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玩具が魅せる異世界特撮  作者: オーメル


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【第四十五話】その男、倒れる

 轟音、爆砕、衝撃。

 必殺技を撃ち込まれた周辺の建物は吹き飛び、嘗ての街並みの一部を消し去った。

 残るは瓦礫の山と捲れ上がった大地だけ。コンクリートすらも割れ砕け、最早通行すらも満足に行えない。

 そんな様を眺め、一喜は前を見る。

 怪物ですら骨も残さぬ攻撃によって姿は無い。肉片も、それこそ血液でさえもそこには無かった。

 まるで忽然と姿を消したようで――そして実際、彼等は無事に姿を消したのだろう。

 血を流していないことで怪我を負わなかったかと内心で肩を落としつつ、一喜はベルトからカードを取り出す。

 元の生身となった状態で近くに放置しておいた立道の元へと行こうとし、そこで不意に足の力が抜けた。

 重力に満足に逆らうことも出来ずに身体は倒れ、割れたコンクリートから出て来た黒い土が彼の頬を汚す。


 満足に受け身も取れなかった所為で顔面が痛かったが、それよりも自身の身体があまり動けない事実に彼は驚いた。

 様々な箇所を試しにと動かして、確認が取れたのは腕と胴体と頭のみ。

 足は最初から無かったように動かず、麻痺していると言われれば彼も納得出来る程だ。

 こうなった原因など、彼には一つしか思い浮かばない。

 即ち三枚同時使用だ。一枚ですら体力を多く削られるカードを、一気に三枚も使用して戦闘していた。

 破格の性能を誇ってはいたものの、やはり元は遺跡の存在。人が使って何とでもなる筈も無く、こうして見事なまでに肉体に極度の疲労が襲い掛かっている。

 

 一度自覚すれば、今度は眠気にも襲われた。

 今直ぐにでも寝たいという本能的な欲を危機感を最大にした理性が引き留め、腕を動かして一先ず休める場所を探す。

 立道と合流を果たしたいが、今の時点でそれは難しい。例え一日経過することになったとしても、休んだ方が後には良いだろう。

 服が汚れるのも構わず、向かうのは近くの廃墟。元は診療所だったのだろう建物の中へと入り、建物の角で身を隠しながら横になる。

 枕として使える物は無く、致し方なしに腕を枕とした。床のタイルは割れ放題ではあるも、瓦礫が入っていなかったのは運が良いことだ。

 

「少し寝て……そっから、あそこに戻って……」


 安全地帯であると脳が認識したことで、止めていた理性も無くなっていく。

 自身で確認するように呟かれた言葉もまともに理解出来ず、彼はその日になって初めてこの世界で睡眠を取った。

 無意識の警戒すらも消え去り、酷い過労によって肌は青白い。生者と呼ぶには少々難しい顔をしている彼は、遠くで聞こえる足音を一切捉えることが出来なかった。


「――なんだよ、これ」


 暫くの時間が流れ、崩壊した建築群の前に二人分の姿があった。

 真っ赤なジャケットを羽織った世良。黄色のジャケットを羽織った十黄。

 この二名は腰に軽火器を腰に携えつつ、夜に発生した爆音と衝撃の正体を探りに此処まで来ていた。

 彼等の目に入ったのは戦闘が終わった後の結果であり、しかしそれがどうにも現実離れをしていると世良は息を呑む。

 同じ化け物であったからこそ、彼女にはこの被害を出す為に使われた威力が理解出来ていた。

 カードが一枚では足りない。少なくとも五枚以上か、それよりも高い出力を有する上位者でなければこんな真似は出来ない。

 

「見た限り、敵の姿は無い。 ……おい、あそこ」


 周辺に視線を彷徨わせていると、十黄が何かに気付いたように指を差す。

 その先に世良も顔を動かし、地面に転がっているカードを二枚発見した。世良は駆け足でカードの下まで向かい、置かれたままのそれを拾う。

 風に流されて地面に落ちていたカードは、しかし一切の汚れが無く綺麗なまま。何かの保護が成されているのか、土汚れとは無縁な様子はまるで呪いのアイテムだ。

 

