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プロローグ

カクヨムで連載中の作品を改訂した「イレギュラーはギフテッドに夢中です(改訂版)を一話ずつ区切ったものです。

改訂が済んでいる話まで連日投稿した後は一旦投稿を止めて、連載版で物語が進み改訂版を完成させてからそれを区切って投稿します。(分かりずらくてゴメン)

作品的にはここに挙がるものが最終的なものになります。

とにかくライブ的に物語を楽しみたいという方はカクヨムの連載版を、しっかりと推敲された最終的な物語を楽しみたいという方はカクヨムの改訂版を、最終的な物語を読みたいけれどライブ感も欲しいという方はこのままなろうでお読みいただければいいと思います。

長くなってしまいましたがとにかく自分に合った読み方をしていただけると嬉しいです。

それではほんへ↓

私、マリエルには不思議な力があった。

最初に気づいたのは八年前、まだ物心ついてから間もない時だ。

当時からすでに好奇心旺盛でわんぱくだった私は、あろうことか庭の端に生えていた木に登ったのだという。

その木に生えていた深い青色の木の実に強く惹かれた事を今でもうっすらと覚えている。

生来の運動神経の良さが助力してスルスルと木に登り、お目当ての物を手に取ったはいいものの、前日の雨で中が腐っていたのかそもそも半分朽ちていたのか支えにしていた枝が折れ、木から落ちてしまった。

体が支えを失い内臓が浮くような感覚に襲われ、着地の痛みを覚悟した。

ギュッと目をつぶるも、その瞬間、ふわりとおくるみに包まれているかのような浮遊感が私を受け止めた。

一瞬誰かが受け止めたのだと思い、お礼を言うため目を開け、そして絶句した。

辺りは閑散としていたのである。

いよいよ何が起きているのかわからずとにかくこの浮遊感の正体を突き止めようと下を見ると、空間がそこだけゆがんだようにぼやけていた。

それはうずくまる形で落下した私の臀部をすっぽりと包み込むように広がっており、ハンモックのようにも見えた。


家の窓から一部始終を目撃したらしい兄と確認したがやはり私は木から落ち、そしてナニかに受け止められたらしい。

物的証拠として私の手には例の深い海の色をした木の実があったし、私が登った木は落ちればまず間違いなく数日ではとても治らないような怪我を負う高さだった。

兄と供に親にこのことを報告するとひどく神妙な顔つきで蔵書から古びた一冊の本を持ってきた。

てっきり「なに馬鹿げたことを」と取り合ってもらえないと思っていたために意外だった。

古びた本はどうやら歴史書のようだ。

私が住んでいる村は百五十年ほど前に先祖が開拓した土地である。

辺境、とまではいかないまでも王都からは十分に離れていて他の村との交流もなかったために情報は閉じられていた。

本のしおりが挟まれているところを開くと、百年前の飢饉とそれを一夜にして解決してしまった旅人のことが書いてあった。

百年前、この村は例を見ない不作と、病気の萬栄によって人口が半分近く減った。

そんな時、ぼろぼろのローブを纏ったいかにも貧しそうな旅人がやってきて一日分の食料と寝床を求めたらしい。

当時のこの村の村長はいたくその姿に同情し、まさしく自分たちの身を削ってそれに答えたそうだ。

翌日顔色も少しばかりよくなった旅人は、自分のことを王都から追放された”魔法使い”と名乗り、腕の一振りで痩せた大地を潤し濁った空気を浄化したかと思えば、次の瞬間には忽然と姿を消したという。


―父は私に、私の身を守ったあれを”魔法”だと言った。


自分が魔法(仮)を使えると認識してからは暗中模索の日々だった。それらしき文献もないため完全に独学で発生条件や種類、特性を調べ、今では日常的に応用できるほど研鑽を積んだ。


「...魔法使いかぁ」


村のどこを探しても私と同じことができる人はいなかった。おそらく絶対数が少ないのだろう。

漠然と物語に出てくる魔法使いという職業に憧れているが、私以外にこの体質の人が居ない上、職業なのかもわからなければ、そもそも私のこれが魔法であると確定したわけでもない。


「寂しいなぁ...」


独りベットでごちる。

家族はみんな私を可愛がってくれるし、友達も多いほうだ。

よく立ち寄るお店のおじいちゃんおばあちゃんもよくしてくれる。私は温かい環境にいるのだろう。

私を端的に表すならよく言えば天才肌、悪く言えば器用貧乏といったところである。

家事全般はそつなくこなせるし、勉強やお仕事の覚えも早いほうで両親からはよく褒められた。

たぶん恵まれてる。

自分でも近所の子供からの羨望や嫉妬のまなざしを受けて最近は自覚し始めていた。

ただそんな中でも意識せざるを得なかった。

おおよそ人間にはできないことが出来てしまうために生まれる自分が人ではないかのような強烈な疎外感と、どこを探しても同類がいないために生まれる身を焦がすような焦燥感を。


「...誰か助けてくれないかな......なんてね」


きっとこんなことを考えてしまう私は馬鹿でどうしようもないのだろう。

それでも願わずにはいられなかった。明るく温かい孤独に満ちたこの村から、私の同類...魔法使いが跋扈するような、私が普通などこかへ...と。

夜はすっかり更けて部屋は冷え込んでいた。私は寒さから逃れるように、孤独に潰されないように、淡い希望を逃さないようにと膝を抱え縮こまって眠りにつく。

頬に温かいものが伝う感覚にはすっかり慣れてしまった。

プロローグをお読みいただきありがとうございます。

次話から本編となります。

気に入っていただけましたらブックマークを頂けると主のやる気がぶち上ります。

それでは良き小説ライフをー


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