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妖狐佐々木戦争 陽動

 ここは妖狐衆シマ内のとある場所。そこに見たこともないほどの速さで走る一つの影があった。

 その正体は、龍樹さんだ。程なくして龍樹さんはとある路地の中に入る。


「パイセン! 大丈夫ですか⁈」


 そう言って飛び込んだ先には血塗れで倒れているリンさんと既に事切れた謎の男がいた。


「た、龍樹……さん。か……勝ったよ」


 リンさんはか細い声ながらもそう言った。


「良かったですけど今は喋らないでください!」


 龍樹さんはそう言いながら必死にリンさんの傷口を縛る。だがその時龍樹さんの視界が一瞬歪む。


(なんだ? この感じ……)

 龍樹さんはすぐに周りを見渡すが怪しいものはない。


(とにかく早くしないと……!)

 龍樹さんはそう判断したと同時にリンさんを抱えて、アジトに向かって走り出した。

 そしてアジトにいるお頭に連絡を入れる。


「お頭! 見回り中にリンさんが襲撃されました! 相手は殺れたそうですが、今から闇医者に運びます!」


「リンが⁈ 分かった! 俺もすぐに向かう!」


 その報告は同じようにアジトにいた僕たちにも届き、3人で闇医者のところへ向かう。

 そしてリンさんは闇医者で処置を受け、なんとか一命を取り留めた。


「全く……あんだけ酷い怪我でよく生きてるもんだな」


 処置を終えた闇医者の後藤さんはそう言いながら出てきた。


「後藤さん! パイセンの容体は?」


 龍樹さんが焦りの表情を浮かべながら後藤さんに話しかける。


「まず胸の傷だが直刀でやられたのかかなり乱雑に斬られてたな……まさに叩き斬られたって言い方が正しい傷だった。それと肋骨4本の骨折があったな。だが幸い命に別状はない」


 それを聞いた瞬間、龍樹さんを始めとしたみんなが安堵の表情を浮かべる。そしてリンさんのいる病室にお頭以外の全員が飛び込んだ。

 そこには包帯を巻かれ、ベッドに寝ているリンさんの姿があった。


「リンさん……よくご無事で……」

 僕は張り詰めていた糸が切れたようにその場に座りこんだ。

 その時、リンさんのベッドの奥から何かの気配がする。


(なんだ?)

 僕は不審に思い地下に手をかけながら林さんのベッドも奥にあるカーテンを勢いよく開けた。


「お前は誰だ!」

 その先には、包帯でぐるぐる巻きになっているシオンと上着をかぶって隠れているつもりになっている青山がいた。


(……は?)

 一同の思考が止まる。

 その時後藤さんがお頭にそっと耳打ちする。


「アンタらがここに来る前、ボロボロの状態でここに駆け込んできたんだ。全く……困った人らだよ」


 そう言われるが僕は全く理解できていない。


「……どういうこと?」


 僕は困り顔になりながらシオンに状況を聞く。


「赤坂と戦って勝ったんだけど、その時に仮面壊れちゃって、動けなかったから今こうなってる」


「あ、なるほどね」


 その時、お頭がシオンに近づき腕をまじまじと見る。


「……能力を限界まで使ったな。この反動だと2、3日は動かんだろう」


 そう診断した。気になって覗いてみるとシオンの腕の至る所に内出血の跡ができていた。

 そして少し談笑をした後にお頭がその場で作戦会議を始めた。


「まず、シオン。赤坂の撃破、ご苦労だったな」


「はい。疲れました」


「すまんな。ところで、リン襲撃犯は誰だか分かったか?」


「はい。相手は……自身をマムシと名乗りました」


(マムシ……)

 僕はその名前に聞き覚えがあった。しかも一回ではない……2回だ。


「それって……」


 百合さんがそう言った時、全員が誰か理解した。


「はい。あの時、シーザーが言っていた男、そしてコブラの話していた男でしょう」


 それを聞いた瞬間、その場の空気が凍りついた。

 そしてそのままリンさんが続ける。


「それに加えて……奴は私たちと同じ、能力者でした」


 その言葉に全員の空気が変わる。


「リン……それは確かなんだな?」


 お頭が静かに口を開く。


「はい。奴は自ら、自身を能力者だと名乗り毒性のある煙を吐いていました」


「なるほどな……」

(ここにきて奴らが動き出したか……)


