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19 お妃様、まさかの展開に驚く

「あぁ、人の紡ぐ愛のなんと美しいことでしょう! 今宵は盛大に宴を開かなければ!」


 現れた妖精の女性は、愛おしげな視線をディミトリアス王子とヘレナ様の二人に注いでいる。

 それにしても美しい方だ。この城ではたくさんの妖精が働いているけれど、彼女は一目で高貴な存在だとわかる。なんていうか、オーラが違うような……。

 もしかして、妖精のお姫様なのかな?


 ……なんてことを考えていると、不意に彼女の視線がこちらを向き、私とばっちり目が合ってしまった。

 アレクシス王子に肩を抱かれたままの、私と。


 あっ、これまずくないですか?

 王子と彼女がどういう関係なのかはわからないけど、気を悪くされたりしたら――。


「やっと戻ったのか、ティターニア」


 その時、さらなる乱入者の声が聞こえて、私は混乱してしまった。

 回廊の先ほど女性がやって来たのとは反対側から、悠然とやって来る人影。

 その姿はよく知っている。この城の主――妖精王オベロン様だ。

 でも、いま彼が口にした名前って――。


「ティターニア、様……?」


 私の呟きに呼応するように、一瞬で距離を詰めてきたオベロン王が耳元で囁く。


「あぁ、我が妃、ティターニアだ」

「ひゃっ!」


 いちいち耳元で囁かないでください!

 あれ、でもあの女性の方がオベロン王のお妃様なのだとしたら……アレクシス王子、不倫はまずいですよ!?

 一人であわあわする私をよそに、ティターニア妃はゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 そして、彼女は固まる私の手を取り、優しく口を開く。


「初めまして、可愛らしいお姫様。ご挨拶が遅れましたね、妖精王オベロンが妃、ティターニアと申します」

「アアア、アレクシス王子の妃、アデリーナと申します……」


 間近で見るとますます美しい……。

 同性の私でも、思わず魅入られそうになってしまうくらい。

 ぽぉっと見惚れていると、ティターニア妃はそっと私の耳元に口を寄せ、吐息交じりに囁いた。


「心配なさらないで、可愛い人。あたくしとアレクシスは、あなたが想像するような関係ではありませんわ」

「!!!?!?」


 私の心を見透かすようなその言葉に、ひゅっと喉が鳴った。

 ティターニア妃は、にこにこと優しい笑みを浮かべて私を見つめている。


「あらあら、本当にお可愛らしいこと。いっそ、あたくしの愛し子に――」

「ティターニア妃、アデリーナは()()妃なので! 軽率に勧誘するのはやめてください!!」


 そっと私の手を引こうとしたティターニア妃から引きはがすように、背後から強く抱き寄せられる。

 必死になるアレクシス王子を見て、ティターニア妃はころころと笑った。


「あらあら。そうでしたね、アレクシス。やっと見つけたあなたの花嫁を、奪うつもりではなかったのよ。ごめんなさいね」

「まったく、あなたもオベロン王も目を離すとすぐこれだ……」


 ため息をつくアレクシス王子に、オベロン王とティターニア妃は揃ってにこにこと笑っている。

 なるほど……なんてマイペースなご夫婦なのでしょう。

「相手のペースに飲まれないようにするのがここで過ごす時のコツ」だと言った王子の気持ちが、なんとなくわかってきた気がします。


「アレクシス、アデリーナ、次はあなたたちの番でしょう? 会場で待っていますので、準備が出来たらちゃんと来るのですよ?」


 …………?  

 一体何のことでしょう……?

 戸惑う私をよそに、オベロン王とティターニア妃は連れ立ってどこかへと去ってしまう。

 そのすぐ後に、ぎゅっと背後から私を抱きしめるアレクシス王子の力が強まった。


「……アデリーナ、君を、連れていきたい場所がある。妖精たちに手筈は整えてもらっているので、少し支度をしてもらってもいいか」

「は、はい……」


 あらたまってそう言われ、私は緊張してしまった。

 何が何だかわからないけど、私が王子の頼みを断るわけがないのです。


「はいはーい! やっとサプライズ解禁の日が来たんですね! じゃあアデリーナさま、お部屋でお召し変えですよ~」


 何故かいきなり生き生きしはじめたロビンが、私を先導するようにパタパタと飛んでいく。

 私は慌ててその後を追いかけた。

 でもサプライズ解禁って……そういえば、ここへ来る前から王子とロビンがそんなことを言っていたような……。


 ロビンが私を案内したのは、見慣れた私の部屋だった。

 だが部屋の中央に、見慣れないものが鎮座していた。


 たくさんの花飾りがついた、裾の長い淡いグリーンの優美なドレス。

 私がこの部屋を出た時には、なかったはずなのに。


「あっ、アデリーナさま!」

「さぁ、こちらのドレスにお召し変えを」


 部屋付きの花の妖精は、他にもわらわらと現れた妖精に手を引かれ、私は部屋の中へと足を踏み入れた。

 あれあれ。なんだかどんどん事態が進んでいってるみたいだけど、私はどうなっちゃうんですか……?


「あのっ、このドレスは、一体……?」


 意を決して、私は部屋付きの花の妖精にそう問いかけてみた。

 すると、彼女は満面の笑みを浮かべて教えてくれる。


「これは、ティターニアさまが祈りを込めて作られたドレスです! 今夜はアレクシス王子とアデリーナさまの結婚式が開かれますので、こちらのドレスに着替えていただきます!」


 …………結婚式? 私と、王子の??


 何故っ!!?


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― 新着の感想 ―
[一言] 結婚式リターンと言うことか( ˘ω˘ )
[一言] あの美女、やっぱりそうだったんですね~。 それにしても、王子の心の狭いこと狭いこと(笑) >…………結婚式? 私と、王子の?? 何故っ!!? 以前のおざなり結婚式のことを、王子は気にしてい…
[良い点] 「何故っ!!?」で終わるのが、ちょっと面白かったです笑 妖精王夫婦は色気がすごいですね! 似たもの夫婦って感じがします。 アレクシス王子、アデリーナのために頑張ったんですね! 一度目の結…
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