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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
妖狐衆
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決意と仲間①

 彼女に連れられて来たのは7mはあろうかという壁の前だ。ここの存在に僕は聞き覚えがあった、


「ここって、歓楽街……ですか?」


「そうだよ」


「ですよね……え?」


 彼女が何も無いように答えるがここは「欲と犯罪の渦巻く街」とまで言われているような場所だ。


「えっ? ここに何があるんですか?」


「私たちのアジト。って言うか家」


「あ、家がね。ふーん……は?」


 思考が固まる。アジトなんて初耳だしこんな場所にあるのも聞いてない。


「いやいやいやいや! 聞いてもないですって!」


「うん、言ってないもん」


 彼女があっさりと答える。もうこの件は掘り下げないでおこう……夕飯も食べてないからこれ以上疲れるのはごめんだ。


「で、どうやって入るんですか? 正面から堂々とは行けないでしょ?」


「うん、私はともかくあなたがダメだね」


 そう言いながら彼女はぼくの服装を指差す。その瞬間、自分の失態に気づく。


(あ、しまった……)


 そう、着替えていなかったのだ。これでは身元がわかって速攻強制帰宅だ。それだけは避けなければいけない。


「じゃあどうするわけです? 中に入るんですよね」


「そうだけど、まぁしょうがないか……」


 そう言いながら彼女は上を見上げる。

(まさか……)

 嫌な予感が背筋を駆け巡る。そしてその予感は見事的中する。


「登ろうか」


 その瞬間、僕は反射的にツッコむ、


「いやいやいやいや! 無理ですよ! 見て!  突起もほとんどないから! 登れないです!」


 彼女がビックリしたような顔をして一瞬考える


「まぁ、じゃあフックで行こうか」


「は?」


 言うと同時に彼女は僕の左手を握って、右手でフックのついた銃を取り出して壁の上に向かって撃ち出した、


「えっ? ちょっ、まっ! うわああああああああ!!」


 情けない声を出しながら急激に上へ上がる。肩が痛いが必死に彼女の手を握る。そして数秒で上に着くがまだ心臓がバクバクしてる。


「なっ、もうちょっとゆっくりでもよかったですよね⁈」


「……ごめん、急いだほうがいいと思って」


(そういうことじゃないだろ)


 そう思ったが連れて行ってもらってる身だ、何も言わない。


「それより……ほら、見て。これが私達の街だよ」


 そう言いながら彼女が下の方を指差す。その方を見ると眼下にはピンクなどのネオンで飾られた煌びやかな街が広がっていた。

 そこ自体が妖艶な雰囲気を纏い、正に眠らない街という様だった。僕が見とれていると


「もう行くよ」


「えっ、もうちょっと楽しんでからでも……」


 もう少し見ていたくてそう言い返す


「お頭に怒られたくないから……」


(お頭?)


 聞いたこともないことで戸惑っていると後ろから声が聞こえる。


「おい! そこで何してる!!」


 振り返ると数人の男がこちらにライトを当てている。


「これって大丈夫なやつ……です?」


 念の為彼女に確認する。


「そんなわけないでしょ。いくよ!」


 その瞬間、彼女は僕を押して、今度は真っ逆さまに落ちた。


「またかよーーーーー!!」


 声を上げながら落ち、頭からいった。反対に彼女はしっかりと着地を決めていた。


「ぶはっ! 痛ってぇ……」


 頭をさすって涙目になる。そうすると彼女が耳元で囁く。


「立って、何もないように歩いて。離れないでよ」


 僕も静かに頷いて立ち上がり、歩き出す。周りは人がごった返しており方々から


「ちょっとお兄さ〜ん、こっちおいでよ〜」「おねぇさん可愛いね、儲かる話あるんだけど興味ない?」「ほらほら! 今なら席空いてるぞー!」


 という声が聞こえる。匂いもなかなか好きになれない感じだ。甘酸っぱい感じというか、人混みも相待って酔ってくる。

 そうして歩いていると正面から一人の男がこちらに向かって歩いてくる。

 身長は僕より高い180くらいだろうか? 筋肉質な体つきに黒い七分袖のシャツを身につけて灰色の半袖の上着を着ている。髪は束ねて少しぼさっとしている。

 その男は僕たちの前で立ち止まった。


「ご苦労だったな」


「はい、疲れました」


「そうか、すまんな。やぁ、君がヨウタくんか」


 男は僕の方を見て優しく声をかける。


「はっ、はい」


 緊張してしまってちゃんと返事ができなかった。

(でもなんで僕の名前を……)

 不思議に思っていると男の人が口を開く。


「立ち話もなんだし、ついてきて」


 そして男が向きを変えようとした時、後ろから大柄な男二人が声をかける。


「おい、おっさん邪魔だからどけよ」「迷惑なんだよ」


 かなり舐めた態度だ。


(横を通ればいいのに……)


 僕がその男達に呆れていると隣から猛烈な殺意が放たれている。その正体は彼女だ。

 すごいくらいに男達を睨め付け、今にでも襲いかかりそうだ。だが男の人がそれを小声で静止する。


「やめとけ、大丈夫だ」


 そして振り返ると和やかな口調で


「それはすいません。では横をお通りください」


 と言ったのだ。なんというか……意外だ。


 だって、それはそうだろ? 隣の彼女は身のこなしからとても普通じゃない。そんな(たぶんだけど)彼女のお頭があんな簡単に道を開けるなんて……。

 僕が戸惑っていると、男達は面白くないようで


「なんだと⁈ 舐めやがって!!」「ぶっ殺してやる!!」


 そう言って二人は一斉に殴りかかった。


「しょうがないな」


 男の人が静かにそう呟く。その次の瞬間! 二人組の首が不自然に傾き、二人が白目を剥いて倒れる……。


(な、何が起きたんだ?)


 僕が呆然としていると、


「ただの脳震盪だよ」


 と男の人が言う。


 だが僕はなんとなくでしか理解できない。僕が呆然としている間に周りから人が集まってくる。

 そして気絶した男二人は近くの店に運び込まれた。きっと、金はむしり取られるんだろう。

 僕が立ち尽くしていると男の人が


「よし、じゃあ気を取り直してアジトに行こうか」


 そうして、平然と歩き出す。


 これまでの一連の流れが彼ら(今までの彼女の言動からなんらかの組織だろうが)とこの歓楽街の異質さと怖さを物語っていた。

 僕は胸中に希望と不安を抱えながら彼らの後を追った。

さて、いかがでしたでしょうか?私自身かなり普段の生活に追われてしまって執筆が思ったように進みません(悲)。それでは、コメントやレビュー、またお友達などにも広めていただければ幸いです。


烏丸和臣

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