愛の物語
初投稿です。
皇太子ランドルフ・オブ・スィベリロナが姿を見せる。
今夜の卒業を祝う夜会で、婚約者を発表するのだ。
壇上の正面に、卒業したばかりの皇太子の婚約者候補第一位である、銀の乙女こと、リリアーヌ・アシッド公爵令嬢が美しい装いで立っていた。
彼女の卒業を待って、今夜の婚約発表の予定だった。
本来ならば。
皇太子の手が伸び、銀の乙女を掴む。そんな白昼夢を見たが、現実は分かっていた。
あの焦げ茶色の髪の少女が選ばれるのだ。
壇上に、やはり焦げ茶色の巻き毛の美しい少女が黄色のドレスを着て現れ、二人で壇上を降りると、美しい音楽の調べに合わせて踊り出した。
学園で少女と皇太子は出会い、恋に落ちた。
王家の諜報員である「影」の一員であった孤児の少女は、上司に当たる皇太子と協力しながら、国家転覆を狙う王弟の策略を阻止。愛の勝利を得て結ばれた二人。
誰にも入り込めないその絆と愛。
物語の世界の話。
だとしても、候補とはいえ、ゆくゆくは皇太子妃として教育されてきた銀の乙女はどうなるのか。
会場に入り、控え室に閉じ込められかけたのが、こんな理由。
銀の乙女の気持ちを慮り。なんて言って、二人の愛を邪魔しない様にしたのか。
結局、リリアーヌは泣きながら会場を出るしかなかった。
選ばれ無かった皇太子の婚約者候補の一人として。
逃げ出したリリアーヌは、芝生の上で転び、そのまま泣き伏した。