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妖狐佐々木戦争 決戦の始まり

 ここは妖狐衆アジト。今はみんなで総力戦の準備をしながら百合さんの帰りを待っている状態だ。昨日シオンは佐々木組幹部赤坂を撃破し、リンさんは襲撃犯であり能力者と名乗るマムシを葬った。だがその結果、二人とも数日間の入院を言い渡された。

 その後お頭からの指令で佐々木組の妨害のために今日未明、百合さんがアジトを出たのだ。


(大丈夫かな……)

 僕がそう心配している理由。それは裏百合さんの存在だ。

 前の時に確信したが普段の百合さんはまだしも裏百合さんは間違いなく戦闘狂だ。おそらく自分より格下であっても質より量の理論で数を揃え、戦いを楽しむ可能性がある。普段の戦闘ではそれでも良いかもしれないがこのような破壊工作においてそんな事は避けなければいけない。

 そう思いながら煙玉を作っていると、アジトの扉が開いた。


「ただいま戻りました」

 そう言って入ってきたのは、返り血と煤に覆われた百合さんの姿だった。


「お、お帰りなさい……」

 僕はその姿が衝撃でそれしか言えない。


「はい。お頭はどこに?」


「え、えっと……おそらく作戦室かと」


「ありがとうございます」


 そう言って奥に入っていった。


「お頭。ただいま到着いたしました」


「百合、お疲れ様。それで戦果は?」


「はい。敵の前線部隊を破壊し、敵の武器庫も吹き飛ばしました」


「うんうん。よくやってくれ……は?」


 その瞬間お頭の時が止まる。


「テキノブキコヲフキトバシタ?」


「はい。綺麗さっぱり」


「え、火薬全部使って……?」


「はい」


「……はぁぁぁぁあああああ⁈」


 その時お頭の大声がアジト中に響き渡る。


「どうしましたか⁈」「まさか敵襲⁈」


 それを聞きつけた皆が作戦室に押し掛けた。そしてお頭と百合さんから説明されるが……


『はぁぁぁあああ⁈』


 当然こんな反応である。

 まず大前提として確かに佐々木組の侵攻を遅らせるために百合さんが火薬を持たされて使い方も指定されていなかったのは事実だ。でもあの戦争で世界が崩壊したため火薬は自分たちで調合するか数少ない業者から買うことでしか手に入れられない、本来かなり貴重なものなのだ。そのことは百合さんもしっかりと理解している……どころかここの財務はお頭と百合さんの共同管理のため一番理解しているはずなのにバッグいっぱいに入れた火薬を全部使って佐々木組の武器庫を吹っ飛ばすなんて狂ってる。


「ま、まぁ目標は達成したんだもんな……」


 お頭はそう言うとたまたま机の上に置いてあった経理のファイルを無言で棚の奥底にしまった。

 そしてそのまま闇医者に向かいリンさんとシオン、魔素苦のメンバーを加えた全員での作戦会議が行われた。


「まず奴らが武器を再び集めて集まるまでにはおそらく一週間ほどかかる。そしてその間にやっときたいのが二つある。一つ目は奴らの進路限定、そのためにこの後龍樹と魔素苦メンバーで路地を色々なもので埋めて裏から来れないようにしてくれ」


「分かりました」『イエス、サー!!』


(なんかこいつら妙に気合入ってるな……)

 これは後から聞いた話だが実は少し前に奴らが任された仕事をミスしたところを丁度通りかかったお頭に発見され壮絶なヤキを入れられたらしい。結果全員もれなく半殺しにされたこいつらはここまでになったというわけだ。


「それと二つ目だが……当日の布陣を決めたい。おそらく奴らは偵察も全て率いて潰しに来るはずだ。それを相手にするなら策はないとな」


「そうですね……70の敵が来るなら配置や相手くらいは決めても良いでしょうしね」


「そういうことだ。ってところで、誰か因縁がある奴はいるか? いるならやらせてやる」


(なら……)

