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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
妖狐衆
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覚悟と仕事②

 龍樹さんが大丸さんに指示されて扉を開けると中には何かの服を着たマネキンと、拳銃が置いてあった。


「あの、これは……」


「話は後、まずこれ着ろ」


 龍樹さんがそう言いながらマネキンの服の胸部を押すとカチャカチャと音を立てて服の前部分が開いた。

 そして言われた通りにそれを着ると


「服の前部分を閉めろ、そうしたら自動でくっつく」


 そう言われた。半ば信じられなかったが言われた通りにやるとほんとにしまった。しかもサイズまでピッタリだ。そうしてズボンとブーツもはいた。これも自動でぴったりなサイズになった。

 感心しているとフードのついた薄めのベストを渡されてそれも着る。最後にグローブもすると完璧だ。

 着心地を確認していると龍樹さんも着替え終わり、僕に刀を渡してくれた。

 黒い鞘で訓練用よりも、なんなら昨日の刀よりもズッシリとした感覚だ。拳銃も渡してくれるがやはりしっかりとした重さを感じる。


「拳銃はズボンのホルダーにしまえ、刀は腰のとこに付けとけよ」


 言われたままに装備して準備万端!かと思ったら龍樹さんが最後に狐のお面を渡してくれた。目の部分が光っていて赤色で彫られている。

 なんだか機能でもついてそうな感じだ。


「これを付けとけ、正体を隠せるからな」


(え、つける部分もないし、呼吸しにくそう……)

 でも嫌とは言えない。渋々顔に被せると仮面の横と頭のところが急に音を立てて伸び、僕の頭を固定した。


(え? すごっ!)

 しかも呼吸も苦しくない、視界も良好だ。感心して楽しくなっていると仮面を通してリンさんが連絡する。


「座標分かりました! 三丁目の四番街、安子おばあちゃんのお店です!」


(安子おばあちゃんの?)

 正直なことを言うと、あのお店に初めて食べに行った日からほとんど毎日通っていたのだ。そこが襲われていると聞いて無性に怒りが湧いてくる。

 だがその横でさらに怒りをむき出しにしてる人がいた……。


「クソ野郎どもが、ぶち殺してやらぁ!!」


 その正体は龍樹さんだ。試練の時のような覇気ではない、ドス黒い殺意だ。それに気押されていると大丸さんが指令を飛ばす!


「妖狐衆! 舐めたクソガキどもに思い知らせてやれ! 行くぞ!!」


『はい!』


 その瞬間全員がアジトの外に出る!


(急がないと!)


 実は事前に出動時の経路は教えてもらっている。

 その経路とは……屋根の上だ。全員で屋根の上に飛び乗って走り出す! 屋根が連なっているところもあれば離れているところもあるから急な対処が求められる! しかし、


(皆……速い!)

 そう、移動速度の違いだ。今だから何とかついていけているがこれ以上速度を上げられると無理だ。そうして必死に走っていると安子おばあちゃんのお店が見えてくる。

 すると大丸さんが指令を飛ばす!


「龍樹、リンは左! 百合とシオンは右から囲い込め! ヨウタは俺と来い!」


『了解!!』


 瞬時にみんなが散開する!すると大丸さんが口を開く。


「ヨウタ、お前は初陣だから大事なことを教えといてやる……」


(大事なこと……)

 今まで大丸さんから大切なことはたくさん学んできたが本人の口から直接言われるのは初めてだ。

 そしてそれを息をのんで聞く。


「いいか? 飛び降りるのは俺が降りてから三秒後だからな」


「え?」


「分かったな?」


「はっ、はい!」


(返事したけど、どういう意味だろう?)


 正直何言ってるかわからない。確かこうやって奇襲を仕掛ける時は同時に行くことが大事だったはず、なのに三秒も空けるなんて悠長にも程がある。

 そうやって考えていると目的地に着いた。大体20人くらいだろうか……男達が角材やらナイフやらを持って道で暴れている。

 僕の状況把握が終わると同時に大丸さんが飛び降りた!それにゴロツキ共も反応する!


「なんだぁ⁈」「誰だテメェ!」


「ただの狐だよ!!」


 大丸さんがそう言うと拳を固めてゴロツキの一人……ではなく地面に叩きつけた!瞬間にその場所から稲妻が走る!


 そうして大丸さんの近くにいた五人ほどが吹き飛んだのだ!


(な、何が……)

 それはあまりに一瞬のことであり夢でもみているのかと我が目を疑った。

 だが三秒後に降りるの意味がわかった。同時に降りたら間違いなく巻き添えだ。

 そうしていると龍樹さん達が左右から次々と降りていくのが見える。


(やべっ)

 すっかり降りることを忘れていた僕は思い切って屋根から飛び降りた。

 直接見ると全員ガタイがいい……思わず手が震える。だが拳を握って意を決する。


(やってやる、やってやるぞ!)

