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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第一章 妖狐衆
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尋問と罠

 事件が起きた翌日、太陽の光で目が覚める。時計は六時を指している。今日はリンさんと一緒に司法府の輩に尋問する日だ。とりあえず服を着て下に降りる。

 下では既に百合さんが朝食の準備をしている。


「おはようございます、百合さん」


「おはようございます」


 そうして朝食の前にある程度身支度を済ませているとリンさんが降りてくる。


「おはようございます」


「あ、うん。おはよう」


 顔を洗い終わるとリンさんが奥から何かを引っ張り出す。出てきたのは一見普通の服だが脛当てや籠手、上着は五分袖くらいでフードがついている。


「えっと、これは?」


 気になって質問すると


「今日の尋問は、これ着ていくの」


(え? なんで?)

 突然のことで驚く。てっきり今日は普通の服で行くのかと思っていたからだ。僕が困惑しているとリンさんが口を開く


「ああ、言ってなかったね。私たちの戦闘服は様々な状況に対応できるようにいくつか種類があるの。

 まず、昨日も着てた戦闘目的の際に着ていく壱型、これみたいに平服と戦闘服の機能を兼ね備えた弐型、最後に奇襲や暗殺に使う参型の三つ。だね」


「なるほど、今回はあくまで尋問がメインだから弍型で行くんですね」


「うん、そういうこと」


 理解できたと同時に前々から気になっていた質問をしてみる。


「あの、昨日の戦闘服もですけど凄いピッタリで……あれって作ったんですか?」


 そう、昨日着た時に感じた異様なフィット感の正体だ。


「うん、結構前に採寸したの覚えてる? そこから作ったの」


「あ、なるほど。あの時ですね!」


(そう言えば初めて訓練した時になぜか採寸されていたな)

 そんなことを思いながら着るとやはり普段着との間っていうのもあって着心地は壱型よりも優れている。そして感心しながら動きを確かめていると百合さんが朝食を出してくれる。

 今日は豚汁とご飯、漬け物だ。


(なんかシンプルだな)

 今までの品数が多かった分少しそう思ってしまう。そうするとリンさんが食卓に座り、すぐに食べ始める。


(なんでだろう……まだ時間はあるのに)

 まだ時計は7時を回ったところだ。いくら朝一とはいえ早すぎる気がする。そうして困惑していると大丸さんが起きてきて、それと同時に大丸さんに質問する。


「大丸さん、司法府にはどれくらいに行ったらいいんですか?」


「ん? 向こうからは8時に来いって言われてるぞ」


「……え?」


(今、なんて? ハチヂ?)


 司法府自体は街の中央部。ここからは頑張っても45分はかかってしまう距離だ。


「それって、マジっすか?」


「おん、マジだ」


 少しの間時が止まる。


「やっべえええええ!!」


 その瞬間かつて無いほどに焦りまくる!高速で食卓の上にある豚汁と白米をかきこもうとするが両方とも熱すぎてひっくり返しそうになる。


(あっぶねぇ……)

 そしてふーふーしながらもできるだけ早く平らげる。


「ごちそうさまです!」


 そう言って洗面台に向かい、歯磨きしながら顔を洗う(?)。ある程度身支度が終わるとリンさんは既に出発できそうだった。


(まって、早いって!)

 部屋まで駆け上がり武器を取って下に降りる。だが、その時うっかり階段で足を踏み外してしまた。


(あ、終わった……)

 そのまま階段を豪快に転げ落ち、リンさんの目の前でぶっ倒れる。


「だ、大丈夫?」


「は、はい」


 朝から痛い思いをしながら出発する。移動しているとリンさんからとあるものが投げ渡される。


「これって、なんですか?」


 渡されたのはマスクのようだが大きさが足りない。


「それ顔を隠すためのマスク。目から下しか隠せないけど」


 言われた通りにつけてみると昨日のお面みたいに鎖が出てきて顔をしっかりと掴んでいる。そして、不思議と呼吸は苦しく無い。


「凄いですね、これ」


「うん。あ、顔の横にあるボタンを押せばマスクが収納されるから、後で試してね」


(そんな機能までついてるのか……)


「はい」


 感心しながら向かっていると程なくして司法府に到着した。外見はコンクリートで覆われた要塞のような建物だ、そこからはなんとも言えない重厚感が漂っていた。


「よし、入ろう」


 リンさんにそう言われてついて行くと中で一人の男が待っている。


(誰なんだろう)

 恐る恐る近づくと男が挨拶をしてくる


「こんにちは。二人が今日、尋問する人達だね」


 口調は優しいが立ち姿から只者では無いことが瞬時に分かる。


「はい、妖狐衆のリンと」


「ヨウタと申します」


「ヨウタと、リンね。改めて私の名は黒川、ここの監察長を勤めています」


「カンサツチョウ?」


「立ち話もなんですからこちらに……」


 そう言われて奥に案内されると長い廊下がある。歩いているとあちこちから罵声が絶えず聞こえてる。


「っ、これっていつもなんですか?」


「はい、いつもこんな調子ですよ。何せここには二千人以上の罪人が捕らえられていますからね」


(二千人以上⁈)


