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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
妖狐衆
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決意と仲間②

 男の人と少女と共に歓楽街の奥へと入っていく。

 移動の中で男の人からこんなことを聞いた。

 まず、この街。というかこの世界自体、政府は存在せずに国の概念もない。


 僕たちの街は町内会で物事を決めたりしていたがこの街では武闘派組織が街を分割し、それぞれの店などを事件やごろっきどもから守る代わりにいくらかお金をもらって生計を立てているらしい。


 聞いたのはこれくらいだ。因みに、この街は犯罪の温床であるのと同時に経済の中心地だ。

 僕の家があった場所は戦後の痛みがまだ残る住宅街、反対にすでに戦後の処理も終えたのが歓楽街だ。

 故にここの人々は住宅街の無気力な人々とは反対に手段はどうであれ楽しそうにしている。

 そして十五分ほど歩いた後、一軒の店が見えてくる。

 少し寂れた感じがする……看板には何かが書いてあるが暗くて読めない。

 そして男の人に続いて建物の中へ入っていく。


 中には男女三人組が談笑をしていた。

 一人はがっしりと筋肉質な体に髪は短髪で少しぼさっとしている感じだ。服装は紺色の何か書かれたシャツに肩当てをしており、指が出ているタイプの手袋をしている。

 二人目は小柄で眼鏡をかけた女性で髪は天然パーマ(かな?)。そして、ベージュのセーターを着ていて何だかオドオドしている。

 もう一人は髪の長い女性で、黒いタートルネックのシャツに茶色のゆったりとしたズボンを履いていてなんだか上品な感じが漂っている。

 そして談笑をしていた男がこちらを見て、


「お疲れ様でーす、その子ですか?」


 と聞く。


「あぁ」


 男の人が静かに答える。


「黙ってるのもなんだ、自己紹介でもしようか」


 男の人がそう言って急遽、自己紹介をすることになった。そうして長髪の女性から話し始めた。


「私は藤田百合と申します。ここでは副隊長と調理を担当していて、趣味は読書です。よろしくお願いしますね」


 とても丁寧で落ち着いた口調だし綺麗な人だ。僕がつい見とれていると百合さんが急にどこからか槍を取り出して僕の顔の前を切る……。


(え? 何が起こった?)


 突然のことすぎて目が点になっていると百合さんが口を開く。


「危なかったですね」


(いや死にかけたんだけど⁈)

 って言ってやりたいが、その時違和感に気づく。


(なんだ? これ……)

 なんと僕の目の前にある机に虫が両断されて落ちていたのだ。


「それは、カラムシと呼ばれている虫です。毒があるので刺されると危険ですよ」


 百合さんがなんてことないように続ける。

(手段はともかく、助けられたってことか……)


 まだドキドキが収まらない。そうしていると一際大柄の男性が手を挙げた。


「じゃあ次は俺かな? 俺は熊谷龍樹、22歳だ。役職は特にないけど力は人一倍あるぜ。趣味は……筋トレか、暇になったら熊と相撲取ってる」


 ん? おかしいな。聞き間違いだろうけど「熊と相撲」って聞こえた気がするんだけど……。


「えっと、熊と相撲っていうのは?」


「ん? 読んで字の如くだよ。熊と、相撲を、とる。耳大丈夫か?」


(どちらかというとあなたの常識が大丈夫か知りたいです)

 ツッコもうと考えたがさっきも言った通り、腹が減って結構危ないし初対面の人にそこまで言う勇気は持ち合わせてないからグッと堪えてスルーした。


「じ、じゃあ次は、私……ですか?」


 メガネの女性がオドオドしながら言う


「私は……山岡リンと申します。情報などのネット関連は私の専門です。と、歳は20です。趣味は……昔の映像作品を観ること、です」


(そうなんだ……)

 こんなこと言うのもアレだがかなり幼い感じだから年上なのが少しビックリした。それと、


「えっと、昔の映像作品とは?」


「あっ、あの。歴史で習ったと思うけど、あの。アニメの映画とか……そういうの」


(え? マジで?)