「レーダーと……これは物資を運ぶ補給箱か?」


「いきなり走るな」


 突然の駆け足に注意する十黄。しかし彼女はその言葉を聞かず、灰色のカードを見つめたまま違うと内心で零す。

 このカードは間違いなく此処で死んだ者の遺品だろうが、二枚のカードには広範囲に建物を破壊する術がない。

 あったとしても準備には手間取るであろうし、そもそも彼女達が感じた衝撃波を二枚のカードが発生させられるとは思えない。

 つまり、この二枚分のカードと戦っていた存在があの結果を成した。

 怪物が怪物を倒すという事例は世良のような例を除いては基本的に無い。痛めつけることはあると嘗て何処かで聞いたことはあるが、殺すことまですれば折角選んだ最上位者に迷惑が掛かる。

 

 となれば、戦った相手など容易に絞り出せる。

 この街で世良と同様に怪物を倒す存在は、確認されている限りでは他に一人しか存在しない。

 一喜だ。一喜が、これをやったのだ。

  

「一喜の奴がやったんだ、これを。 怪物を倒す為に」


「怪物を倒せるのは同じ怪物だけだからな。 お前が動いていないなら、そりゃもう片方になるか……」


 十黄も同様の結論に達し、しかしと疑問を深める。

 一喜が戦ったのは間違いない。どうして戦っていたのかまでは不明であるも、彼がやると決めた戦いで確実にやる人間なのは先の戦いで理解していた。

 だが、彼は建物を積極的に破壊するような人間ではない。戦いの最中に壊すことはあっても、ここまで悲惨な状態にまではしないだろう。

 可能性は二つ。敢えてそうしたか、そうせざるを得ない存在と戦ったか。

 前者であれば何かの計算の上である。されど、もし後者であった場合は。

 十黄の背筋に冷たいものが流れた。途端に自分が今居る場所が街の中で一番の危険地帯のように感じられ、思わず世良の右肩を掴む。


「此処で何が起きたのかは解った。 出来れば奴に話しを聞きたいが、連絡先を知らない以上は一度引き返そう」


「……そう、するしかないか」


 何が起きたのか。抽象的な部分しか今は解っていないが、少なくとも一喜に話を聞かなければこれ以上の進展は望めまい。

 仮にこの街に恐ろしい脅威が存在しているのだとすれば、十黄はいよいよ覚悟を決めねばならなくなる。それは苦しく険しい、二つの選択だ。

 世良はまだそこまで行き着いてはいないが、住居に戻って暫く整理をしていれば確実に同じ結論に辿り着く。

 話し合いはその時になってからでも間に合う筈だ。一度決めれば、自分達はそれなりに早く行動に移せる方なのだから――――不意に別の足音が鳴った。


「誰だ!」


 十黄が振り返りつつ、腰の銃を音の発生地に向ける。

 銃口の先に居たのは中肉中背な学ラン姿の青年。この場所では珍しい装いをしている人物の突然の状況に、一拍遅れて反応した世良は厳しい視線を向ける。


「学ラン? ……お前、誰だ」


「待ってください! 怪しい者じゃありません!!」


 両手を上げて降参の姿勢を取る彼は、よくよく見れば傷が目立つ。学ランも破れている箇所や土に汚れている姿が散見され、観察すれば付いた怪我はまだ新しい。

 

「その恰好で街を歩いている奴は私は知らねぇが?」


「本当なんです! この近くのキャンプの出身で――」


「――なんだと?」


 青年こと立道の言葉は途中で止まった。

 十黄が放つ嚇怒の雰囲気が立道が喋ることを封じ、恐れを増幅させる。

 咄嗟に世良が彼の胸を小突いたことで怒りの雰囲気は薄れたが、鷹のように鋭い眼光だけは依然として向けられたままだ。

 銃を持つ手にも力が入り、万が一立道が何か行動を起こせば途端に蜂の巣にされるだろう。


「あんなクソッタレの場所に住んでる奴が何の用だ。 物資を奪えそうな奴でも探してたか」


「そんなことはしません! 俺は人を探しに此処に来たんです!!」


「人? ……誰だ」


「名前までは俺は知りません。 意図的になのか教えてはくれませんでした。 ……でも、カードを持っている優しい男性です」


「――ちょっと待て」

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