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父と子

 メリアンが失踪したと分かった日、シュトルツ公爵は、メリアンが自分の意思で失踪したこと、そしてその理由がフェルディナンド王子に関わることだと推測し、王族に絶対忠誠を誓う立場であるにもかかわらず、フェルディナンド王子を憎んだ。


 しかし若き王族は、「私が必ず探し出します。一生をかけても。」と彼にそう誓った。


 そして彼は、全てを持って生まれたのに、自分にはメリアンしかいないと嘆いた。

 より美しく、よりふさわしい令嬢もこの国にはたくさんいたであろうが、この六年間、彼の心はずっとメリアンにだけむいていた。そもそも政略結婚が多い中、彼は最初から自分でメリアンを選んでいたのだ。

 確かに若い二人は失敗を犯した。けれど、互いに別々の場所で成長し、再び巡り合うことが出来た。

 自分の娘に対してここまで強い思いを持ち続け、誰もが・・・親である自分自身もが諦める中、執念で見つけ出した王子にならば、今度こそ全てを任せられると思った。自分と同じ、いや、それ以上に、メリアンを愛している彼ならば。

 いまだ成長しきれていない部分もあるだろう。けれど、今度こそ二人で共に、・・・いや、今やもう子供もいる。四人で、一緒に成長していってほしい。


「お前の母にもちゃんとお前の無事、そして子供たちのことを伝えておく。色々と落ち着いたら、今度はお前たちがこちらに遊びに来てくれ。」


 シュトルツ公爵は、彼らの幸せを祈りながら、メリアンにそう残した。そして春の嵐は去っていった。





「おうじのおうまさんかっこいい!ぼくものりたい!」

「わたしも!」


 銀髪碧眼の小さな双子はフェルディナンド王子の乗馬姿を見るたびに、そう訴えていた。フェルディナンド王子は彼らの願いであるならば、なんでも叶えたいと思っていた。そして忙しい中、なんとか1日彼らに割ける時間を取ることが出来、馬の乗り方を教えることにした。


 王宮の側にある騎士団の訓練所。

 ここは国の精鋭たちが集まり、日々訓練に励む場所だ。広大な敷地には、様々な訓練設備が整えられており、騎士たちの技術向上や体力向上を目指している。

 様々な技術の中でも、馬術は騎士団員にとって非常に重要な要素だ。まず、騎士団員たちは馬の世話や乗り方を習得し、次に馬上での剣術や弓術などの技術を身につける。さらに、馬を操るスピードや瞬発力も鍛えるのだ。


 フェルディナンド王子は、幼い頃からこの場所で鍛錬を積んできた。彼は剣術や格闘技にも優れていたが、特に馬術においてはその才能を発揮していた。

 精霊魔法使いは動物からも好かれると言うが、彼はまるで生まれながらにして馬との距離を縮める天性の才能を持っており、その技能は際立っていた。馬の扱い方や馬とのコミュニケーションにおいては、誰よりも優れており、馬を怖がらせず、リラックスさせることができるため、馬たちとは瞬時に信頼関係を築くことが出来る。また、王子は馬を操る際の敏捷性や機敏さも持ち合わせていて、驚異的な速さで馬を駆り、状況に応じて素早く方向転換や急停止を行うことができる。さらに、フェルディナンド王子は馬上でのバランス感覚にも優れている。高速で移動しながらも安定した姿勢を保ち続けることが出来るため、馬上での剣術や弓術も見事にこなすことが出来、騎手としての評価は高かった。


 風はやや冷たいが、太陽が出ているため過ごしやすい気温だ。薄い雲がゆっくりと流れている。


「二人のために、今日はポニーを用意した。」


 王子がそういうと、エリオットの部下二人が、手綱を持ちながらポニーを連れて来た。ポニーたちは茶色と白の毛並みで、子供たちにやさしく顔を寄せている。


「おうまさんかわいい!」

「ぼくたちみたいにちっちゃいね?」

「ではまず、ルカから乗るか。」


 王子は始めに冒険心の強いルカを抱き上げた。ルカは、馬の背に跨るのは初めてで、少し緊張気味だ。


「大丈夫だ、ルカ。ポニーはとっても大人しい。」と王子が声をかけ、ポニーの上に乗せると、ルカを支える手を離した。


「いい感じだ、ルカ!エリオット、ちょっと見ていてくれるか?それでは、リリスも乗ってみよう」


 王子が言うと、リリスは大きく頷く。ルカを見ていたので、リリスはスムーズに乗ることが出来た。


「では歩いてみよう。」


 エリオットがルカの、フェルディナンド王子がリリスのポニーの手綱をそれぞれ握って馬を歩かせ始めた。周囲の美しい景色に囲まれながら、子供たちとポニーはゆっくりと進んでいく。


 最初は強張っていた子供たちも、徐々に慣れてきて、「もっと速くー!」と言いながら楽しそうに騒いでいる。そのうち、子供たちがポニーの扱いに慣れてくると、王子はルカとリリスにさらに馬の乗り方のコツを教え始めた。


「ルカ、リリス、馬に乗るときは背筋を伸ばして、腰を据えることが大切だ。そして、馬の動きに合わせて体を揺らすのだ。」


 子供たちは、王子の言う通り背筋を伸ばして、腰を据えて、ポニーの動きに合わせて体を揺らした。


「うまくできてる?」


 リリスが不安そうに聞くと、王子は笑って「とても上手だ。もうすぐ一人でも馬にも乗れるようになる」と励ました。


「馬を乗りこなすのも、精霊魔法と同じで、まずは馬との信頼関係を築くことが大切だ。馬と触れ合って、声をかけて、馬の気持ちを感じることができるようになろう。」


 時折、ポニーが元気よく走り出したりと、ちょっとしたハプニングがあったが、王子がしっかりとサポートしていたので、子供たちは怪我もなく、楽しい時間を過ごすことができた。また、王子は子供たちに、馬とコミュニケーションをとる方法も教えた。馬の目を見て、優しく声をかけて、撫でることで、馬との絆を深めることができると。


 近くの森にあるコースを一通り歩き、戻ってくると「リリスー!ルカー!」とメリアンの声が遠くから聞こえた。

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