 確か近代史の授業でやったがすごい面白そうだった。

 でも確か先の大戦で会社もデータも全部無くなったって習ったのに……。


「それを、持ってるんですか⁈」


「あっ、う、うん。見たい……?」


「ぜひ!!」


 リンさんは少し驚いた表情で頷いてくれた。僕とリンさんで話してるとあの男の人が咳払いをする。


「さて、残りのメンバーも紹介しちゃおうか。シオン」


「えっ、私ですか?」


 あの女の子が反応する


「ちっ……私はシオン。担当は特にない、以上」


 ……めちゃめちゃあっさりしている。さっきまでかなり話していたはずなのに距離が想像の10倍くらい遠い。正直無愛想にも程があると言いたいが名前を明かしてくれただけ感謝だ、とは言わない。

 だからシオンに質問する。


「えっと、シオンはさ、趣味とかってあったりs」


 僕がそう聞くとシオンからの返答は、


「……」


 何も言わない。どころかさっき絡んできた奴にやった勢いで睨んでくる。

 そのまま彼女は僕から遠ざかってしまった。


(僕、いつの間に嫌われたの……?)


 何故だか悲しい気持ちが溢れてくる。半分泣きそうになってるとお頭と呼ばれていた男の人が口を開く。


「じゃあ最後は俺か、俺は大丸嶽久と言う。歳は39でここのリーダーを務めている。趣味は……特にないな」


「よ、よろしくお願いします」


「じゃあヨウタ、質問していいぞ。聞きたいことも結構あるだろ?  俺たちは何者なのか……とか」


 心を読まれた気がして一瞬ドキッとする。


「は、はい」


 静かに答えると大丸さんが説明を始める。


「まず、道中話したがこの街にはいくつかの武闘派組織が存在する。ここではおよそ10の組織が土地を分割している。俺たちはその内の一つ、妖狐衆だ」


(妖狐衆)


 心の中で静かに繰り返す。


「表向きはただの武闘派組織の端くれだが、俺たちには裏の顔がある」


「裏の顔……?」


 突然のことに驚く。


「まず、君は何から生まれたと思う?」


「えっ、母親からじゃないんですか?」


「違うな……君は造られたんだ。親の二人は君の健康管理と監視のために親を演じていたんだ。」


 少しの間時間が止まる……。


(え? どういう、こと?)


 それを理解した瞬間、混乱すると同時に心の中の何かが崩れる音がした。僕が今まで必死になって応えようとしていたものは? 親の愛情が欲しいあまりにしていた努力は?

 不意に倒れそうになるがなんとか踏み止まる。


「造られた理由は分からないが、そうやって生まれた人間は超人とも呼べるような特殊能力を皆持っている」


 頭の中がさらに混乱する。


(は? 特殊能力? そんなんあるわけ)


 まったく信じられない。


「そんな……そんな人間が存在するなんてありえません! 証拠もないのに!」


「じゃあ、見てみるか」


 大丸さんがそう言うと龍樹さんが立ち上がって近くにあった剣を取り、大丸さんに投げ渡した。次の瞬間、その剣を大丸さんが抜くと同時に龍樹さんの胸を深く切り上げる! 

 服は裂け、勢いよく血が吹き出す。


「なっ、何やってるんですか⁈」


 なんだか分からずにパニックになっていると、大丸さんが、


「まぁ、落ち着けって」


 そう言うが落ち着ける訳がない。なんとか止血しようとハンカチを持って駆け寄った時、異変に気づく。

(もう……血が止まってる)

 なんなら傷の端はもう塞がりかけている……。


「え、なんで……」


 思考が停止しかける。


「これを見てもじられないか?」


 大丸さんが腕を組んで言う。もう証拠は揃っていた。


「いえ。でも、一体誰がこんなことをしているんですか?」


 静かに聞く。龍樹さんを貶すわけではないが、このままではまるで化け物だ。


「戦中に発足した秘密の研究機関、それしか分からない」


(そんな、訳もわからないようなやつが……)


 正直さっきまでのことで頭はパンク寸前だ。でも、その話が全て本当ならばあの二人もその研究機関の人間なんだろう。

 僕が黙っていると大丸さんが続ける。


「で、さっき言ってた裏の顔だがな、俺たちは体を勝手に改造した奴らの目的を暴くために動いているんだ」


 大丸さんが淡々と言うがそこでとある疑問が出てくる。僕はその質問を投げかける。


「組織の事は分かりましたけど、ならなんで僕が必要何ですか?」


 そう、正直に言えば僕は能力が何か自分でもわからない。それなのに何故連れて来られたかだ。


「それは戦力だな。今判明してるだけでも俺ら以外の超人は20人以上いる。そしてそいつらは研究所に忠誠を誓っているやつが多く俺たちだけで突破するのは正直難しい……だから君をここに来させたんだ。能力の発現が近い、君をね」


(そんな、僕、喧嘩なんてしたこともないのに。ってか能力の発現が近い?)

