが動き、凄まじい早撃ちで奴の腹に2発の弾丸を撃ち込んだ!


「ぐぎぃぃぃいい!!」

 奴は目を塞ぎながらバックステップでリンさんと距離を取る。だが同時に奴の脳裏にはとある疑問が浮かんでいた。


(アイツ、なんで動けたんだ? 仮面があるとはいえあの近距離で狙いをつけるなんて尋常じゃねぇ……)

 そう、リンさんの反応だ。いくら目を瞑ったとしてもあの至近距離であそこまで正確な射撃は一流でも難しい。

 しかしその答えは意外なものだった。


(ふぅ、上手く機能してくれてよかった)

 その時リンさんの仮面の目が再び光った。


(あの時壊されて直すついでに光遮断の機能を付けといたんだよね)

 そう、なんとリンさんは自身の装備をアップグレードしていたのだ。

 実は妖狐衆の装備や武器の方面はリンさんが統括しており定期的に僕たちは鎧と武器を預けて、メンテナンスや改良をお願いしているのだ。

 そして今回、それが見事にハマったということだ。


(クソッ、視界がボヤける……戻るまで何分かかるか……)

 奴は自身の状況を理解し、あの刃を強く握る。


(しばらくはやり過ごすしかねぇな……)

 その次の刹那! 奴が腕を振るい、白銀の刃がリンさんに襲い掛かる!


「チッ!」

 リンさんはギリギリで躱しながらチャカを抜き、速射を見せる! しかしそのどれもがアイツには届かない。


(やっぱり素直に撃っちゃ当たんない……)

 その瞬間リンさんが奴の周りを回りながらライフルを乱射する!


「なるほど、厄介だが……そんなんで俺をやれると思うなよ!」

 その瞬間、奴が大盾を持ち上げる。そして最後カラクリが作動した! なんともう何もないと思われていた盾から一本の矢が襲い掛かってきたのだ!


(なにっ⁈)

 それはあまりにも虚を突いた一撃。


「ぐぅぅぅうう!!」

 その矢はリンさんの左肩を正確に貫いた!


(よっしゃ! もらったぜ!!)

 そして奴の刃がまるでうねる大蛇のようにリンさんを仕留めんと襲ってくる! その軌道は完璧にリンさんの首に届きうるものだった。


(殺った……)

 奴がそう確信した……その瞬間!


「がぁぁぁああ!!」

 なんとリンさんがそれを皮一枚で外したのだ!


(ここだぁ!!)

 そしてリンさんのチャカから鉛玉が放たれる! それが穿ったのは奴の脳天。


「がはっ! ……見事……なり……」

 奴は血を吐きながら倒れる瞬間、そう言い残して絶命した。


(勝った……こいつに……)

 その時リンさんも膝をつく。



 そうしてこの戦争最長距離の戦いは幕を下ろした。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回はリンの超遠距離戦で普段よりも長めになっています。さて、2026年も始まったということで今年もよろしくお願いいたします。

それではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。


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