「こうなればこの戦争を悠長に続けてはいられませんね……」


 そう言う百合さんの顔は真剣だ。


「あぁ、次はここから各個撃破かと思っていたがそうもいかなくなったな.……しょうがない。ヨウタ、魔素苦マスクの奴らを招集しろ」


「了解しました」


 そうして僕が病室を後にしようとしたその時、


「ちょっと待ってください」


 龍樹さんが皆を呼び止める。


「なんですか?」「どういたしましたか?」


 そして龍樹さんが語ったのは衝撃の事実だった。


「……実は、パイセンを救助しに行った時に、佐々木組の構成員と思しき人物達がチャカの搬入を行っているのを目撃しました」


『⁈』


 なんと佐々木組が総攻撃の準備をしているらしき場面を目撃したという。それには皆の顔が固まる。


「こりゃぁ……やりずらくなったな……」


「こちらはリンちゃんとシオンが数日は動けない、それなのに奴らは一気にカタをつける気ですよ」


 この状況は非常にまずい。シオンが赤坂を戦線離脱させたことで幹部以上の実力者の人数はやっと同数になった……でも二人欠けた状態で奴らが来ればどうにもならない……(魔素苦マスクの奴らは敵の増援を防がないといけないし)。


「お頭……どうしますか?」


 僕はそれ以上の言葉を出すことができなかった。

 そして、お頭が静かに口を開く。


「百合、陽動作戦だ。アジトの爆薬使って奴らの動きを封じろ」


「はい。期間の程は?」


「一週間以上」


「承知しました」


 そうして僕達は闇医者を後にした。

 それから2日後、百合さんが爆薬の入ったカバンを背負い人知れずアジトを出た。


(さて、始めますか……)

 ようやく朝日が昇り始めた頃、百合さんが見据えていたのは……シマ内で何かを準備する佐々木組の構成員達。


「ショータイムだ」

 そう呟いたと同時、百合さんが奴らの前に飛び降りる。


「ん?」「誰だおめぇ?」

 佐々木組の舎弟たちはほとんど警戒していない。


「消えろ……」

 その時、百合さんが音もなく前に出る!


「なっ……!」「クソッ!」

 舎弟たちもナイフを抜くが……遅かった。


「ぐっ!」「ぎゃっ!」

 百合さんは何も言わず、二人の舎弟の喉元を無慈悲に掻き切った。他の舎弟達が異変を聞きつけ集まってくる。


「なんじゃあ、お前はぁ!」「死にたいんか!」

 その時百合さんの纏う空気が変わる。


「死にてぇかだと……? てめぇらに俺が殺せるわけねぇだろ!!」

 そして互いにスタートを切る! 次の瞬間、まるで嵐のような激しさで斬撃が飛び交う!


「おらぁぁああ!!」「死にさらせぇぇええ!!」


「良いねぇぇええ!!」

 百合さんは狂気的に笑いながら槍を振り回す! 奴らも鍛え上げられた精神力で立ちふさがるものの実力の差は明らか。

 その時、突如として百合さんの顔から温度が消える。


「もういいや……死ね」

 その声と同時に百合さんが目に見えない速さで薙ぐ!


「ぐっ!」「がっ!」

 瞬間、温度のない刃が奴らの胴を両断する! そしてそのまま他の舎弟も一掃した。


「さて、とりあえずここ燃やしとくか」

 そして百合さんはバッグから爆薬を取り出し、奴らの物資の近くにセットする。


「派手に燃えな! ドッカーーン!」

 そうして百合さんが着火したと同時に周辺が爆炎に覆われる。そして百合さんは奴らの物資を根こそぎ消え去ることに成功した。



 それから1時間後の佐々木組事務所。そこで梶野が聞き迫る顔で走っていた。


「どけっ!」


 正面から来る舎弟を押し除けて組長室に飛び込んだ。


「親父! 報告です!」


「な、なんじゃあ⁈ 梶野!」


 佐々木は予想だにしておらず驚いている。


「親父、まずいです。先遣隊に出していた構成員6名が何者かに惨殺され、運んでいた物資も燃やされたそうです」


 そして語られたのは先程の百合さんの破壊工作。


「なんじゃとぉお⁈」


 それはまさに晴天の霹靂。佐々木はあまりの衝撃に茶を落としたことにも気づかない。


「どうしましょう。再び部隊を編成して向かわせますか?」


「……いや、少し待て。罠を張っている可能性もある」


「そうですね……」


 そうして二人が思案にふけっているとまたもや組長室の扉が勢いよく開く。


「ほ、報告です!」


 駆け込んできたのは舎弟の一人。


「なんじゃあ⁈」


「武器庫が……武器庫がやられました!」


 舎弟の口から出た言葉に佐々木はまたもや驚く。


「なんじゃとぉ……!」


 そして梶野とともに組長室を飛び出して武器庫に向かう……しかしその先にあったのは、太陽よりも煌々と明るく燃える武器庫であった。


「早く火を消せぇえ!」「うわぁ、爆発した!」


 舎弟達が懸命に消火するが……もはや手遅れだった。


「梶野……今すぐ武器の再調達じゃ。金に糸目は付けん」


「は、はい……」


「狐どもが……散々こけにしおって……許さんぞ……」


 そう言う佐々木の顔はもはや明王であった。



 そしてこの戦争はいよいよ、決戦を迎えようとしていた。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は早めに投稿できてよかったと感じています。前回までで戦闘シーン続きだったので今回は少し控えめになってしまいましたがここからかなり波乱が起こるのでお楽しみください。

ではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。


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