 そう思うが大丸さんが続ける。


「奴らの力は少なくとも俺たち並みかそれ以上。データはまだ少ないから分からないが、おそらくあの男がメンバーにいる」


「あの男?」


「……破壊神」


「……え?」


 僕はその言葉を聞き絶句する。

「破壊神」とはかつてこの国を勝利に導いた「三大将軍」の1人、その呼び名だ。圧倒的武力によってあらゆる戦場をほとんど無傷で終わらせたという逸話がある。

 東は大陸の果て、西は海の果てまで進み彼が戦った後の戦場は死体一つ残っていなかったという。


「でも……大戦終結日に死んだはずじゃ……」


 実際、歴史の教科書ではこの国を守った末死んだとされている。


「いや、やつは生きている。そして俺たちと同じ造られた人間だ」


 さらに衝撃の事実が降って湧いてくる。


「はぁ?」


「そいつらに勝つ為にはお前が必要なんだ」


 正直、頭がお腹いっぱいだ(?)。もうこれ以上情報を詰められない。


「って事で、戦力が必要なんだそこで……どうだ? うちに入らないか? 最初はただの見習いとしてだが」


 正直、僕は動揺している。様々な感情や思考が頭の中を駆け巡っているとシオンが口を開く。


「ヨウタはさ、あの二人に恩とか感じてるの? 敵対したくない理由があるの? それとも破壊神が怖いの?」


 とぶっきらぼうに言う。正直「破壊神」は怖くない……ってか分からない。

 だがもう片方の言葉が心に刺さる……。


(そんなわけあるかよ。僕だって、あの二人に騙されてきて、ムカついてるさ……)


 何も言えずにいると百合さんが口を開く。


「選択肢は二つです。私たちと共にお二人を含めた研究所をこの世から消すか。騙されていると分かりながら冷たい生活に戻るか」


 その瞬間、脳裏に浮かんだのはあの二人との暮らしだ。冷たく、虚無の日々だ。

 もうあそこには戻りたくないしそれに他の子があんな生活を送ることも望まない。


 そして何よりも……あの二人に問いただしたい。もっと家族らしく出来なかったのか、何故あんなに冷たく接したのか……。

 決意はもう、固まっていた。


「大丸さん、僕を……妖狐衆の見習いとして入門させてください!」


 その言葉に大丸さんは静かに頷いた。


「分かった、入るからには徹底的に鍛え上げるからな」


「覚悟の上です!!」


 その時大丸さんが僕の目を覗き込んだ。そして少し微笑んで


「よし、百合! 部屋を用意してやれ!!」


「分かりました」


「明日の起床は6時だ! あんまり遅れると飯は抜きだからな! それと晩飯は後で持って行ってやるから待ってろ」


 その声が部屋中に響く。急なことで多少ビックリしたが、それよりもこの人達の温かさに涙が溢れる。

 そしてシオンが僕の前に来て、


「よろしくね……」


 と言ってくれた。涙で大した返事も出来なかったが一番遠いとも思えた彼女との距離が少しばかり近くなったと思う。

 そして夕飯を食べて部屋に行くと途端に疲れてきて、ベッドに倒れ込む。



 明日からもう冷たい世界に居なくていい、未知で今までと違う明日からの生活にワクワクしながら目を閉じた。

さて、どうでしたか?僕自身あまり時間が取れないのと書きたいものが多すぎてここまでかかってしまいました。またコメントやレビュー、感想などよろしくお願いします。お友達にも広めていただくと嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
文章は長かったりしたけど、不思議と飽きなかった。 ここまで沢山の細かい内容を書けることは、俺には出来ないから、普通に凄いと思った。
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