 その時ゴロツキが声を荒げる。


「おい! テメェら何者だよ! 俺たちの楽しみ奪ってんじゃねぇ!!」


 その言葉に大丸さんが呼応する。


「妖狐衆、そう言えば分かるか? テメェらをぶっ飛ばしに来たんだよ」


「あぁ⁈ やってみろよ!」


 そう言って向こうが臨戦体制に入る。それと同時にみんなも武器を構える!僕も慌てて刀を抜く。


『やるぞ!』


 大丸さんとゴロツキが同時に檄を飛ばして戦いが始まった!

 すると大丸さんが僕に告げる。


「お前のノルマは三人だ、頑張れよ。それと誰も殺すな」


「分かりました!」


 三人、正直キツイ気がするが今日までの努力ならやれる。そう思いながら刀を強く握る!

 それとほぼ同時にゴロツキが三人こちらに向かってきた! そして拳銃を抜いて三発の弾を放つ! しかし弾丸は敵一人に当たるも他は大きく外れる。


(やっぱり重いな……)

 原因は拳銃の違いだ。

 今まで使っていたものに比べて重量などが違うせいで思うように当たらない。


(なら!)

 そうして拳銃をしまって刀を構える。


「叩き潰してやるよ!」

 ゴロツキの一人が角材を振り上げる!


(……ここ!)

 そうして攻撃を防ごうとする。だが異変が起きた。武器同士が衝突した瞬間に敵の角材が切断されたのだ。


(……え?)

 僕もゴロツキも目が点になる。いやだって思わないだろ? 僕は防いだだけなのに切れたんだよ?

 もう切れ味がどうかしてるってレベルじゃない。


(でも今は戦闘中だ)

 心の中の僕がツッコミを入れて、ふと我に帰る。そして敵を斬ろうとした時にもう一人のゴロツキが拳を叩き込んできた! 次の瞬間、その拳が僕のこめかみを直撃する! 頭の中を鈍い痛みが突き抜ける。

 しかし、これまで化け物級の男に吹き飛ばされ続けたのだ。これくらいどうってことない。そのままゆっくりと相手を睨む。


「効かないね」

 そう言いながら小尻(柄の根本部分)をやつの胸に叩き込む!


「ぐげぇ!」

 情けない声を上げながら奴が吹き飛ぶ! しかしもう一人が背後に回り込んでいた!


(間に合わない!)

 そう思い、前に飛んで回避する!後方で地面と棒の当たる音が響く。そのまま振り返り、刀を構える。


(絶対に負けねぇよ!!)



 その時、右翼でも壮絶な戦いが始まろうとしていた。右翼ではシオンと百合さん、そしてゴロツキ5人組が睨み合っていた。

 その時、百合さんがポケットから効果を取り出し、口を開いた。


「シオン、コインで決めましょうか」


「はーい、私裏ね」


「じゃあ私は表で」


 どうやらコイントスで人数を割り振るようだ。百合さんがコインを投げようとした時、ゴロツキの一人が無謀にも突撃する!


「何喋ってんだよ!」

 男が拳を振り上げて距離を潰してくるが、百合さんにそんなのは通用しない。


「邪魔ですよ」

 丁寧に避け、足を石突で払う。そして倒れた男を睨みつけながら忠告する。


「邪魔しないでもらえますか?」


「ヒッ! ヒィイイイ!」

 男は高速で後退りして仲間の元に戻って行った。


「さて気を取り直して……」

 そのままコインを上に放り投げる。そうして地面に落ちて出たのは、表だ。


「ちえっ……」


「やった、私が三人ですね」

 そして二人で静かに構えをとる。


「さぁ、やりましょうか」

 それと同時にゴロツキ、2人が前に踏み込む!

 そうして壮絶な攻防が繰り広げられる! 敵は全員がナイフ、または角材を持っているしある程度場慣れもしているみたいに連携も取れている……でもそんなのでは2人に遠く及ばない。


「もう終わりですよ!」

 その声と同時に百合さんが構えをとる。


(妖狐流槍術……三の段!牙竜突<八連>!)

 次の瞬間、奴らの両足とナイフを同時に破壊した!


「ぐぎゃあああ!」「がはぁあああ!!」「うげええ

 え!」

 そうして三人が情けない声を上げながら崩れ落ちる。

 一方のシオンは一進一退の攻防をしていた。まあ、当然と言えば当然……彼女は本来正面から戦う者ではない、故に少しばかりは手こずる。


 しかし、奴らの前にいるのは妖狐衆随一の暗殺の腕前をもつ者。ただのゴロツキ二人など、目を瞑っても倒せる。

 その時、シオンが前に踏み込んで懐を侵略する!


「くっ!」「舐めんな!」

 けれども相手だって意地がある。何とか迎撃しようとするが……次の瞬間、シオンは奴らの前から消えて後ろにいた。


「チェックメイト」

 そう言って短刀の峰で二人の後頭部を強打し、制圧いた。


「ふぅ、他はどうなっているでしょうかね?」

 そう言って右翼は圧倒的な実力差で敵を捩じ伏せた。

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