 その時、僕が口を開く。


「お頭。淺間は、僕にやらせてください」


「ヨウタ……いけるのか?」


「はい!」


 僕が奴にある因縁。それは前の時に奴と闘い、敗北したからだ。そして僕はその時に奴に宣言した、「次に闘る時、必ず勝つ」と。


「なら任せる」


 そしてお頭は僕に淺間と戦う事を許してくれた。

 そして僕と同じように声を上げた人物がいる。


「お頭。なら烏は私が……」


「シオン。なんでだ?」


 シオンの言葉にお頭が聞き返す。


「奴は、以前にアジトを襲撃した柳の兄だと名乗りました。そして私は柳の両脚と片腕を飛ばしています。その点から奴との因縁は十分かと」


 そう、シオンも少なからず敵との因縁があった。


「分かった」


 そして僕と同じようにお頭はシオンも許した。


「他に因縁がある奴は?」


 お頭がもう一度問うが名乗りを上げる者はもういなかった。

 そしてお頭が続ける。


「なら、当日の布陣だが、奴らはおそらく舎弟の奴らが先陣を切る。それに加えて佐々木の野郎はおそらく梶野と一緒に事務所で籠るはずだ」


「ならまずは舎弟共ををやらないとですね」


 僕がそう言いかけたときにお頭が遮る。


「いや、そいつらは俺が引き受けよう。半分くらい吹っ飛ばしたら、俺は佐々木組の事務所に直接向かって奴の首を取る」


 そしてこんなことを言ったのだ。


「え、良いんですか⁈ 一組織の大将が単独で戦争中の敵陣に飛び込むなんて……」


 僕は止めようとするが他の皆は何も言わない。


「良いんだ。俺個人としてもあいつと話したいことがあるからな」


(まぁ……大丈夫なら……)

 僕はそれを聞いた時に何となく納得する。思ってみればこの人が例えこんなことをやっても死ぬようなことは万に一つもない。


「他の当日の相手は運ってことで」


 お頭はそう言って子供っぽく笑い、最終決戦の作戦は決定した。


 その後からは早かった。

 龍樹さんと魔素苦メンバーが仕事を終わらせた後、各々が自身の武器の手入れをしたり当日の作戦や仲間の配置などを想定した組み手を行っていた。



 そして一週間後。

 シマの見張りをしていた百合さんから報告が入る。


「こちら百合。二番地区東方面から30人ほどの集団で移動している影を発見。奴らが来ました」


 それを聴いた瞬間、怪我から復帰したリンさんとシオンを含めた全員に緊張が走る。


「総員。表に出ろ……いよいよだぞ」


 そして全員が壱式戦闘服に身を包みアジトの正面に出る。

 その時、通りや路地の中からまさに湧いて出てくるように佐々木組の構成員が現れた。


(おいおい……ちょっと多すぎないか?)

 僕は目の前を埋め尽くすほどの集団に少し気押される。そしてよく見ると舎弟に紛れて武闘派幹部と伍人組もいる。


「ようやく来やがったか……虫ケラ共が」

 お頭が殺気を放ちながらそう言う。


「んだとぉ?」「年貢の納め時だ……」

 それを聞いた瞬間、奴らが殺意むき出しでナイフを抜く。そしてそれと同時に幹部達も武器を抜く。


「いいか? 奴らが突っ込んできても動くなよ」

 緊張が場を席巻する中、お頭が静かにそう言う。


「分かりました」「承知です」

 そうして少しの静寂が両者の間を通り抜けた後……


「お前らやっちまえぇぇええ!!」

 舎弟の戦闘に立っていた男が叫び、奴らが一気にスタートを切る! そして奴らがナイフを振り上げた瞬間、お頭が手を前に出す。

 その時、小さな稲妻がお頭の手に現れて奴らの目の前に飛んでいった。


「さらばだ」

 その次の瞬間、突如として虚空が爆炎に変わる!


「ぐわぁぁああ!!」「ぎゃぁぁああ!!」

 その威力は炸裂弾なんかとは比べ物にならない。稲妻の近くにいた舎弟10人は丸焦げになり、周りにいた10人も大火傷を負って気絶し、外周にいた20人ほどは爆風で吹き飛ばされた。


「うおっ……」

 僕はその状況に思わず息を呑む。そして一瞬にして仲間の半数をやられた奴らも固まっている。


「じゃあ、俺は向こう行ってるからな」

 お頭がこちらを振り向いてこう言う。


「はい。お気をつけて」

 それに龍樹さんは険しい顔をしながらも送り出した。そしてお頭は瞬きの間に消えた。


「あの野郎どこに⁈」「消えた⁈」

 舎弟達が必死に探そうとした時、それを淺間が止めた。


「お前らのやるべきことはそれじゃねぇだろ……」

 そう言って幹部と伍人組の奴らが前に出る。


「お前ら、雑魚は任せるぞ」

 龍樹さんは魔素苦メンバーにそう言いながら斧を構える。そしてそれに呼応するように僕たちと奴らも得物を構える。


 空気が色濃い殺気と闘気で満たされていく……

 そして、


「行くぞっ!!」「八つ裂きにしてやれ!!」

 龍樹さんと淺間の号令とともに両者が雄叫びを上げながら突っ込む!


「おらぁぁああ!!」


「くたばれ狐ぇぇええ!!」



 そして歓楽街裏社会を震撼させた戦争の決戦が始まった。

さて、いかがでしたでしょうか?

実は私自身がインフルエンザに見事罹ってしまいまして考えていた予定よりもかなり遅くなってしまい申し訳ございません。

さぁ! これからいよいよ妖狐佐々木戦争のクライマックスです! 次回はいつごろ投稿できるかわかりませんが是非楽しみに待っていただけると幸いです。

では、コメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。

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