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TCGに舞い降りたまほたん!

とあるTCG会場に一人の男が立っていた。

三角帽子を深く被り上着をマントのように羽織って、ショートパンツの男は周りから異質な不純物であるというような様で立っていた。

男の真剣な眼差しがTCG会場の奥に向けられた。

「奴は俺が倒す」

男はそういうとTCG会場のエントリーシートに名前を書いた。

【八雲さつき】

それはどこか寂しい、懐かしい名前のようだった。


1回戦目が始まった。歓声があがる。ここ数年で目覚ましく進化を遂げたTCGの大会優勝者に与えられる尊敬と賞金。それははかりしれないものがあった。

男の名前がよばれる。男は静かに立ち、決闘場へ向かった。


「1ターンキルだ!」

さつきの相手の男は見るなりそう言った。1ターンキル。それは1ターンで相手をボコす方法だ。TCGでもよくみかける勝ちパターンのひとつだ。相手ターンを与えず自分ターンだけで終える。正に相手にターンを渡さないで勝つという方法を極めた戦い方だ。


審判者が口を開いた。

「双方、準備が整い次第決闘を始めたいと思います。準備してください。」

イケメンの1ターンキル男がデッキを指定場所に置いた。

さつきもまたデッキを指定場所に置いたのを見て、審判者が確認し

「それでは決闘をスタートしてください。」

というとイケメンとさつきは同時に

「デュエルン!」

場が静まり返る。

イケメンが笑いながら

「先行もらった勝ちももらった。いくぜ、ドロー!」

そう言ってデッキからカードを一枚引いた。

「トューンの目次」「トューンの目次」「魔法石の採掘」「リロード」「打ち出の小づち」などと言うたびにデッキからカード引いたり、使い終わったカードを置く場所からカードを入れ替えたりして目まぐるしくカードを使いまわしていく。「封印されし」と刻まれたカードが目に入り、さつきは全てを悟り目を閉じた。

やがてイケメンが

「これで終わりだ。『補充してもいいん?』」

墓地から特定のモンスターカードを回収するカードだ。

やれやれ終わった。そういいたげにイケメンが話し出す。

「そろったぜパーツが!おまえは結局何もできずに終わるんだ。

 見ろ俺の手札を!封印されしカードが5枚。これが手札に揃った時、

 俺の勝ちが決定する。お前の負けだ!」

さつきはそっと眼を開けた。眼は死んではいなかった。負けが確定しているのにこの絶望に微動だに屈折もしていなかった。

やがて手札から一枚のカードを取り出し表にする。

『洗脳解除』

それは自分モンスターが相手にコントロールを奪われたときに、コントロールを奪い戻すカードだった。

さつきは静かに

「洗脳解除、発動」

といった。

イケメン君が笑いながら

「え、『洗脳解除』?何それ?何の洗脳をとくんだってばよ!はっはっは!」

などとお道化た笑いが響く中、周りで観戦していた観客がひとり、審判者に近寄ると、

「あ、あのすいません。あの人可哀そうなんでこれで・・・」

そういって札をすっと審判者に渡した。続くように2人目が

「俺もあの人可哀そうだと思うんでこれで」

そういって札を審判者に渡した。

そして、5,6人が同じように審判者に札を渡したところで、審判者が

「勝者さつき。さつきに勝った罪で対戦相手を敗者とする」

「・・・ふ、ふ、ふざんな!!てめぇ、袖の下で勝ち負け決めていいと思ってんのか!?俺は清々堂々勝ったんだよ!。それの何が悪い!?」

「おまえ、さつきを見てみろ。可哀そうだろう大魔法使いだ。可哀そうだろう?だからさつきが勝ちなんだ」

「どういう理屈だよ!ふだけやがって、訴えてやる!」

「審判者の私がおまえをブラックネームにでもできるんだぞ!」

「・・・!?」

ブラックネーム。大会などで不正行為などをして出場などの権利を期間中剥奪できたりもする。さすがにイケメン君は黙ると・・・そそくさと決闘場から離れていった。

『洗脳解除』モンスターではなく観客達のこうでなくてはならないという洗脳を解除したのだ。

さつきはカードをデッキケースに戻すと

「またやってしまった。すまないN・・・」

それは誰にも聞こえないような静かな小声だった・・・続く

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