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妖狐佐々木戦争 龍樹の本気

 ここは佐々木組シマ内の通りそこで龍樹さんとコブラ、蛇川が戦っていた。

 龍樹さんは今極限だ。腕は深く切り裂かれ、胸も抉られている。反対にコブラはほとんど無傷で蛇川も鼻が折れているが他に怪我はない。

 その時龍樹さんが咆哮を上げる。


「號ぉおおおお!!」

 今までに見たこともないような気合いと声が空間を埋め尽くす。そして声が静まった時、龍樹さんが奴らをギラリと睨みつける。


「さぁ、本気だぜ……」

 そう言い放つ龍樹さんは先ほどとはまるで違うオーラを放っていた。


(さっきと違う)

「蛇川! 注意しろ!」

 そうコブラが放つ。


「はいぃ。なんか変わりやがりましたねぇ」

 蛇川の顔にも緊張が走る。そして一瞬の沈黙が過ぎ去った後、


「行くぞっ!!」

 龍樹さんが急発進する!


(速いぃ!)

「クソがぁぁ!!」

 そして互いに斬撃の雨を降らせる!


「くたばれやぁ!!」「死んでよぉ!!」

 まるで竜巻のような斬り合いで周りの空気も荒れ狂う。そしてその隙をコブラが突きに行く!


(コイツ、さっきよりも速い……蛇川じゃやられる)

 そう、コブラは龍樹さんの変化を理解していた。


(ならさっき蛇川のやった腕を、混戦の中で切り落とせば良い!)

 そしてコブラがスタートを切る! 龍樹さんもそのことに気づくがコンマ1秒遅い。


「シャァアアア!!」

 そしてコブラのダガーが龍樹さんの腕に食らいついた!


(もらった!!)

 そうしてコブラが刃を振り抜こうとした時、違和感に気づく。


(……なっ、)

 それ以上刃が奥に入らなかったのだ。


「残念だな……もう完治してるんだ」

 龍樹さんの腕を見るとさっきまで鎖鎌が突き刺さり血に塗れていた腕はもう傷口もわからないほどに治っていた。そして龍樹さんはダガーが食い込んでいる腕でコブラを掴んだ。


「吹っ飛んどけよ!!」

 そしてなんと片手でコブラを投げ飛ばし壁に叩きつけたのだ。


「ぐはっ!!」

 だが蛇川がその隙を見逃さない!


「隙だらけぇ!!」

 そして鎌を龍樹さんの鳩尾に突き刺した!


「グフッ!」

 龍樹さんが激しく吐血する……しかし


「止まらんなぁ!!」

 なんとそのまま龍樹さんは片手で斧を振り回し蛇川を吹き飛ばした!


「チィィィ!!」

 蛇川の頭の肉が弾け、血が滴る。その直後龍樹さんが少し呼吸を整えた瞬間、致命のはずの鳩尾の傷が塞がったのだ。


(化け物めぇ……)

 蛇川はそれに驚きを隠せない。


「テメェらに俺はやれねぇよ。くたばれ……」

 完全に形勢逆転だ。龍樹さんが蛇川に向かって行くとコブラが雄叫びを上げる。


「眠っててくれよぉお!!」

 そして投げたのは、なんと注射器!


(は?)

 そしてそれが龍樹さんの肩に刺さる!


「チィッ!!」

 龍樹さんはすぐに注射器を抜くがもう手遅れだった。

 その刹那、


「ぐはっ……」

 なんと龍樹さんが急に吐血したのだ。そして膝から崩れ落ちる。


(くっ……この感じ、毒か!)

 そう、なんとコブラは毒を使っていたのだ。あっという間に龍樹さんの視界が狭窄し、体が痙攣する。


(くそっ! 毒の分解は……時間が、かかる……)

 そうしてコブラがゆっくりと龍樹さんに近づく。


「アンタ、強いが……予想外には弱いみたいだな」


「んだとぉ?」

 龍樹さんはそう言いながらコブラを睨みつけ、動こうとするが何もできない。


「無駄だ。それは戦時中に使われた尋問用の毒。意識はなくならんがもう後一滴刺せばテメェは終わりだ」

 そう説明するコブラの顔には余裕の色が見える。


「んだよ……殺すなら殺せよ……」

 龍樹さんが震えた声でそう言う。


「いや、お前にゃ聞きたいことが山ほどあるんでな。素直に答えろよ」

 そう言いながらコブラは謎の容器をちらつかせる。


「コイツは解毒剤だ。大人しく答えりゃ渡してやる」

 どうやらコブラは情報を聞き出せと指令されているようだ。

 そして龍樹さんは俯き、呟いた。


「俺らの……作戦は……」


「ん? 作戦は?」

 そうコブラが顔を近づけた瞬間、


「教えてやるかよ!!」

 龍樹さんがそう言いながら立ち上がり、奴を蹴り飛ばした!


「ぐあっ!!」

 コブラは空中で一回転し衝撃を逃す。


「ふぅー……ありがとな、ベラベラ喋ってくれてよ」


「テメェ……何しやがった?」


「簡単な話だよ。オメェ、この毒、戦時中の尋問用毒って言ったろ? それなら毒の仕組みは知ってるんだ。ちょいと時間があれば解毒ぐらいできるぜ」

 そう、なんと龍樹さんはあの間に少しずつ解毒していたのだ。


「さぁ、第二ラウンド開始だ!」

 その瞬間、龍樹さんが爆発的な踏み込みで前に出る!


「ぐぉおおお!!」

 すぐに迎撃体制に入る。

 そして次の瞬間、2人の間で再び刃が交錯する!