「そ、そんなに犯罪者がいて抑えられるんですか?」


「ええ、うちの奴らはしっかりと鍛えてますし、私も腕っぷしには自信があるんですよ」


 黒川さんが少し自慢げに言う。そうして歩いていると「尋問室」と書かれた部屋が見えてくる。


「こちらです」


 黒川さんが立ち止まり、部屋の扉を開ける。中に入るとロープで巻かれた男が座っている。しかも顔を見ると右の頬がえらく腫れている。するとその男がこっちに気づく。

 その時に僕もそいつが誰なのかが分かる。

 そう、昨日安子おばあちゃんの店を襲撃した奴らのリーダーだ!僕が身構えるとそいつはうんざりしたような口調で言った。


「おいおいなんだよ。尋問されるって聞いたからどんなんかと思ったのに。ガキのお守りかよ!」


 聞こえるように愚痴を言う。


(なんだこいつ)

 内心腹が立つ。だがやる事は変わらない。


「さて、まず名前は?」


「滝川和志」


「あっ、えっと……歳はいくつ。ですか?」


「28」


「和志、お前がいた組織はなんてところだ?」


「おい! さんぐらい付けやがれ!」


「質問に答えろ。この場の主導権は俺たちが持ってる。もう一度聞く、組織の名は?」


 毅然とした態度でやっているが今にも心臓が飛び出しそうだ。リンさんはもうダメそうだし。


「ちっ、裏法流派亜リボルバー


「人数は?」


「80くらい」


「アジトの場所は?」


「二番地区、東の三番通り」


「なるほど、じゃあ最後の質問。なんであの場所を襲った?」


「俺たちはただ、案内役からの指令を遂行しているだけだ。俺たちはあそこを襲えとしか言われてない」


「分かった、これで終わりだ」


 そう言い残し部屋を出る……作戦は大成功だ。

 実はここに来る前、リンさんと相談していたのだ。相手が誰であれおそらく滅多に喋らないだろう、そこで自白剤入りの注射弾を入室と同時に打ち込んで答えさせようと言うものだ。黒川さんには申し訳ないが、やつが頑丈だったおかげで自白剤が入っていてもすらすら答えてくれた。

 今回の尋問で分かったこと、奴が言っていた「案内人」がもし目撃情報のあったあの男ならば、そうでなくてもゴロツキを使ってうちの組織に喧嘩を売っている黒幕がいる。

 そいつを引っ張り出すためにもまずは、あの男を取り押さえなければいけないと言うことだ。僕たちはその情報を手にアジトに戻ってみんなに共有した、それを踏まえて今後の作戦が話し合われる。


「なるほど、それなら監視カメラで奴らを見つけて、四人で周りを見張って残り二人で奴らを殲滅、奴を見つけて捕縛するって感じがいいだろうな」


『分かりました』


 そして囮は百合さんと僕、それ以外で見張ることになった。そして罠がかけられてから二日が過ぎた日。

 監視カメラに20人程が顔を隠し路地裏を走っているのを確認した。方向からしておそらく前と同じ場所を襲うのだろう。


「大丸さん! 出ました!」


「分かった」


 そして、大丸さんが声を上げる。


「総員! 作戦開始!!」


『おぉ!!』


 そして僕と百合さんは輩の元へ急ぎ、リンさんが他の三人へ状況をリアルタイムで伝え、三人が案内人を追うといった陣形が一気に展開される!

 そして輩の元へと僕たちが到着し、戦闘が始まる。


「オラァ! うちのシマで暴れてんじゃねえ!!」


 その瞬間、輩もこちらに気づく!


「なんだぁ? このガキ!」「叩き潰してやれ!!」

 二人が棒で殴りに来るが一人は避け、もう一人の棒はガードで弾いた!


「クソッ!」「ちょこまかと!」

 二人が同時に追撃を飛ばすが遅い。僕は身体を沈ませながら奴らの下腹部に横薙ぎを入れる!奴らの腹に峰がめり込む。


「がはっ!」「おうっ!」

 そう言いながら二人は倒れた。

 そうして振り返るともう一人が後ろからすでに攻撃を始めている!


(まずい、躱せない!)

 僕は咄嗟に拳銃を抜くが間に合わない。だが次の瞬間、何かが男の顔面を殴打し吹き飛ばす。

 ふと見ると百合さんの槍が助けに入っていたのだ。


「周りには、気を配らないとダメですよ」


 穏やかに言うが槍を構えている姿はさながら武神だ。


「わ、わかりました……」


 そうして二人で構えを取り、敵と正面から向かい合った。

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