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絢と浅草デート スカイツリー

「うわぁ、近くで見るとめっちゃ凄いね!」


 スカイツリーを見上げる絢さんは感嘆の声を漏らした。

 俺も初めて来たときはぽかーんと口を開いてしまったものだ。


「早速中に入ろっか。先にチケットは買っておいたから」

「え、本当? あとでお金渡すね」

「うん、ありがと」


 俺たちは受付をしてからエレベーターまで向かう。


「えー、すっごくオシャレだねー。流石観光スポットだ」


 絢さんはキョロキョロと周りを見ながらはしゃいでいる。

 ここまででこれだけ喜んでくれたのなら俺としても来てよかったと思う。


 これ展望デッキに行ったらどうなるんだろう。


 エレベーターホールに着き、少し並んでからエレベーターへと乗り込む。

 ぐんぐんと加速するエレベーターと比例するように高揚感も大きくなってくる。

 そして、エレベーターが到着し、扉が開いた。


「うわぁ、開放感すっごい!」


 開いた扉の先には爽快感のある光景が広がっていた。

 窓ガラスの向こうには遮る物何一つない青空が。

 隣の絢さんはキラキラとした目をして、俺の手を引っ張り、窓際へと向かう。


「唯くん唯くん! なんかこの景色見てたらちょっと言いたくなることあるよね!」

「え、どんなこと?」


 絢さんは興奮してグッと胸を張った。


「ふっふっふっ。人がゴミのようだー!」

「……もっと情緒のある感想を言おうよ」


 何故かドヤ顔をしながら有名な作品の有名なセリフを言う彼女に、俺は呆れながらツッコミをする。

 気持ちはわからなくはないけれど。


「それで、初めてのスカイツリーの感想は?」

「すっっっっごい感動した! 景色すっごく綺麗だし、爽快感凄いし、本当に楽しい!!」

「そっか。それならよかった」


 この景色に負けないような素敵な笑顔を見せる絢さん。

 その表情に釣られて俺も笑顔になる。


 俺も何度か来たなかで一番景色が綺麗に見えるんだよな。

 隣の絢さんがテンション高いから落ち着いているけれども。

 それは多分、絢さんと一緒に来たからなんだろうな。


「どうせなら一か所だけじゃなくて、ぐるっと見て回ろう。色んな景色が観れるよ」

「そうだね! そうしよ!」


 俺たちはゆっくりと景色を見ながら展望フロアを歩く。

 途中でガラスの床の上に立ってみたり、写真を撮ったりしながらぐるっと一周。

 そして最初の場所に戻った時にぼそっと絢さんが呟いた。


「当たり前だけどさ、見る場所を少し変えたら見え方とか景色が全然変わるんだね。ほんの少しズレただけなのに」

「うん?」


 そのつぶやきの理由がわからなくて、俺は疑問符を浮かべてしまう。


「いやね、景色でもお芝居でもなんでもさ、同じ場所からならずっと見えるものは変わらないけど、色んな場所から見たら感じるものが変わるんだなって思って」

「なるほど、そういうことね」


 景色を眺めながらそんなことを考えていたのか。

 だんだんと口数が減ってきたから、疲れたのか飽きたのかと心配したけれど。


「確かに様々な物事は見る角度を変えたら新しい発見や感じ方が変わるよね。芝居だって一つのセリフでも見方を変えれば色んな解釈ができるようになるし」

「わかってはいたんだけどね。でも、この光景を見て、ちゃんと実感できたみたい」

「そっか。なら、来た甲斐があったってことだね」

「うん」


 しみじみと頷く彼女に、俺はついクスリと笑いが漏れてしまう。


「ねー、なんで笑うのー」

「いや、俺ら、結局デートしてても芝居の話に行きついちゃうなって思ってさ」

「……確かに」


 ムッとする絢さんに笑った理由を話す。

 それを聞いた彼女は不服そうながらも納得したようだ。


「でもさ、俺ららしいじゃん? 他の人相手だったらこんな話にならないだろうしさ。俺は好きだよ、こんな関係」

「……あのさぁ、唯くんは本当にさぁ……」


 感じたことを素直に伝えると、絢さんは顔を赤くしながら心底呆れたような声を漏らす。


「いや、わかってる。そういう意味で言ってるわけじゃないって。でもそんなさらっと好きとか言われると……」


 声のトーンが徐々に落ちていく絢さんの言葉だが、しっかりと俺の耳には入ってくる。


 俺、結構な発言をしてしまったのでは?


「あー……。なんかごめん。変なこと言って。ただ、思ったことがついつい口から零れちゃって」 

「謝られるのは違うじゃん。ただちょっと、女心をかき乱すことを言うのは、私もドキッとしちゃうから」

「う、うん。気を付ける」


 これはちゃんとお小言を受け入れて反省しなければ。

 でも、絢さんも素直にそういうことを言うのは止めた方がいいと思うんだけどなー。

 俺も今の発言にドキっとしたし。


「と、とりあえず、気分転換にカフェでも行ってみよっか」

「……ん、そだね」


 ちょっと変になってしまった雰囲気を変えるために、展望デッキにあるカフェへと向かうことにした。

 流石にこのままだとお開きになりそうだしね。

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