「くたばれぇええ!!」「死ぬかよぉおお!!」

 互いの刃がぶつかり合いあちこちで火花が散る! だがそんな中、削れていくのはコブラだけだった。


「くぅうう!!」

(さっきより、最初より、断然速え!)

 龍樹さんの覚醒、その上がり幅は異常なほどだった。普通の人間なら振ることすら難しい巨大な斧、それを扱うだけでなく今や片手で振り回している。その時、龍樹さんが行動に出る!


「ちょいとお借りするぜぇえ!!」

 そう言いながら向かったのは廃屋の壁、


(何を、)

 コブラも後を追う! その次の瞬間、


「オラァアアアア!!」

 なんと龍樹さんが豪快に巨大な木の柱を引き抜いた!


(……は?)

 コブラはあまりの事に思考を忘れる。その刹那!


「よいしょぉおお!!」

 龍樹さんが引き抜いた柱をコブラに叩きつけた!


「ぐぉおおお!!」

 コブラも踏ん張るが吹き飛ばされる。


(奴はここで仕留める!)

 そして龍樹さんがコブラとの距離を潰す!


「ぐおっ……」

 コブラは衝撃で動けない。


「もらったぜぇええ!!」

 そして龍樹さんが斧を振り上げる!


(殺った)

 誰もがそう思った……その瞬間!


「ぐっ!」

 龍樹さんの動きが止まる。


「やぁっと捕まえたぁ……」

 その声の主は、蛇川だ。よく見ると龍樹さんの体に鎖が巻き付けられている。

 それとほぼ同時!


「ッシャァァアア!!」

 コブラが力を振り絞って目に見えないほどの連撃を繰り出す!


「ぐはっ!」

 龍樹さんの体に無数の切り傷が現れ、毒も打ち込まれる! そして仕上げと言わんばかりに蛇川が龍樹さんを引っ張り、反対側の壁に叩きつけた。


「ッガ!! ……」

 瞬間、龍樹さんの身体中に毒が回り、傷口から血が吹き出す。


(くっ……くそっ……)

 いくら龍樹さんとはいえ、これは厳しい。


「終わりだぁあ!」

 蛇川がまるで怨念でもぶつかるように鎌を投げる!

 もう終わりだ……


(……今だ!!)

 その瞬間、


「ぐっ!」「なっ⁈」

 コブラと蛇川の目が不可思議に潰れる。それとほぼ同時に龍樹さんが屋根よりも高く跳躍する!


(何が起こった⁈)

 コブラは咄嗟に目に手を伸ばす。そしてその正体があらわになる。


(これは……石⁈)

 なんと2人の目を穿ったのは龍樹さんの放った小石だったのだ!


「ッチィ!」

 蛇川が反対側の分銅を投げるも躱される! そして龍樹さんが斧を振り上げる。


「妖狐流斧術! 熊断戦斧ゆうだんせんぷ!!」

 そして、まるで隕石でも落ちたかのような轟音と衝撃が辺りを埋め尽くす。


「ぐぉおおおお! ……」

 そして土煙が晴れた時その場にいたのは、血に塗れ、もはや動くことすらできないコブラと悠然と立つ龍樹さんだけだった。

 そして龍樹さんがゆっくりとコブラに歩み寄る。


「まだ死んでなくてよかった……オメェに聞きたいことがあんだよ」


「……」


「片手剣と盾を使う戦闘者……知ってるなら吐けや」


「片手剣と……盾……だと? そんな、馬鹿な……あいつは……まだ……」


「あぁ?」


 龍樹さんが聞き返すがコブラは口を小刻みに振るわせるだけで何も言わない。


「……だが、貴様らは、終わりだ……この戦争でなくとも……お前たちは、全員死ぬ……」


 だがその言葉はハッキリと聞こえた。


「んだとぉ? もっぺん言ってみろ!」


 龍樹さんがそう言いながらコブラに掴みかかる……が、もう既にコブラはこの世を去っていた。


「ちっ」


(俺たちの負けだと?)

 そう龍樹さんが考えた瞬間、不意に力が抜ける。


(あれ?)

 そして龍樹さんも動けなくなる。


(そういや、毒喰らってたわぁ……どうしよ。ヨウタ呼ぶか……)

 それから、僕は龍樹さんからのSOSを受け取り、青山と一緒にその場の処理を済ませてアジトに帰還した。だが不可解なことがある。なぜか蛇川の遺体が無かったのだ。


(なんでだ?)

 疑問に思い、捜索しようとも思ったが龍樹さんを回収しに来ただけだし周りは瓦礫でごった返していて探せたもんじゃ無かった。


◆◇◆◇


 その一方、佐々木組と妖狐衆のシマ境でそこには片目を潰され、血に塗れた蛇川とリンを襲ったあの男が話していた。


「アイツらは貴方の存在を躍起になって探しているようですねぇ」


「まぁ、組員がやられたんだ。当然なのだろう」


「ですがおかしいですねぇ……アイツ、マムシと聞いても顔色ひとつ変えませんでしたよぉ」


「おそらくだが、鮫澤が吐いたんだろう。愚かだな。黙っておけば良かったのに」


「アイツにとっては我々の勝利なんてどうでも良いのでしょうね」


「まぁ、これからは動きにくくなるぞ。だが目標は変えん」


「はいぃ」


「アイツらから腕の一本くらいもらおうか……」



 そうしてこの戦争は、これから更なる佳境に入ることとなる。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回はなんと内容のほとんどが戦闘描写で終わると言うイレギュラーになってしまいました。元々私の勝手なルールとして「1話につき戦闘は1000文字程」としていたのですがそれを水溜まりの如く飛び越えてしまいました。それでは、コメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。


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